賢王にして賢聖王エレア・ベナレス・ロードエルメア
・エルトロイ・イエス・トロードキリストは
前世の我では無かったのだ。
血の上での父のひとつに当たり、祖父にして
曾々祖父にしてもっと脈々として連なる
祖なるものでもあった。
そして、義理の息子の代
(彼の祖父母の代の子の子だったと弁えよ)
にも当たり、かつ、兄弟のようでもあったのだ。
父なるものにして子の代なるものにして
兄弟なるもののスピリット……。
それらすべてが邪悪に落ちた日があったというのだ。
賢王エレア・ベナレスの敗北、英雄とされた男、
彼は急に気付いた日があったのだという……。
幼き時分から精を魂を、その単一性と
自認性のすべてを盗まれ禁断の異趣近親
交配実験に使われきっていたという事実性を……。
親の代から至るまで脈々と受け継がれし
製造された子らのひとりに過ぎなかったのだと。
そして、自らの子らの代に、自らの代と同じき処から生じた
養殖体のクリスタルのスカルのヘッドを通じ、記憶や経験、
魂のような領域のいちぶを移し替えられていたという事に。
そういった、人の身を用いし獣が如く人を落とす
堕ちた実験を繰り返さなければ人の世が存続できぬ
危機なる世代が二千年の昔にしてあったのだと……。
はじまりは、2100年以上の古きに噴火せし海底火山
放射性活灰の嵐を世に満ち満ちと噴流を巻き散らせし
人の身が獣に落ちて人の世自身を食い潰そうとする
そのような世の中が遠い昔に、既に訪れていたのだと。