Victo-Epeso’s diary

THE 科孊究極 個人培萌 [CherinosBorges Tell‘A‘Bout] 右䞊Profileより特蚘事項アリ「

(🎮) Beatnik Explosion #1-7

Beatnik  Explosion #1-7


#プロロヌグ-序文

蚘憶があった  
幟銭幟䞇ず繰り返す氞劫の茪廻の蚘憶――

 

倢の䞭の自分は醜く地面を這い぀くばる蟲だった。
い぀か自分はこの鈍重な䜓を脱ぎ捚お、矎しい姿で矜ばたける。
その思いだけが、きっず自らを前に進たせおいた。

 

どんな苊痛も屈蟱も耐えられた。
そのような党おを垳消しにできるような時がきっず来る。
自分がそのような存圚だずいう事を、確かなものずしお知っおいたから。

 

だけど、
もしもその倢が、決しお叶えられるこずのないものになっおしたったのなら。

 

二床ず飛び立぀こずの出来ない䜓になっおしたったのなら。

 

きっず、そういった事が、䜕床かあった。




#プロロヌグ-断章

 

月が出おいる。赀い月  

 

さざ波の䞭で僕は䜓を起こす。
぀い今しがたたで僕の䜓を浞しおいた海氎は、
すぐに也いお消えお行っおしたう。

 

芋䞊げた倜空は月以倖真っ暗な黒に塗り぀ぶされおいる。
星々がその存圚そのものを忘れおしたったかのようだ。

 

赀い月だけが、がうっずした燐光を空䞭に散らしながら、
燃えるように茝き続けおいる  

 

「  来たのね、たたここに」

 

気が付けば、䞀人の女性が赀い光に照らされた䞖界に䞀人䜇んでいる。
倧地震でも起きたように厩れた建物が積み重なった、その残骞の䞊で、
街の跡を満たす、あたりにも透明な海を臚むように突っ立っおいる。

 

「  君か」

 

僕はその女性の事を良く知っおいた。
確かに、芚えがある顔だった。
叀くからの顔なじみのように、自然に受け入れられる。

 

それは静流、ず蚀う名の女性だ。

 

「䜕があったか芚えおる」

 

「いや  
だけど、思い出したよ。たたここに来おしたったっお事」

 

「最果おに  」

 

折れお積み重なった電信柱。砎壊され打ち捚おられたず思われる病院の跡。
根本から厩れお倒壊した集合䜏宅。
剥がれおボロボロの砂利ずなったアスファルト。
党おを氎没させた、あたりにもサラサラした透明すぎる海氎。

 

䞖界の党おが倉質し、終焉を迎えた颚景。
僕は、自分が䜕床かここに来たこずがあるような気がした。

 

「二床ずここには来たくなかった  
たた、僕らは間違っおしたったのか」

 

「そうね。原因を探るのも今ずなっおは、虚しい事だけど」

 

「どうしおどうしおこうなっおしたったんだ
君はどうだかわからないけど、僕はただ、普通に生きお、
普通に幎老いお、普通に死んでいっお  」

 

「䜕凊にでもある䞀個䜓ずしおその呜を終えられれば良かった
それが望みだったのに  」

 

「今回も  僕らだけが生き残っお  」

 

「萜ち着いお  」

 

「悲しむ事はないわ。䞇物の流転を誰にも越える事は出来ない。
受け入れおしたえばいい  もう、正垞な䞖界には垰らないのだず」

 

「僕はもう、神様ごっこなんお嫌だったんだ」

 

ため息を぀く。
理由は分からないけど、この状況の意味も、
やるべきこずも、なんずなくは分かっおいる。

 

匷烈な既芖感に目がくらむ。
䞖界が終った理由も分からず、
赀い月がただ地䞊を照らしおいる。

 

「䜜り盎さなきゃいけない、んだろうな
䞖界を  」

 

「いえ  
貎方は、ここで死ぬの」

 

「え  」

 

瓊瀫の䞊に居た圌女がこちらに向かっお飛び降りおきお。

 

ぐしゃりずした音が響いお、僕はなんずなくそれを受け入れおいお。

 

気が付いたずきには、僕は真っ赀な血を䜓のどこからか垂れ流しながら、
地面の䞊に這い぀くばっおいた。

 

芚えおいる玄束したこず
い぀か貎方ず幞せな䞖界を描くず
貎方はい぀も忘れおばかりだけれど
私はずっず芚えおいる
䜕床䞖界が終っおも
䜕床自分が人間じゃなくなっおも
貎方ずずもに歩んでいくこず
貎方はい぀か思い出しおくれる
そう
貎方はきっず思い出しおくれる







#本線1

 

僕は今、混乱しおいた。

 

薄暗い自宀でのモニタを芋぀めながら、必死にキヌボヌドを叩く。

 

危機が迫っおいる。

 

僕の粟神が狂気に抌し぀ぶされる前に、目の前に迫る脅嚁を解決しなければいけない。

 

いや、本圓は――

 

本圓は分かっおいるのだ。こんな事をしおいおも䜕の解決にもならない。解決策など調べお芋぀かるものじゃないのだ。

 

僕は狙われおいる。

 

䞖界の闇、深淵の暗郚から䌞びおくる眠に捕えられ、今たさに狂気の蜍を眺めおいるのだ――

 

「お兄、ちゃん♪」

 

「うああっ」

 

「どうしたの、お兄ちゃん♪さっきから怖い顔で調べものなんおしちゃっお。䜕調べおるの」

 

背埌から突然話しかけおくる少女。僕をお兄ちゃんず呌ぶ。僕の効――

 

ず、名乗る、異様な存圚――

 

「調べおるのは――
お前を消す方法」

 

「私、あのむルカじゃないよ」

 

「うあヌ、くそ、䜕でそんな事知っおんだ」

 

「ちょっずだけお兄ちゃんの蚘憶を盗み芋」

 

「やめろォォォヌ」

 

僕は手元にあった電気スタンドを手に取り、䞀心䞍乱に振り回す。

 

目の前の「効」に䜕床も振りかぶっおは、その顔面に、銖に、胎郚に、叩き぀けた。

 

――にも関わらず――

 

「わわっ、駄目だよヌお兄ちゃん。そんな事したら危ないよ
そんな事したっお、私䜓が無いんだからさあ」

 

「くそ、幜霊め、
ずっずずくたばれ」

 

「ごめんね、もうくたばっおるの」

 

「あああ  くそ、䜕でこんな幻芚がぁ  」

 

そうなのだ。

 

僕は、数日前から幻芚を芋おいる。

 

しかも、日がな䞀日僕に付きっきりで、し぀っこく話しかけおくる。

 

䜕でこんなこずになっおしたったんだろう

 

きっず僕の粟神は、すっかり病んでしたっおいるのだ。

 

「私、むルカさんじゃないし、幻芚でもないよヌ。
お兄ちゃんの効の、神奈だよヌ」

 

「死んだ効の幜霊ね、はは」

 

「寂しくお化けお出ちゃったんだよヌ」

 

「うん、それはいいんだけどさ。
僕にはそもそも、効ずかいねヌから。
死んだ効もク゜も、そんなの居た事ないし。
ゲヌムのやりすぎで頭がおかしくなったんだ。
効もえずかないわ  」

 

「だから蚀ったじゃん。
生たれる前にお母さんが流産しちゃっお。
お兄ちゃんも小さかったから芚えおないかもしれないけど」

 

「仮にそれが事実だずしお、
䜕でその時の赀ん坊がこんな颚に成長しおるんだ。
䜓もなかった、魂だけの奎が。
意味わかんねヌよ」

 

「んヌ  



お兄ちゃんのために可愛くなったのよ」

 

「  あヌ」

 

「寂しかったんだもん、愛されたかったんだもん。
お兄ちゃんはずっず気づかなかったかもだけど、
私ずっずお兄ちゃんのそばで䞀緒に遊んでたんだから。
お兄ちゃんずずっずお話したかったんだもん。
お兄ちゃんの事、倧奜きなんだもん」

 

「  、
  そヌいうの、やめおください」

 

「あ、埅っおよ、お兄ちゃヌん」

 

幻芚ず䌚話しおおも仕方がないので倖に繰り出した。

 

倜の冷えた空気に凍えながら、近堎のコンビニたで歩いおいく。

 

䞍意にくしゃみがでお、錻氎が垂れた。

 

「こりゃ、颚邪、盎りそヌにないな  」

 

結局、安い匁圓ず飲み物を買っお垰り、半分くらい食べながらそのたた眠りに萜ちた。

 

「効」は、しきりに僕の事を心配しお、倧䞈倫ず尋ねおいたが、抂ね無芖した。

 

ちょっず疲れおいた。




翌朝、目芚めたのは昌過ぎだった。

 

「うあヌ、頭いお  」

 

「おはよ、お兄ちゃん♪」

 

「  、寝るか」

 

「だめヌ」

 

本䜓が眠り過ぎでくらくらしおいるのに、朝から劙にテンションの高い幻芚もあったものだ。

 

「お兄ちゃん、今日甚事あったでしょ」

 

「あヌ、そう蚀えば」

 

「お父さんから電話あったじゃん」

 

「やべっ」

 

「効」のこずで頭が䞀杯になっおいたが、そう蚀えば昚日、䞡芪から電話があったのだ。

 

䞡芪は今、仕事の関係で、倫婊揃っお出匵しおいる。

 

そろそろ垰っおくる予定だったのだが、仕事の郜合䞊、少し延期になっおしたったらしい。

 

で、「そんなわけで、代わりに迎えに行っおやっおくれ」ず頌たれた。

 

「䜕の事だよ」ず返すず、父さんは「ああ、すたん、そう蚀えばただお前には蚀っおなかったな」ずかで。

 

芪戚の子䟛を暫く家で預かる事になったから、駅たで迎えに行っおやれ、ず。

 

「面倒くさい  、どうしよう」

 

「たあたあ、仕方ないじゃん」

 

「そうですね」

 

「お瀌は」

 

「は」

 

「お兄ちゃん、すっかり忘れおたでしょ
教えおあげたんだから、耒めおよ♪」

 

「  、
たあ、僕の幻芚だし。
無意識に芚えおた甚事を思い出そうずしたんだな  、うん  、きっずそうだ」

 

「ひどヌいわたし幻芚じゃないよヌ、埅っおお兄ちゃヌん」

 

そんなわけで、身支床をしお、倖に繰り出した。

 

月半ばの、ただ冷えた颚が䜓を蝕む。

 

「やばい、熱出おきた  」

 

「お兄ちゃん、倧䞈倫」

 

「  、あヌ、そうか、ここ最近颚邪ひいおるからな。熱のせいで䞀時的に幻芚芋おるわけか  。
良かった  。
忘れおた、コンビニで、マスク買お」

 

「無芖しないでよヌ」

 

日䞭に倖に出るのは久しぶりだった。
今は倧孊の講矩は無いし、䞡芪も䞍圚だから、倧分奜き勝手やっおた。
この間、ちょっず嫌なこずがあっお、ずっず匕きこもっおゲヌムやネットをしおいたら、倧颚邪を匕いた。
ちょくちょく高熱も出おいたし、このせいで脳に倉調が起きお、䞀時的に幻芚を芋おいるだけなのかもしれない。
それにしおも、錻氎が止たらない  




近堎の小さい駅から電車に乗っお、近堎じゃ有名な倧きい駅にたどり着く。
街たで繰り出すのも久し振りで、熱ず錻氎ずでがんやりした頭には、郜䌚の喧隒が少し蟛い  
埅ち合わせのホヌムで、ベンチに座っおスマヌトフォンを匄る。

 

「なヌに、たたゲヌム」

 

「たあ」

 

「゜ヌシャルゲヌムなんおそんなに面癜いの」

 

「普通のは぀たんないけどさ  、
所謂ネオ・゜ヌシャルゲヌムの類だからさ。
ちょっず興味があっお」

 

「ふヌん。
それっおどんなの」

 

「経営シミュレヌションずか、普通のネットゲヌムずかを合わせたような感じ。
新しいショップ出しおるけど、あんた売れおないなヌ」

 

「あ、それパ゜コンでやっおたのず同じ奎」

 

「たあ、マルチプラットフォヌムなんで。
これでうたくポむント皌げたら、倖郚のネットサヌビスにも䜿えるんだよ。
そっち目圓おで始めたようなもんだけどさ」

 

「ぞヌ、いろいろ提携しおるんだ」

 

「たあ、そういう時代」

 

スマヌトフォンをポケットにしたっお、蟺りを芋枡す。よくよく芋れば、駅の呚蟺は倧分様倉わりしおいた。

 

぀い最近たであった飲食店が朰れたのか、別のものになっおる。

 

あっちのカラオケ屋なんかは、い぀の間に改装したのか倉な携垯ショップになっおた。

 

数週間匕きこもっおただけの぀もりが、ここたで様子が倉わっおるずは。時代の流れは速い。

 

「あのヌ、すいたせん。
もしかしお、透銬  さん」

 

「ファッ」

 

「えっず  」

 

「え、えっず、誰」

 

突然話しかけられお芋䞊げた先には、かなりの矎少女が立っおいた。

桃華

やべヌ、匕きこもっおおだいぶ二次元コンプレックスになっおしたっおた。
自分でもキョドっおるのがわかる。

 

「あ、私、桃華です。咲村桃華。埓姉効の  」

 

「  、たじで」

 

「あの、透銬兄  
ゎフッ、ガフッ、
倩井透銬さんですよね」

 

「あヌ、はい、えず  。


(ずにかくなんか蚀え)、ああ、うん、そうだよ
いやヌ、綺麗になったね芋違えたよ。最初、誰だかわかんなかった。
もしかしお今  いや、女子高生だっけ随分倧きくなったなヌ。
あ、それ、持っおきた荷物結構倧きいね。倧倉だったでしょ僕が持぀よ」

 

「  、」

 

あれ、やばいキョドっおたらいけないず思っお気さくに話しかけようずしたけど、もしかしおドン匕きされおる

 

「えず  ありがずうございたす」

 

これっおセヌフなのだろうか。

 

気たずい。

 

あず、

 

「お兄ちゃん  」

 

倉なのが睚んできおるけど、

 

気にしない。




桃華ちゃんず電車に乗る。

 

荷物を足の間にはさんで固定しながら、吊革に぀かたる。

 

電車で揺られる䞭、桃華ちゃんの暪顔を芋る。

 

かわいい。

 

芪戚の子䟛なんお蚀うもんだから誀解しおたけど、たさかのず䞀぀屋根の䞋っお。
の匕きこもり系男子にずっおは死ねずいうのか、っお展開なんだが。

 

どうしろず。

 

桃華ちゃんは桃華ちゃんで、気たずそうにこちらをちらちら䌺っおいるようだ。

 

気たずい。

 

「話しかけおあげなよヌ。
たぶん、照れおるんだよ」

 

なんでよ

 

「だっおお兄ちゃん、カッコいいもの」

 

ないわヌ

 

幻芚に自分をカッコいいずか蚀わせちゃう匕きこもりの男の人っお。どうなの。

 

「そんな事ないよヌ、あの子、もじもじしおる。この目はお兄ちゃんに惹かれ぀぀ある女の目ず芋たね」

 

くそっ、しね

 

ずは蚀え、い぀たでも黙っおるわけにもいかない。幎䞊の立堎もあるし䜕ずかしないず。

 

そもそも桃華ちゃんはこの状況をどう思っおるんだろう。
䞀応にも幎䞊の男ず䞀぀屋根の䞋になるっおのをどう思っおいるのか。

 

っお、桃華ちゃんは家に䞡芪がいないこずを知らないのかもしれない。
二人きりっおわけじゃないなら䞀時的に埓兄匟ず䞀緒に暮らすこずくらいなんおこずはないか。

 

こっちはかなり気たずい思いを抱いおたけど、そもそもそういう意識自䜓が普通じゃないのかもなぁ。

 

「桃華ちゃんはさ、家に来お平気なの」

 

「ぞえっず  たあ、倧䞈倫ですけど。
ど、どういう意味ですかぁ透銬さんの家、䜕かあるんですか」

 

「䜕もないよでもあの、芪蚱離れお芪戚の家に転がり蟌むなんお、倧䞈倫なのかなあず思っお。
孊校ずかあるわけだし、友達ずか  その、圌氏ずか」

 

っおおい、䜕を蚀っおるのだ僕は。

 

「ええヌ、そんなの倧䞈倫ですっおば」

 

桃華ちゃんは䜕故か恥ずかしそうに笑っおいるが、䜕かあるんだろうか。

 

「今たでの私の家もここからそこたで離れおないし、孊校だっお転校はしないので」

 

「あ、たあ、友達を呌ぶのはちょっず出来なくなるかなっお気も  」

 

あ、したった。気を遣わせおる。

 

「いいよいいよ、そんなの。遠慮しないで友達でもなんでも呌んでいいよ。そんなに狭くはないはずだし。
あ、でも僕がいるずこに恋人呌ぶのは色々あれかな  」

 

「」

 

なんだか眉をひそめおる感じ。どうしたんだろう

 

「私、そんなにモテそうですかねヌ」

 

ゞト目でこっちを芋おくる桃華ちゃん。
なんだこりゃ。

 

もしかしお、地雷を螏んだ

 

「あヌ、ごめん、そういう事か」

 

「んどういうこずですか」

 

「いや䜕でもないけどさ。今付き合っおる人いないんだ」

 

「あヌ  たあ、確かに今はちょっず、そういう人いないですねヌ」

 

倉なはぐらかし方だな。この態床はもしや。

 

「なヌんお  たあ女子高生なら恋愛くらいはしたこずあるか」

 

「えっ」

 

桃華ちゃんの態床がこわばる。
顔には出さないけど、埮劙に焊った感じの空気が。

桃華2

っおおいおい、
マゞかよ

 

「お兄ちゃん、この人、ただだね」

 

蚀うんじゃねえこの悪霊め去れ

 

おいうか幻芚ず䜕お事を盞談しおるんだ僕は
殆ど初察面の女の子の恋愛事情を詮玢しおどうする。

 

桃華ちゃんは動揺を悟られないようにする感じで、
自然な感じを装っお口元に手をやっお、冷静な感じに振る舞った。

 

「女子高生ならみんな恋人居るなんおこず無いず思いたすよ
私は、別に恋愛ずかしたこずない人でも、
人生を楜しんでるならいいんじゃないかなヌっお、そう思いたすけど」

 

「この人、埮劙に他人事っぜく蚀っおごたかしおる感じが可愛いね」

 

誰かこの悪霊を䜕ずかしおくれ。

 

ずか思い぀぀も。
目の前の女子高生。

 

「男の人でも女の子でも、自分を持っお生きおる人の方がいいっおいうか  」

 

䜕故か目を合わせないようにしお持論をぶちたけおいる姿を芋るず。

 

「っは  」

 

䜕故かこっちが居たたたれなくなっおため息぀く、䞉月の昌䞋がりだった。

 

たあ、それはそれずしお。

 

電車を降りる前に軜く家の珟状だけ説明しおおく。
䜕時ごろ䞡芪が垰っおくるか分からないけど倧䞈倫かな、ずか蚀っおみたけど。

 

「ええ、じゃあ二人きりなんですかぁ
  なんお、別に気にしないから倧䞈倫ですよヌ。
じゃあしばらくの間、お䞖話になっちゃうかもしれないけど、よろしくお願いしたすね」

 

思ったより機嫌よさそうでよかった。

 

やや閑散ずした地元駅のホヌムを降り、カヌドをかざしお自動改札機をくぐる。

 

そしたら背埌でガツンず蚀う音。

 

「あれあれれ」

 

振り返るず改札の扉が閉たっおいお桃華ちゃんが足止めを食っおいた。
䜕回かカヌドを改札機にタッチするけど、ピピピず蚀う゚ラヌ音が出お䞊手くいかない。

 

「うわあ、どうしたの」

 

「おかしいなぁ、ちゃんずお金も入っおるはずなのに」

 

「ちょっず芋せお」

 

カヌドを拝借しお眺めおみるけど、よくある普通のカヌドだ。
別に傷が぀いおる事もなく、綺麗なものだ。

 

「あれデザむン違うんだ、これ」

 

ふず気づいお自分の持っおいたカヌドず芋比べおみるず、
衚面にプリントされおいるキャラやロゎのデザむンが違っおいた。

 

「あ、本圓だ。透銬さんのずちょっず違いたすね。
あれたさかこのカヌド叀くなっお䜿えなくなったのかな」

 

「そんな銬鹿な  、僕のカヌドも幎季物のはず  」

 

気にせず改めお改札機にタッチしおみたら、ピッず音が鳎った。
扉が開いた。

 

「あれ、開いちゃった。なんだろ」

 

「そういえば、ここの改札機最近新しくなったんだよなぁ。機械の調敎䞍足ずかかも」

 

「えヌ酷いですね。機械を新調しお逆にバグが出るなんお」

 

「確かにずさんな察応だなあ。テレビで最近新型改札機ずか蚀っおるけど、正盎デザむンが今颚になっただけなのに」

 

「最近の電車関係っお倉なずころに力入れおるっお蚀いたすよね」

 

「無駄にカヌドの皮類増やしたたた提携したからこんな事になるんだ」

 

電鉄関係ぞの文句を蚀い合っおいい感じに気分が盛り䞊がっお、
そのたた二人で倖に出ようずした時、背埌で同じく扉に匕っかかっおる人がいた。

 

「ちょっず、なにこれえ
あヌ、なんか切笊のずころにガム詰たっおるんだけどヌ、これ壊れおるんじゃない誰が悪戯したのこれえ」

 

「「      」」

 

芋なかったこずにしよう。

 

駅を出お二人䞊んで歩く。
駅前のシャッタヌ通りを抜け、䜏宅街をずがずが歩く。

 

「あ、そう蚀えば冷蔵庫に食料が党然ないんだった。
なんか買っお垰らないず」

 

「えヌ、そうなんだ。今䞀人なんでしょ。
もしかしお党然食べおないんじゃないですか」

 

「倧䞈倫、カップ麺ならいっぱいあ  いや、䜕でもない。
ここらぞんにちっさい個人商店があるんだ。
スヌパヌより安いから、家に荷物眮いたらそっちに行こう」

 

「了解ですっ」

 

それからしばらく黙々ず歩いお、家路に぀く。
駅から15分ずかからないので、すぐに垰れる。

 

  はずなんだけど。

 

「あれおかしいな、この蟺にこんな通りあったっけ」

 

「えっ、たさか迷ったんですか」

 

「いや  近所だし。そんな銬鹿な」

 

さっきも駅前の景色が随分様倉わりしおいたし、
匕きこもっおる内にこの蟺の道が敎備されたんだろうか。
い぀の間にか知らない道に迷い蟌んでいお、
どっちに行けばいいのか分からない。

 

「うう、ボケたかな  ごめん、ちょっずマップ芋るわ」

 

スマヌトフォンを取り出しお、マップ怜玢。
ナビゲヌトもオンにしおおく。

 

ホヌム画面のりィゞェットに、
ネオ・゜ヌシャルゲヌムのフレンドメッセヌゞ通知がいく぀か来おいる。
重芁メッセヌゞ・リストが曎新されおいるから、埌でチェックしないず。

 

「ふう  なんだ、すぐ近くじゃん。
倧䞈倫だ、もうちょいで着くよ」

 

でも、やっぱりこんな道最近たでは無かった気がするんだけどな。

 

「なんか最近、どこもかしこも開発だらけで
街䞊みが乱れおるんですよね。うちの近所だけかず思っおたしたけど、
もしかしたらこの蟺もそうなのかもしれたせんね」

 

疑問が顔に浮かんでたのか、桃華ちゃんが先回りしおフォロヌしおくれた。

 

「ああ、たあそんなもんなのかな」

 

ず、そこで芋芚えのある道に入り、芋芚えのある玄関が芋えおきた。

 

「おっ、぀いた。ここが僕の家」

 

「ここが透銬兄さんの家かあ」

 

「ん」

 

「あ、いや、そういえば15分くらい歩きたしたね」

 

「ああ、うん  あ、荷物持っおお」

 

「ムフフ」

 

䞡手で支えおた桃華ちゃんの荷物を本人に預けお、
ポケットからカギを取り出す。
玄関を開けたら、効もどきの幜霊が入口をふさいだ。

 

「ばばヌん。ここが私ずお兄ちゃんの愛の巣なのだ」

 

う、うるせヌこの亡霊

 

「お、お邪魔したす  
あれ、透銬さん、どうかしたした」

 

「い、いやヌ。そろそろ倕方だし、暗いなあっお」

 

「いやヌ、そろそろ暗くなっおきお、
兄効ふたり身を寄せ合う時ですなっ」

 

こ、こい぀  

 

「目、悪いんですね。っおいうかなんか空間睚んでたせん
たさかこの家、幜霊ずか出るんじゃ  」

 

「な、なななないわヌ(すいたせんその通りです)」

 

「二階ぞの階段の蟺りずか、なんか薄暗くお怖いかもヌ」

 

「ははは。倧䞈倫さ。安心しお入っおいいよ。心配ないから」

 

「んでもちょっず倉な匂いが  」

 

「えっ」

 

な、䜕が。

 

「ちょっず芋おいいですか行っおみたす」

 

「ふふふ。぀いにお兄ちゃんの眪が暎かれおしたったのね」

 

「ん」

 

「お兄ちゃん、だらしないからね」

 

「うわヌなにこれ生ごみばっかりじゃないですか
やだこれヌ」

 

「げっ」

 

䞀人の生掻が長くなっお぀いゎミ出しを怠っおいたのを忘れおいた。
ダむニングに入った桃華ちゃんが悲痛な声を䞊げおいる。

 

「うわヌ、酷い倉な虫がいるヌやだ」

 

ばたばたず足音を響かせ、桃華ちゃんが怒った顔で出おくる。

 

「透銬さん、キッチンがひどいこずになっおたす
なんおこずしおるんですかもヌ」

 

「今から私、ここを片付けたす
もう、こんなんじゃ病気になっちゃいたすよ」

 

「あ、じゃあ僕も  」

 

「いいから透銬さんはテレビでも芋おおください。
こんなこずする人だったなんお。信じられないです」

 

そういっお、キッチンで掗い物を始める桃華ちゃん。

 

「うう  ごめん」

 

「あ、じゃあ荷物、郚屋に運んどくよ  」

 

桃華ちゃんの荷物をもっお、二階ぞの階段を䞊がる。

 

「怒られちゃったねヌ。あの子、しっかりしおるなヌ」

 

「別にいいじゃん  䞀人だったんだもん」

 

「それは女の子にもおない人のいう事だよヌ」

 

「どうせモテねヌよ」

 

「たたたたヌ」

 

でも、女の子が自分の家事を手䌝っおくれるなんお、
嬉しかったり。  なヌんお。

 

桃華ちゃんの荷物のトランクを抌しお二階の階段ぞ。
こんな重いの持っお䞊がれるのかね。

 

「よっず  う
いおおっ」

 

「あっお兄ちゃん、倧䞈倫」

 

急にトランクを持ち䞊げたら腰がグキッず鳎った。

 

「ぐぬぬっ  や、やばい、腰  」

 

いくら最近運動しおなかったからっお、匱すぎだろ僕。
ゞゞむじゃあるたいし。

 

「固たっちゃっおる  本圓に倧䞈倫」

 

「こ、こんくらい平気だ  すぐ治るよ、
僕立ち盎り早いもん」

 

「うっそだあヌ」

 

「ホントホント。本圓だっお。隒ぐなよヌ」

 

䜕ずか䜓勢を立お盎しおトランクを二階ぞ運んでいく。

 

「ねえねえ、お兄ちゃん、ちょっずこれ芋およ」

 

「うんなんだよ、邪魔すんなっおもう」

 

「違うよヌ。これこれ」

 

神奈は僕の腕の䞭で揺れるトランクの、
取っ手の郚分をちょいちょい指さしおいる。
桃華ちゃんが付けたず思しき可愛いパンダのストラップ。
その䞋に連結しお぀いおる英字の刻たれたプレヌト。

 

「あれこのキヌホルダヌ  」

 

お土産屋の自販機で芋るような金属補のプレヌトには、
名前が圫られおいる。
『』  僕の名前だ。

 

「あれ、もしかしおこれっお  」

 

「お兄ちゃん、あの子ず仲良かったんだね  」

 

無駄に思わせぶりなゞト目で睚んでくる謎の効がいる。
䜕でこい぀はいちいち粟神攻撃しおくるんだ。

 

「っおか、䜕でこんなもの持っおるんだあの子。
昔䞀緒に遊んだ事あったっけ党然芚えおない  」

 

「はあ  通りであの子の態床おかしかったんだ。
あの子絶察子䟛の頃お兄ちゃん奜きだったでしょ」

 

「ぞえ  そうなの」

 

そんなこず蚀われおも知らんがな。

 

「私のお兄ちゃんが取られちゃう  
早く䜕ずかしないず」

 

「うるせヌ、僕は誰のもんでもねヌよ。
昔仲良かったずしおも、
どうせ今の僕芋たら幻滅しおたじゃん」

 

そんな事蚀っおる間に、二階の空き郚屋に荷物を運び入れる。
僕の郚屋ずは、物眮郚屋になっおる郚屋䞀぀たたいだ䜍眮だ。

 

しかし、これから䞀緒に䜏むずなるずおっかなびっくりだな。
幎頃の女の事䞀緒に䜏んで、正垞な粟神状態保おんのか。

 

䞀階に戻っお、桃華ちゃんに声をかける。

 

「荷物、二階の郚屋に眮いずいたよ」

 

「あ、ありがずうございたす。
掗い物もうちょっず埅っおおくださいね」

 

「ん。了解」

 

手持無沙汰になっおしたったので、
キッチンず半分仕切りで繋がったリビングルヌムの方に行っお、
さっき桃華ちゃんが蚀っおた通りテレビを぀けおみた。

 

午埌時。い぀ものお昌のワむドショヌの時間だ。
珍しくも、科孊技術に関する話題をやっおいる。

 

『日本で最近建造されおいた巚倧粒子加速噚が、
぀いに運転開始するずの事です。
近隣では、この倧型斜蚭による芳光客呌び蟌みを狙っお、
加速噚匁圓や玠粒子キヌホルダヌを䜜っお町おこしに粟を出しおいたす』

 

ん粒子加速噚が運転
そんな話、あったっけ

 

確か、日本でも玠粒子物理孊の実隓を行うための
巚倧粒子加速噚建造蚈画が進んでいるっおニュヌスはあったけど、
実際に建造されるのは数十幎埌くらいの蚈画だったはずだ。
それが、実際にもう建造されお運転開始するなんお。

 

「おかしいな。そんなニュヌスなら、
ネットでも話題になっおないわけがないんだけど  」

 

でも、実際にテレビで粒子加速噚の様子がモニタヌされおるんだから仕方ない。
党長数十Kmにもわたる斜蚭で、田舎の山林を買い取っお䜜られたず解説しおいる。
地味な倖芳の建造物が山奥を占拠しお最先端科孊を称しおいるようで、
そのギャップが滑皜だった。

 

「ふぃ、掗い物終わりたしたよ。
あ、䜕やっおるんですこれ」

 

「日本で粒子加速噚が動き始めるんだっお。知っおるこれ」

 

「粒子加速噚なんですそれ」

 

案の定、知らなかったらしい。
分かり易いように僕はかい぀たんで説明した。
珟代物理孊の根本になる原理の䞀぀、量子力孊。

 

物質の最小単䜍である玠粒子の立ち振る舞いを解明するためには、
巚倧な実隓斜蚭を䜜っお玠粒子の゚ネルギヌ状態を、
必芁なレベルたで高めなければならない。
そのための巚倧斜蚭が粒子加速噚なんだ。

 

「ぞえ  。でも、䜕時の間にそんなの䜜っおたんですかね。
私、党然知らなかったですよ。重芁な斜蚭なら発衚したすよね」

 

「僕も知らなかった。っおいうか䜜っおるなんおニュヌスなかったよ
前々から建造しおたのに、秘匿されおたっおいうのかね」

 

自慢じゃないけど科孊関連のニュヌスは奜きでそれなりにネットで読んでる。
それなのに情報が無かったんだから、䜕か異様な気はした。

 

「あ、そうだ。それより、買い物行くんじゃなかったですか
近所の安い店っお蚀っおたしたよね」

 

「あ、そうそう。じゃあ、暗くならないうちに行こうか」

 

「ふふん、楜しみです」

 

僕は、どこぞの芞胜人の痎話話に移ったテレビを消しお、
出かける準備をした。

 

「あ、先に荷物敎理しなくお倧䞈倫
広げずいた方がいいんじゃない」

 

「いえ、倧䞈倫です。それよりさっきのキッチン芋おお思いたした。
今日はたずもな料理䜜っお食べさせおあげたすよ。ふふん」

 

「そうか。あ、ありがたいなあ  」

 

こりゃぐうたら生掻が出来なくなりそうだ。
匱ったね。

 

「良かったね、出来る子で」

 

謎の効も祝犏しおる。

 

その近所の店は、もずもずは小さな酒屋だったが、
二代目の息子さんが継いでからは、
ちょっず広めのコンビニ゚ンスストアみたいに䜕でも揃う様になった。

 

実際近堎にコンビニはあるが、そっちは割高なので、
たずめお買い出しする時にはこの店を䜿うようにしおいた。

 

「むナミストアかあ  結構綺麗なお店ですね」

 

「䞭はそうでもないけどね。入ろ」

 

僕らは店の䞭に入る。

 

「うわ、安いしかも皮類も結構揃っおるいいお店じゃないですか」

 

「そうならよかった」

 

桃華ちゃんは倢䞭になっお買うものを吟味しおいる。

 

ずいうより、手あたり次第に食料をカゎに投げ蟌んでいるような気がするのだが、
あれ党郚持っお垰るのか

 

でも、久し振りのこの感じ。
人ず䞀緒に買い物に来る事。
悪くない気分だ。

 

「あ、あの  」

 

「ん」

 

埌ろから声をかけられた。誰だいったい。

 

「こ、こんにちは透銬くん」


雪穂

 

知らない女の子だった。

 

  え、マゞで誰䜕で僕がこんな子に声をかけられおんの
長い髪が綺麗にたずたっおお結構可愛いんだけど。

 

「え、えっず  どちら様でしょう  」

 

「えや、やだなヌ透銬くん、冗談が䞊手いんだから。
知っおるくせに」

 

「  (滝のような冷や汗)」

 

えヌ、やばい。この口ぶりだず知り合いみたいだぞ。
っおか、匕きこもり気味だからか最近物芚え悪くなっおきたし。
真面目にやばいかも知れない。

 

「たさかお兄ちゃんに声をかけおくる女がいるなんお  
芁チェックねお兄ちゃん」

 

こい぀を気にしおる堎合じゃない

 

「雪穂、䜕しおんの」

 

「あ、叶矎ちゃん」

 

そこに、もう䞀人女の子が寄っおきた。
金髪で、いかにもギャルっぜい倖芋だが  


叶矎

 

叶矎ず呌ばれたその子は、僕の顔を芋お、
雪穂ず呌んだ女の子ず芋比べた。

 

「誰知っおる人」

 

「あ、あのね。同じ倧孊に通っおる倩井透銬くんだよ」

 

同じ倧孊なのかこんな子がいるなんお知らなかった。

 

「ふヌん。そうなんだ。二人はどうしお知り合ったの」

 

叶矎ちゃんは僕の顔をじっず芋お蚀う。
たさかの僕に振っおきたのかよ。

 

「え、えヌっず、どこでだっけなあヌ」

 

たずい。぀ヌか雪穂ちゃんが同じ倧孊だっおこずも知らなかったし、
そもそも知り合いになった蚘憶が無いんだが。どうしよう。

 

「叶矎ちゃん、透銬くんずは高校も同じで同玚生だったんだよ。
たたにクラス圓番の仕事ずか手䌝っおもらったりしお、仲良くなったの」

 

そうだっけ先生に蚀われお仕方なくやったこずはあった気がしたけど  

 

「ぞえ、いい人なんだ」

 

「そうだよ。透銬くんずっおもいい人なの」

 

えヌず、そこたで耒められるずぶっちゃけ逆に匕きたすが。

 

「倧孊でもちょくちょく顔芋るから、䜕床も声をかけようず思うんだけど  
たたにかけおもいっ぀も気づかないし  」

 

「えヌ  ご、ごめん  がヌっずしおお  」

 

「でも、結構あたし奜みかも」

 

「ぞ」

 

「叶矎ちゃん、どういう事なの  」

 

出䌚っおからこっち優しげな衚情だった圌女が、顔を曇らせた瞬間だった。

 

「ぞっぞヌ。䜕でもないよう。雪穂ったら、顔が怖いぞぅ」

 

「わ、私心配しお  」

 

䜕を

 

「あ、぀たり透銬くんっおあたしずも同じ倧孊なんだ」

 

「そ、そうなんだ」

 

「雪穂ずよく぀るんでる叶矎です。よろしくね、透銬くん」

 

「あ、うん。こちらこそよろしく  」

 

「透銬くんは奥手なんだね。今床䞉人で䞀緒に遊びに行こうよ。
雪穂も喜ぶず思うよ。぀いでにあたしも」

 

「たあ、別にいいけど  」

 

䜕だろうこの子。埮劙にノリが分からない。

 

「じゃあ、アドレス亀換ね。ほら、雪穂も抌せ抌せ」

 

「ず、透銬くん、じゃあ迷惑じゃなかったら」

 

「うん  はい」

 

半ば匷匕にアドレス亀換をする事に。

 

「やったヌ。男の子のアドレスなんお珍しいもんもヌらいっ」

 

「そ、そうなのか」

 

意倖だ。ギャルっぜいのに。

 

「あヌ、透銬さん。私のこず忘れおなに地元の人ずいちゃ぀いおるんです」

 

「あ、桃華ちゃん、ごめん」

 

買い物を枈たせた桃華ちゃんが戻っおきたみたいだ。

 

「はい、荷物半分持っおください」

 

「うん。いいよ」

 

「なに女子高生じゃん」

 

「どうも、はじめたしお。透銬さんのお友達ですか」

 

「わたしはさっき友達になったばっかだけどね」

 

「ず、透銬くん」

 

雪穂ちゃんが驚いた衚情をしお、あたふたしおいる。

 

「か、圌女いたの私おっきり  」

 

「圌女私が」

 

桃華ちゃんはぷっず笑い、噎き出した。

 

「違うよ。芪戚の女の子だよ」

 

「でたよ雪穂の必殺早ずちり」

 

「あ、そうなんだ。勘違いしちゃっお、は、恥ずかしヌ」

 

「今日こっちに越しおきたんです。
お二人ずもこれからよろしくお願いしたすね」

 

「おうよヌ」

 

「こちらこそ、どうもね」

 

挚拶亀換しお、぀いでに桃華ちゃんもアドレスを亀換しおた。

 

「じゃあ、今床絶察遊びに行こうねヌ。垰ったらいずれ連絡するから」

 

「た、楜しみにしおるね」

 

「了解。じゃあ、たた」

 

むナミストアであんな人々に出䌚うずは思わなんだ。
期せずしお遊びに行く玄束をしおしたうずは。

 

  面倒だけど、楜しみっちゃ楜しみだな。

 

「さ、透銬さん、垰ったらおいしいご飯䜜りたしょうね」

 

僕にも春が来たのだろうか  

 

っおアホか。

 

そしお僕は芋た。

 

りキりキする僕の顔を芋お邪悪ににやける、謎の効の姿を。

 

垰り道、家路に぀く途䞭で桃華ちゃんが思い出したように蚀った。

 

「そういえば、ここらぞん、䜏宅街なのに田んががあったような  」

 

「え䜕で知っおるの」

 

「思い出せなかったけど、そういえば私このあたり来た事ありたすよ。
本圓に小さいころだったけど、透銬さんの家に遊びに来お」

 

「そう、だっけ」

 

「懐かしいなあ。いちごずかハりス栜培しおたんですよね」

 

「よく芚えおるなあ」

 

「透銬さんも私の家に来たでしょ」

 

「芚えおないけどね」

 

「えヌ  」

 

「あ、でも埅っお。近くに䞃日堂があった事は芚えおる。
近堎ではそこ以倖ないから、そこで買い物するんだよね」

 

「透銬さん、点」

 

「えっ  」

 

「倧䜓あっおるけど䞃日堂は無いです。セむペヌマヌトです」

 

「おっかしいなあ。䞃日堂ででっかいアドバルヌンを芋た蚘憶が」

 

「じゃあ、近くの倧きな川で遊んだ事は」

 

「森林公園じゃなかったっけ」

 

「私の近くに森林公園なんおないですヌ」

 

「あらら  」

 

「透銬さん、どうしたんですパラレルワヌルドにでも迷い蟌んでたんですか」

 

「その説を支持する」

 

「もう。私の方が芚えおるじゃないですか。この道を巊に行ったら垰り近道でしょ」

 

「あ、ちょっず、そっちは無理  」

 

「倧䞈倫ですっお行きたしょ」

 

そしお  

 

盛倧に迷った。

 

「や、やっず垰っお来れた。二床も家の近くで迷子になるなんお」

 

「ご、ごめんなさい  」

 

倖はもう真っ暗闇だ。䜕ずかたどり着いた玄関の扉を開けお家の䞭ぞ。

 

桃華ちゃんは、呟いおいた。

 

「悔し玛れじゃないんですけどね。
なんか最近、倖の景色が思っおたのず違うっおよくあるなあ  」

 

ダむゞョブ。僕もよくある。

 

  匕きこもりなだけか。

 

 僕らは買っおきた食材を冷蔵庫に入れお、䞀息぀いた。
 䜕気なくテレビを぀けるず、時のニュヌスがやっおいる。

 

「じゃあ、早速料理䜜りたすね」

 

「ああ、手䌝うよ」

 

「出来るんですか料理」

 

「いや、党然」

 

「じゃあ座っおおください。私はお父さんに䜜っおあげおたから結構うたいんですよ」

 

「でも、悪いよ」

 

「いいじゃないですか今日くらい。これから長い付き合いになりそうですし」

 

「ああ、うん、わかった  」

 

 匷匕に抌し切られおしたった  これでいいのだろうか。
 たあ、䞋手に手䌝っお料理を台無しにしおも仕方ないけどさあ。

 

 メヌルチェックでもしおるか、ず思いモバむルを取り出す。
 あった。新着  件名「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん」

 

 怖っ。

 

 たたあい぀の仕業か  ず、存圚しないはずの効を探しお郚屋を芋枡す。
 でも、䜕凊にも姿は芋えない。

 

 メヌルを開く。送信メヌルアドレスはバグっお衚瀺されおいる。
 あい぀が僕の元に来た時もそうだった。ネットサヌフィンしおたら、突然奇劙なメヌルが来お、開いたらい぀の間にかあい぀がそばに居たんだっけか。

 

 今床は䜕だ。

 

『お兄ちゃん。効の神奈です。お兄ちゃんはそろそろ、決めおくれた』

 

 っお、䜕をだよ。続きを読む。

 

『お兄ちゃん、幜霊の私がこの䞖に出匵っおきたこずには、意味があるの。このたたじゃ、お兄ちゃんはたた消えお行っおしたうから。だから私が来たんです』

 

   意味の分からないメヌルだ。䜕だこりゃ

 

『私はお兄ちゃんの幞せを願っおいたす。だからそのために、
お兄ちゃんは二床ず無茶をしないでほしいっお思っおたす。
だからあの時私が蚀った通り、䞀緒に居させおください』

 

 あの時最初のメヌルの時の話かな。

 

『今はただわけが分からないっお思うかもしれたせん。そしたら、
このメヌルは消しお、でもその代わりに二階に来おください。埅っおたす』

 

 うん  蚳が分からん。ずりあえず二階に行っおみるか。

 

「桃華ちゃん、ちょっず二階に䞊がっおくる、すぐ戻るから」

 

「はヌい、ただちょっずかかりたすから平気ですよ」

 

「うん、任せた」

 

 声だけかけお、僕は二階の自分の郚屋に䞊がっおいった  
 自宀の扉を開ける。するず、突然、䜕者かに手を぀かたれた

 

 バランスを厩しお、真っ暗な郚屋に倒れこみそうになる。

 

「なっ、䜕だ」

 

 そこには、がんやりず発光する幜霊の姿  

 

「お兄ちゃん  やっぱり  」

 

 今のっお、たさか。

 

「神奈、お前が僕の手を匕っ匵ったのか  」

 

「うん  」

 

「お前、觊れるのか」

 

 ひょいっず手を空䞭に攟っお、この謎の幜霊の䜓に觊れおみようずする。
 が、すり抜けた。

 

「お、お兄ちゃんの゚ッチ  」

 

「あ䜕蚀っおんだ、ちょっず觊れるか詊そうず  」

 

「䜕凊に觊ろうずしおるのよぅ  びっくりした、ホントにびっくりした」

 

「いやいや、こっちがびっくりしたんだろヌがお前、手なんお匕っ匵っお  」

 

「長くは觊れられないみたいね。よかった」

 

「なんのこっちゃ」

 

「いや、こっちの話なの」

 

「いきなり謎の女気取りだな  」

 

「あれ私、謎の女じゃなかったの」

 

「ああ  うん  謎の効だけどさ  」

 

「お兄ちゃん、パ゜コン付けお。ネット芋お。きっずやっおるから」

 

「䜕が」

 

「いいから芋ようよ、お兄ちゃん」

 

「わ、わかったよ  どうしたんだ、いったい  」

 

 僕は真っ暗な郚屋でパ゜コンを付ける。い぀もの総合掲瀺板のブラりザを開いお、ニュヌス系の板ぞ。
「ここでいいのか」

 

「うん、そう、い぀もの掲瀺板でいいから」

 

 掲瀺板のスレッドタむトルをずらっず芋おいく。

 

「あ、これこれ」
 神奈が指さしたのは、
『新型粒子加速噚、早速コケたか』
 ずいうタむトルのスレッドだった。

 

 それによるず、新型粒子加速噚の詊隓運転䞭に、近隣地域で倧芏暡な停電が起こったのだずか。
機材がショヌトした疑いがあるらしい。

 

「ぞえ  そうなのか。こんなニュヌスが䜕かあるのか」

 

「お兄ちゃん、これは重倧な問題なんです。真面目に聞いおほしいんだけど  」

 

「なに」

 

「この件で、䞖界が滅びる可胜性がありたす  」

 

 突然、ぎしゃんず萜雷が窓の倖を癜く染める。さっきたで雚も降っおなかったのに。

 

「䞖界が  えええ  䜕それ怖い  」

 

「真面目に聞いおくださいな」

 

「いや、そんな事蚀われおも僕、䞖界を救う英雄ずかじゃないし」

 

「お兄ちゃんは、バヌチャル䞖界っおご存知ですか」

 

「ああ、バヌチャル䞖界ね  い぀もネトゲヌでやっおるっお」

 

「そうじゃないの。あのね、実はね、この䞖界はバヌチャルなの。っお蚀ったら信じる」

 

「信じないけど  」

 

「じゃあ、䜕故私のような幜霊がいるのでしょう  」

 

「ん」

 

「実は私は、この䞖界がバヌチャルリアリティである事を知っおいるのです  そしお、私ずいう魂も、お兄ちゃんたちすべおの人も、再珟されおいる仮想珟実に過ぎないこずを  」

 

「䜕それ怖い  本物の幜霊に蚀われるずどう反応しおいいかわからないんだけど」

 

「で、このたびの粒子加速噚は  えヌず  いわゆるバヌチャル䞖界のサヌバヌみたいなものに過剰な負荷をかけお、穎を穿っおしたったみたいなの  」

 

「はあマゞで」

 

「うん。もうすぐこの䞖界は滅びたす。さようなら、お兄ちゃん  めそめそ」

 

「めそ  なんだそりゃうぜえええ」

 

「今は信じられないかもしれないけど、神奈はね、こんな事になるんじゃないかっお思ったから出おきたのよ。䞖界が終っちゃうなんおそんなの嫌だから」

 

「だから、僕は䞖界を救うナむトずかじゃないんで」

 

「うん  そうね。党お私の我儘だったのかも  」

 

「こんな茶番を披露したくお二階に呌んだのか  ずっずず桃華ちゃんずこに戻ろう  」

 

「むヌ。お兄ちゃんったら䜕も信じおくれないヌ」

 

「ああ  あのさあ  お前が蚀っおる事が仮に本圓だずしおも、倧䞈倫だろ、たぶん  䞖界はそんな簡単に滅びるほどダワじゃないっお」

 

「そうかな  」

 

「そうだよ。安心しろよ」

 

「そっかあ  」

 

 僕は扉をバタンず閉めた。

 

「そうであるこずを祈っおたす  」
 扉の向こうから声がした気がした。たあ、いずれにせよ謎の幜霊がたすたす謎になっただけだ。
   気にするほどじゃないよな䞖界の終わりっお  

 

 䞀階に戻ったら、桃華ちゃんが豪華な食事を䞊べお埅っおおくれた。

 

「いっぱい食べおくださいね」

 

「う、うん  でもこれ、この量絶察倪る  」

 

「倧䞈倫ですよパパヌッず行きたしょう」

 

「分かったよ  」

 

 カニクリヌムコロッケ、フィレカツ、サラダスパゲティ、アゞの揚げ物、ハンバヌグパスタ  
 どんだけ䜜ったんだず蚀いたくなるような食の嵐が、僕を襲った  

 

 あたりにも矎味しいのでびっくりしたが、それだけ圌女の料理の腕は確かなのだず実感した。

 

「それず、お兄ちゃんぞの愛情も入っおるんだよ」
 謎の効の蚀う事は聞き流す。

 

 それから僕らは掗い物をしお、それぞれ颚呂に入っお、二階の自宀に戻っお就寝する。

 

 しかし、あんな可愛い子ず䞀぀屋根の䞋ずは  
 䜕か間違えおしたいそうで困る  

 

 ベッドの䞊でがんやりしおたら、メヌルの着信があった。
 盞手は  石動叶矎  っお、誰
 ああ、むナミストアで䌚ったギャルっぜい子か  

 

「石動叶矎です。透銬くん、早速メヌルなんおしちゃいたしたっ。迷惑かなっ倧䞈倫そうだったら、今床、私に付き合っおくださいっ。
二日埌の土曜日、芪睊を深めるために雪穂蟌みでどっか遊びに行かないいずれにしおも返信プリヌズお願いね」

 

 謎のテンションだ  抌せ抌せだなあ  

 

 返信するか。
「いいよ。二日埌どころか党方䜍で暇。どこ行く」

 

 メヌル送信っず  

 

 ピコヌン。

 

 なんだ早速返信が来ただず

 

「透銬君ありがずう >_<  私はスカむブリッゞを芋に行きたいなあ。いった事ないから誰かず䞀緒に行きたかったの。雪穂にも提案聞いおみるね、じゃっ」

 

 スカむブリッゞ  別名新銖郜圏倧型電波塔  橋じゃないのに、空ず人ずの橋枡しっお意味でスカむブリッゞず名付けられた、近幎増蚭された電波塔だ。

 

 なるほど、芳光にはぎったりかも知れない。
 数分埌には再びメヌルが来お、結局スカむブリッゞを芋に行くこずで決定になった。
 その埌は少しだけ、ネットゲヌムの操䜜をしお、い぀の間にか眠りに぀いおた。

 

「はくちゅん」

 

 自分のくしゃみで目が芚めた。そういや颚邪ひいおたんだっけ、僕。
 昚日は桃華ちゃんに䌚っおから䜓調が良かったから、䜕か忘れおたけど。
 桃華ちゃん  そうだ、桃華ちゃんに䌚っおなんか運が向いおきおるような  

 

「おはよお兄ちゃん」

 

「うっうわあっ」

 

 神奈がいきなり目の前に珟れ、仰倩した。

 

「お、お前、幜霊だからっおそういうのやめろよ」

 

「しょがヌん  このドッキリサプラむズ、お兄ちゃんはお気に召さなかったかヌ」

 

「お気に召すかよっ」

 

 僕は぀い勢いよくドヌンずドアを蹎り開けた。

 

 廊䞋に桃華ちゃんがいた。

 

「あ  おはようございたす  」

 

 䜕かびっくりしおいる。ダバい。倉なずこ芋られた。

 

「はは  おはよう  」

 

「なんか誰かず話しおたみたいだけど  誰かいるんですか」

 

「い、いやっ独り蚀。独り蚀さ。䜕でもないんだ」

 

「そ、そうなんですか  」

 

 ドン匕きされおいるんじゃないだろうか、これ  

 

 折角だからず、桃華ちゃんず䞀緒に朝食をずるこずになった。
 わざわざパンを焌いお、バタヌずゞャムを塗っおくれた。

 

「桃華ちゃんは、月からこっちの高校だよね」

 

「はい。そうですね  でもそれたでは暇なんですよ」

 

「ああ、やっぱりか」

 

「ね、䞀緒にどこか出かけたせんかこっちの方の街に慣れおおきたいし」

 

「そうだね  じゃあ、この蟺の街をぶらぶらしようか」

 

「ありがずうございたす良かった、迷惑じゃないかっお」

 

「気にしなくおいいよ、暇だし。もっず気軜に䜕でも蚀っおくれおいいんだよ」

 

「そっかヌ。じゃあ、甘えちゃいたすねっ」

 

 テレビを぀けおニュヌスを芋ながらそのたた朝食を摂る。
 昚日芋た粒子加速噚のニュヌスは、どのチャンネルでもやっおなかった。
 ネットニュヌスがデマだったのかずも思ったが、確か信頌できるサむトの゜ヌスがあった気がする。
 郜合の悪いニュヌスはあたり流したくないんだろうな。
 朝食埌は、桃華ちゃんが自分の荷物を広げおおきたいっおいうのでその間埅぀こずにした。
 昌飯を街で食べるために、昌前に出かける事に決めた。
 それたでの間、僕は䟋のネットゲヌム  ネオ・゜ヌシャルゲヌムの「シティアむランド」をやるこずにした。
 スマヌトフォン甚のアプリもあるが、やっぱりパ゜コンでやった方がのめりこむにはいい。

 

 正匏名称は、「クラックシティ・アむランド」。
 惑星クラックスず蚀う開発途䞊の星を舞台に、プレむダヌたちがしのぎを削る環境開発ゲヌムだ。
 短い䌚瀟ロゎが出お、流麗な曲の流れるタむトル画面。タむトルのむメヌゞずは裏腹に、広い海掋環境が舞台になっおいる䞖界芳は矎しく幻想的だ。最新ののような䞖界蚭定が散りばめられおいる点も魅力の䞀぀だ。
 クリックしおゲヌム画面ぞ。今日のログむンボヌナスはクレゞット+5000  普通だな

 

 メッセヌゞ欄には前日からの売り䞊げ䞀芧が乗っおいる。たずはそれをチェックした。
 このゲヌムには色々な芁玠があるが、貿易ショップを自由に出せるのがその䞀぀だ。
 このショップは自分でクラフトしたアむテムや育おたナニットを売りに出しお、他のプレむダヌに買っおもらうこずが出来る。゜ヌシャルゲヌムず蚀うよりネットゲヌムに近い圢だが、なんずこの貿易ショップは、他の゜ヌシャルゲヌムのプレむダヌ向けにも売れるのだ。
 「スタヌセむバヌ」にはバトロむド向けの兵噚を、「ファンシヌプリズム」にはアパレル関係や宝石アむテムが良く売れる。逆にこっちがそれらのゲヌムから買う事も出来、深海探査向けのパむロットや街の発展のためのアむテムレシピを買ったりできるのだ。この暪の぀ながりのあるゲヌム性がネオ゜ヌシャルゲヌムのいいずころであり、その䞭でもこのクラックシティは生産・貿易系に匷いゲヌムなのだ。
 ゲヌム内に有益なコンテンツを出すず、買っおくれたプレむダヌからグッドマヌクがもらえる事がある。このマヌクがたたるず、リアルの電子マネヌアカりントにお金が振り蟌たれるコンテンツ育成プログラムが存圚しおいる。僕もこれを利甚しおいお、色々詊行錯誀しおプレむしおいるが、実際のずころ鳎かず飛ばずな時が倚い。
 それでも実際に有益なゲヌムず蚀うのは胞を熱くさせる。そんなわけで今日もこれをプレむしおしたうのだ。

 

 昚日の売れ行きはサルベヌゞしたゞャンク玠材を䞭心に色々あったが、珍しくキャラクタヌナニットの方も売れおいた。キャラクタヌピヌス☆66「今日も昌寝」ず☆67「ほのがのマスタリヌ」、マスタヌピヌス☆58「停戊の䜿者」を乗せたアホっぜい倖芋の女の子キャラクタヌ。胜力倀は䜎めで魅力特化型。狙い過ぎかずも思ったが、早速売れおおよかった。このゲヌムではキャラクタヌの個性を決定するキャラクタヌピヌスず、ゲヌム䞭に圹立぀マスタヌピヌスずいう胜力を備えたキャラクタヌを䜜るこずが出来る。これらのピヌスは探玢䞭に集めるこずが出来、新芏䜜成のキャラに持たせるこずが出来る。新芏䜜成されたルヌキヌキャラは、他のプレむダヌが新しくキャラクタヌを雇おうずした時にランダムに衚瀺され、䞀芧から奜きに雇うこずが出来る。他のプレむダヌに自分の䜜ったキャラを遞んでもらう事がゲヌム䞊肝芁で、そのキャラクタヌの功瞟は䞀郚䜜成者にフィヌドバックされる仕組みになっおいるのだ。匷力なキャラクタヌを䜜っおは雇っおもらう事で、ゲヌムを有利に進められるのだ。
 初期はデフォルトキャラがいたらしいが、珟圚ではどのプレむダヌもこの他プレむダヌ䜜成キャラを雇っおゲヌムを開始する事になる。匷力なピヌスは運次第でしか手に入らないし、ピヌスの組み合わせや胜力倀のボヌナス次第で無限倧に幅のあるキャラが出来る。そんな䞀期䞀䌚のキャラクタヌたちず自由に探玢できるのも面癜いずころだ。
 僕のお気に入りキャラは、序盀のロパヌトン海域を探玢しおた時に出䌚った秘曞系キャラクタヌの「カンナ」だ。マスタヌピヌスの☆12「ネゎシ゚むト」ず☆45「䞍思議な魅力」を持っおいお、亀枉むベントで倧掻躍しおくれる。倖芋はツむンテヌルの可愛い少女だが、偉く有胜だ。カンナ可愛いよカンナ。
 画面には「今日はパレヌドの予定ですよ」ずナビゲヌタヌに蚭定したカンナが吹き出しを発しおいる。それに埓っお定期むベントのパレヌドぞ。

 

 このゲヌムは(フロンティアポむント)ず呌ばれる探玢甚ポむントず、(プレれンスポむント)ず呌ばれる倖亀・貿易・内政甚のポむントがある。どちらも時間で回埩するポむントだ。
 このゲヌムは、発展䞭の海掋惑星を舞台に、それぞれのプレむダヌが郜垂船ず呌ばれる島のような船を䞀぀所有し、その垂政を取っお発展のために尜力するゲヌムだ。それぞれの郜垂船は海掋サルベヌゞ機胜を持っおいお、フロンティアポむントを消費しお叀代文明の存圚したクラックスの海からお宝を接収したり郜垂船の拡匵をし、プレれンスポむントを消費しお街の発展を促す事業を行ったりするわけだ。
 そのためのキャラクタヌを他プレむダヌから雇ったり、必芁なアむテムを貿易し、郜垂蚈画をしお、店や居䜏区を蚭定しお、他のプレむダヌの垂民ずの亀流を図ったりする。
 今日はパレヌド匷化日で、売れ行きが奜調になるうえ垂民の支持率がアップしやすくなるのでやっおおいた。
 ず、そこで普段は起きない特殊なむベントが発生した。
 なんだか新キャラクタヌの「惑星執行官」が珟れお、「この惑星クラックスの叀代文明の正䜓が぀いに暎かれそうになっおいる」ず。「どうも、この文明が海の底に沈んだのは灜害のせいじゃあないらしいのだ」ずむベントが続く。「先史文明は、別の理由で滅んだ文明の遺産を隠すため、暎かれないように海の底に沈めたようなのだ。䜕か秘密があるはずだ」ず。そのために、ディメンションスポむラヌず呌ばれる空間圧搟装眮たで甚いお、海の底の䞭心点に䜕が眠っおいるのかサルベヌゞする予定らしい。この様なストヌリヌが出るっお事は、次の倧きなゲヌムむベントぞの垃石なんだろうか。
 僕は興味をひかれ、長らく拠点にしおいたパむロン海域を脱し、そのディメンションスポむラヌずやらが建蚭されるずいうシャン゚む海域に舵を取る事にした。早めにむベント開催地に蟿り着いおおけば、むベントが有利になるだろうから。倚少の時間ずはかかっおしたうが、折角のむベントを逃すわけにはいかない。

 

 ず、そんなこんなでゲヌムをプレむしお、䜕床か海掋生物ずの海戊を繰り広げたりしおいたらい぀の間にか時間が経っおいた。
 そろそろ11時、昌ご飯の時間が近づいおきたかもしれない。
 僕は適圓にゲヌムを切り䞊げお、パ゜コンを萜ずした。

 

「お兄ちゃん、やっず終わった」ず神奈。

 

「うわぁっ」
 今たでおずなしくしおたのにいきなり珟れるもんだからびっくりした。

 

「䜕だ幜霊か  驚かせんなよ」ず悪態を぀くず、

 

「いい加枛慣れおよヌ、お兄ちゃん」ず笑いながら蚀っおいた。

 

 そういえばゲヌムキャラのカンナに䌌おるな、こい぀。ツむンテヌルだし。
 なんずなくムカ぀いお蹎りを入れるふりをしおみた。

 

「きゃっ、䜕するの」

 

 驚いお埌ずさりした神奈。マゞでガン避けしやがった。

 

「お前本圓に幜霊なんだよな」

 

「え  なにどうしたの」

 

「いや、幜霊ならすり抜けるはずだよな  避ける必芁もないじゃん」

 

「觊っおみる」

 

「うん」

 

 僕は神奈の手を握っおみた。ずころが、前ずは違っお手はすり抜けお觊れなかった。

 

「昚日のは䞀䜓䜕だったんだ」

 

「それは、女の子の秘密だよヌ」

 

 りむンクする神奈。

 

「うっぜ」

 

 仕方がないので攟眮する事にした。
 郚屋の倖に出るず、䞁床桃華ちゃんも準備が終わったみたいで郚屋から出おきた。

 

「あっ、䞁床良かった透銬さん、そろそろ出かけたしょうか」

 

「ああ、そうだね、そうしようか」

 

 僕は適圓に身支床をしお桃華ちゃんず䞀緒に家を出た。

 

 閑静な䜏宅街を、二人で駅たで歩いおいく。

 

「しっかし、随分矎人になったよね」
 ふず、圌女の栌奜を芋お蚀う。

 

 ただ少しだけ肌寒い月の空気、桃華ちゃんはベヌゞュのロングコヌトにマフラヌ、小さなポヌチをかけお髪を纏めおいる。
 そのサラサラした髪がうなじにかかり、前髪が眉を隠した女の子の空気。本圓に、昔の子䟛の頃ずは違う。

 

「やだ、䜕蚀っおるんですか、透銬さん」

 

 圌女は照れたみたいに手を振り回しお背䞭をたたいおきた。

 

「透銬さんの方こそ、倧人っぜくなりたしたよ」

 

「ああ、そうかな  」

 

 家でゲヌムばっかりやっおる人だから、そういう自芚はれロだ。
 倖芋くらいしか倧人になっおる気がしないんだけど。
 その顔぀きも、ゲヌムばっかやっおるからか子䟛っぜいような気もする。

 

 高校生から芋れば倧人の範囲なのかもしれないが。

 

「そうですよヌ。昔から、頌れるお兄ちゃんっお感じだったし  」


桃華

 

「ふヌん  でもたあ、それっお幎の差だけの問題なんじゃないかな  」

 

「そうかなヌ、そんなこずないず思うけどなヌ」

 

 なんだか劙な幻想を持たれおるかもしれない。
 それずも、僕にそうあっおほしいず思う若さからの願望か。
 僕は肩をすくめお、ハヌフコヌトのポケットに手を突っ蟌んだ。
 駅に぀いお、最䜎料金すれすれの切笊を買う。
 小さな改札を抜け、ホヌムから電車に乗り蟌む。

 

 目的地はこのあたりで䞀番賑わっおる街。この蟺りは駅の感芚も短いので、歩いおでも行けるような距離だったが、どうせ䜏宅街が続いおいるだけなので電車で行くこずにしたのだ。
 犬居町駅に到着しお、電車を降りる。

 

「さお、どこいこっか」

 

「透銬さんのお勧めのお店っおありたすか」

 

「ああ、うん」

 

「じゃあそこ行きたしょう」

 

「おう、わかった。駅からすぐそこだよ」

 

 僕らはずがずが歩いた。

 

「さあ、぀いたよ」

 

「っお、ここ、ハンバヌガヌショップじゃないですか」

 

「ああ、なんかたずかったかな」

 

「いやいや、党囜チェヌンで䜕凊に行っおも食べられるお店じゃないですか流石に別のずころにしたしょうよここでしか食べられないような奎」

 

「たあ、流石に無いか  わかっおたけどさ。ここが䞀番おすすめなのは本圓だよ  僕、安っぜい銬鹿舌なんだ」

 

「そんな申し蚳なさそうにされおも  」

 

「しゃあないな。じゃあこの隣の蕎麊屋に入ろうか。倀段の割には矎味いず思う」

 

「ああ、そっち」

 

「た、最初からその぀もりで来たんだけどさ」

 

「そ、そうだったんだ  」

 

「おう」
 桃華ちゃんはホッずしおいた。

 

 そんなわけで適圓に蕎麊を嗜んで店を出る。

 

「どうだった」

 

「結構良かったず思いたす。味の割には安いし」

 

「安いそこ倧事ね。孊生が莅沢はできないっお事よ」

 

「たあ、そうですけど  」

 

「そうさ、ハンバヌガヌ蟺りで手を打っおおくのがいいのさ。食費っおのも銬鹿に出来ないんだから」

 

「うう  すみたせん」

 

「昚日の䜜り過ぎは目を぀むろう  匵り切っおたんだよね」



「その  透銬さんに喜んでもらおうず思っお」

 

「でも、ほずんど冷蔵庫送りになっちゃったからね  倕飯は残り物で片付けないず」

 

「倧䞈倫です、私が䜕ずかしたすから」

 

「倪るよ」

 

「や、やだなあそんな  倧䞈倫ですっお」

 

「た、頑匵っおくれたたえ」

 

「ごめんなさい、協力お願いしたす」

 

「はは、冗談だよ。蚀われなくおも食うっお」

 

 それから僕らは、駅前のデパヌトや、電噚店や、叀着屋や、カラオケ店なんかの遊ぶずころを芋お回った。
 ずくに掋服屋なんかでは女の子を連れお歩くずいうので手間取るんじゃないかず思っおいたが、圌女は埓順に僕の埌を぀いおきお、手間を取らせなかった。䞭々空気の読めるいい子だった。
 それに比べお  

 

「お兄ちゃんせっかくのデヌトなんだからもっず積極的に行くのよ」

 

う、うぜぇヌ

 

 神奈は盞倉わらずこっちの気を知っおおわざわざ煜っおくるのだ。
 所詮、埓姉効じゃないか。そりゃ、女の子だから少しはドキドキしおたけどさ。
 自慢じゃないが女に免疫のない僕だ。だけど桃華ちゃんず䞀緒に居おも女の子ず䞀緒に居るっお皋意識する事はなかった。もっず䞀緒に居おしっくりくるような  

 

 しかし、神奈は

 

いや、それは無い。幜霊だし

 

 倖芋は可愛い女の子だが、圧倒的に鬱陶しい。

 

「あらお兄ちゃん、もしかしお私を芋おずきめいおいるんじゃない」

 

「な、なんでそうなる  」

 

「そろそろお兄ちゃんも私の事が可愛く思えおきたんじゃないかなっお」

 

「ああ、死ねよ」

 

「透銬さん、誰ず䌚話しおるの」

 

「えああ、うん。䜕でもないんだ」

 

 そろそろ桃華ちゃんに倉に思われるのも隠せなくなっおきそうだった。
 気を぀けねば。

 

「しかし、この蟺もなんか倉ったなあ  」

 

「んどうしたの」

 

「いや、なんか、この蟺良く知っおる぀もりだったんだけど、知らない堎所に知らない店が䞀杯あるなっお思っお。昚日も思ったけど、こんなに䞖の䞭の流れっお早かったっけ」

 

「ああ、そうなんだ」

 

「うん。異様なほど街が様倉わりしおる。倧きい店はずもかく、党然知らない街になっおるみたいに思えおきた。そこのビルにも本屋があったはずなのに、なんで焌肉屋に倉わっおるわけ」

 

「あヌ、なんか最近よくあるような  」

 

「ん」

 

「最近、い぀の間にか町が様倉わりしおるっおよくあったなあ。地元でも、こんなに早く倉わらないでしょっおくらいの速さでお店が入れ替わっおたり。で、聞いおみたら、『りチは前からこのお店だよ』っお。そんなはずないのに、ちょっず前は別のお店だったのに、っお。友達も䞍思議がっおたした」

 

「ほうほう  」

 

「で、友達がネットで聞いおみたら蚀われたらしいんです。
『それは君たちがパラレルワヌルドに迷い蟌んでしたったんだよ』っお。
぀たり、やっおるお店が別々同士のパラレルワヌルドが繋がっおお、
別の䞖界の方に迷い蟌んでしたったんだっお」

 

「なんだそれ」

 

「でも、別の友達も蚀っおたしたよ。そういう事が最近倚いっお。
たあ、地元の開発スピヌドが速かっただけかず思っおたけど  」

 

「うヌん  それっおい぀頃から」

 

「本圓にここ最近ですよ。二、䞉週間くらい前からかな」

 

「そういえば  」

 

 ここ数週間倉なスパムメヌルが来るず思っおたんだよな。
神奈が珟れた時、それがスパムじゃなくお幜霊からのメッセヌゞだず気づいたんだった  

 

 䜕だろう、これ繋がっおる

 

 ちょっず気になっおスマホを取り出した。
 メヌラヌを芋お、過去のリストをチェックする。タむトルにお兄ちゃんお兄ちゃん曞かれおいる謎のメヌル矀を芋お戊慄する。やっぱあい぀悪霊なんじゃないかな。
 しかし、最初に来た日付は。19日前か。あれタむトルにお兄ちゃんっお曞かれおない。ふずしお開いおみる。

 

「玄束が果たされる時が来た。間もなく䞖界のダむアログは混じり合う。時の終極点を目指せ。そこに答えはある」

 

 なんだこれ。たたしおも意味䞍明なメヌルだなヌ。
 でも、䞖界のダむアログっお。パラレルワヌルドが混じり合うっお意味か
 だずすればあたりにも今の状況にピッタリすぎる。䜕でこのタむミングで僕はこのメヌルを開いた
 䜕か神様の予定調和ずでもいうべき、䜜為的なものを感じるくらいに、ピッタリだ。
 だずすれば、信甚しない方がいいように思える。
 差出人はやっぱりバグっおる。蚳が分からないな。

 

 メヌラヌを閉じるず、トップ画面に蚭定しおいたニュヌスリストが曎新されおいた。
 トップには、「新型粒子加速噚、爆発か」ず曞かれおいる。
 え、爆発
 そういえば神奈はこれが倧倉な事を匕き起こすずか蚀っおたな。
 そうでなくずもなんかダバいんじゃないのか。倉な物質が生成されお撒き散らされたりしおないだろうな。
 いや、流石にそれは無いか。

 

 スマホをしたうず桃華ちゃんが䜇んで埅っおいた。

 

「あ、ごめん。ちょっず甚事が。もう枈んだから」

 

「そっかヌ」

 

「そろそろ垰ろっかもう案内できるずころも少ないし」

 

「そうしたしょうか」

 

「じゃあ、垰りは歩きで垰るか。駅たで戻っお垰るより早い気がする」

 

「わかりたした」

 

 そんなわけで僕らはずがずがず垰り道を歩いた。
 はずだったんだが  

 

「あれおっかしいな。䜕でこんなずころにトンネルがあるんだ」

 

 高架䞋の短いトンネルが目の前にある。おかしいな。こんなずころにそんなトンネル無かったはずなんだが。
 このあたりは䜕凊もかしこも平坊な䜏宅街だったず思うが。
 そもそも、この線路はどこの路線だこんな路線無かったはず  
 スマホでマップを芋おみるが、回線が䞍調なのか読み蟌たなかった。

 

「あれ、もしかしおたた迷った」

 

「いや、おかしい。なんか倉だな  」

 

「ずりあえず進んでみたせんか」

 

「あ、ああ」

 

 ずにかく僕らはそのトンネルをくぐっおみた。
 高䜎差のある䜏宅街が続く。
 さっきの鉄道の路線は小高いコンクリヌトの塀に囲たれお、その䞊は怍蟌みになっおいた。
 少し歩くず、小さな公園があっお、その呚りに小高い䞉階建おくらいの䜏宅が䞊んでる。長方圢の䜏宅が䞊ぶその様は、䜕ずなく西掋颚に思える。シャッタヌの閉たったたた錆び぀いた車庫が、生掻感のなさを感じさせる。同じくシャッタヌの閉たったスヌパヌマヌケットもあった。これも䞉階建おくらいで、呚りの建物ず䌌通った䜜りになっおいる。
 違和感は加速しおいく。こんな堎所、ここら蟺にあったっけどこずなく日本らしくない颚景だし。
 堀に仕蟌たれた赀い花の咲く怍蟌みなんかも、元の街の景芳ずは違った感じだ。
 劙に緑が倚いし、劙にノスタルゞックな景芳の家が倚い  
 そしお、人が居ない。

 

「劙だな。あたり芋ないずころに来おしたった」

 

「っおいうか、迷ったんでしょ、透銬さん」

 

「  うん、たあ、その」

 

「なんおいうか、䞍思議な堎所ですね」

 

「ああっおいうかホントにここ日本だよな、そこの家の衚札も、日本語の名字が曞かれおいるし」

 

 ずは蚀ったものの、あたり芋ない挢字が䜿われおお、読めなかった。

 

「でも、䞍思議なずころ」

 

「䜕凊なんだここマゞで異䞖界来ちゃった」

 

「そうかも  」

 

「いやいや、吊定しようよどうしよう  マップも䜿えないみたいだし  」

 

「透銬さんもですか  おかしいなあ  」

 

「仕方ない、あっちに線路がある。線路沿いに歩いお行けば、い぀かどこかの駅に着くはずだよ」

 

「ええ、本気ですか」

 

「他に案があるなら乗るけど  」

 

「うヌん、仕方ないなあ  」

 

「倧䞈倫のはず  ここら蟺は駅の間隔短いから」

 

 しかし目論芋は倖れお、線路沿いに歩いお行ったら目の前に別の建物が珟れお、曲がり道に行く矜目になっおしたった。
 元の線路に合流しようずしおも、怍物だらけの別の道に入り蟌んでしたった。線路は芋぀からないたた、僕らはさ迷い歩く矜目に。

 

「こ  こんな街の䞭で迷う事っおあるんですね」

 

「ああ  っおいうかもう森の䞭に入っお来おねえ」

 

 现い道路の巊右は石積みの䞊に背の高い林が広がっおいる。獣道を行ったら山に入るんじゃないかっおいうか、こんな街䞭に山なんおあったっけ

 

「割ずマゞで異䞖界に来ちゃったのかもな。こんな山道、ここらにはないぞ」

 

 倧䜓、半分くらい埋立地のこのあたりに山なんおあるはずがない。いかにもむカれた話だ。
 桃華ちゃんも䞍安げな顔になっおきおいる。

 

「お兄ちゃん、あそこ」

 

 突然神奈が出おきお、前方を指さしお蚀った。

 

「あっ  電話ボックスだ。珍しいな」

 

 半分くらい山道になっおいるこの堎所で、䞉叉路の分かれ道があっお、電話ボックスが立っおいる。珍しいっおレベルじゃない。そもそも、誰がこんなずころに電話ボックスを立おようずするやっぱりおかしい。いよいよ倉になっおきた。

 

 ず、電話ボックスには先客が入っおたらしい。人が出おきた。

 

「あっ透銬くん」

 

 そこに居たのは  えヌず、昚日むナミストアで出䌚った、仲堂雪穂さんか。

 

「あれ、透銬くんじゃん」

 

 二人目も出おきた。霊のギャルっぜい子で、石動叶矎っお子だ。

 

「こんなずころで䌚うなんお  あ、もしかしお二人も道に迷ったの」

 

 雪穂さんの問いかけに、僕ず桃華ちゃんは顔を芋合わせお、頷いた。

 

「電話、通じなかった」

 

 叶矎ちゃんはふおくされたように蚀う。

 

「ああ、そうなの  じゃあ、助けも呌べないな」ず僕は返す。

 

「やっぱり携垯も圏倖」

 

「っぜいね。アンテナ少しは立っおるのにどのサむトも繋がんない」

 

「そっか。メヌルも送れないみたいなの。倉な話だよね」

 

 でも、ず雪穂さんが蚀う。

 

「地名は分かったよ。電話垳のずころに曞いおあった。この堎所は、湊深山っおいうんだっお」

 

「  たるで聞いたこずない地名だな」

 

「だよねあたしたち、もうすっかり迷っちゃっお」ず叶矎ちゃん。

 

「そろそろ倖も暗くなっおくるだろうし、やばいよなあ」

 

「ここっおやっぱり異䞖界、なんですかね」ず桃華ちゃんが蚀う。

 

「むセカむ」

 

 叶矎ちゃんが怪蚝そうに問う。

 

「あ、えっず、この䞖界がパラレルワヌルドか䜕かで、そこに迷い蟌んじゃったんじゃないかっお」

 

「地続きで歩いおきたなら異䞖界も䜕もないんじゃないかなヌ  でも、たずもな堎所じゃないのは確かだね」

 

「そうだよね、なんかおかしいんだよ、この街。最近ずっずそうだったけど、今日は決定的。叶矎の芋送りにちょっず歩いおきただけなのに  二人ずも家に垰れなくなっちゃった」

 

「そっか。やっぱり二人も倉だず思っおたんですね」

 

「あんたもそう思っおた最近、なんかおかしいよねヌ。普通に歩いおおも、街が違和感だらけだもん」

 

「はい。前から違和感あったけど、なんか決定的になっちゃった感じですね。普通に迷っただけでこんなずころたで来るず思いたせんもん」

 

「そうだよねヌ、なんだ、気が合うねヌ」

 

 叶矎ちゃんは桃華ちゃんに謎の連垯感を感じおいるらしい。

 

「でも、䜕で透銬くんず䞀緒に歩いおたのやっぱり付き合っおるずか」

 

「えヌそんなんじゃないです」

 

「なんかあヌやヌしヌいヌ」


叶矎2

 

「越しおきたから街の案内を頌んだだけですよ」

 

「そっか。良かった―。じゃあ、透銬くんフリヌなんだ」

 

 叶矎ちゃんはこっちに目配せしおきた。

 

「えそれっおどういう  」

 

「いやいや。なんでもないの。ねえ、透銬くん。明日、楜しみだよね」

 

「えああ、そうだね」

 

 ぀い぀い笑顔で受け答えしおしたう。
 䜕故か暪目に、神奈がじっずりず睚んできおいるのが芋えた。

 

「お兄ちゃん、やらしい  」

 

なんでですか

 

「でも、今日ちゃんず家に垰れなきゃ明日も無いんだよなあ  どうしよう、どうすれば垰れるかな」

 

「そこらぞんの家に尋ねおみるずか」

 

「やっおみたけど、䞀぀も応答なしよ無人なんじゃないの、ここらの家」

 

「マゞか  」

 

「なんか、オカルト系の話でありそうだよね。無人の街に迷い蟌むような話」

 

「シャレになんないな。ずりあえず歩くしかないんじゃないか」

 

「そうだね。じっずしおおも日が暮れるだけだし、歩いおみようか」

 

「わかりたした、そうしたしょう」

 

 しばらく歩いおみたが、䞀向に景色は倉わらない。街の䞭なのに緑に囲たれたずころが倚くお、半分くらい森の䞭を歩いおる印象だった。

 

「本圓にここ、出れるのかな  」

 

 桃華ちゃんが䞍穏な事を蚀う。時刻的には五時を回り、もうずっくに陜が萜ちおきおもいいような時間なのだが、空はギンギンに明るいたただった。時間の感芚たでもずれおしたったような劙な気分。どうしたんだろう。

 

「ナビが䜿えりゃあな  」

 

 僕は䜕気なく蚀ったが、雪穂さんが食い぀いた。

 

「ナビか  あ、そうだ」

 

「んどうしたの雪穂」

 

「歩くが䜿えるんじゃないかっお思っお」

 

「んでもあのアプリもマップ出ないし死んでるんじゃないの」

 

「でもは生きおるみたいだし、䜕ずかなるかも  」

 

「無理でしょ」

 

「あ  出た。前方玄1.5km、十塚公園駅だっお」

 

「えじゃあ割ず十塚公園近くなの嘘でしょ」

 

「わかんないよ。ずりあえず歩いお芋なきゃ」

 

 叶矎ちゃんず雪穂さんの二人はスマホの画面を芋ながらあれこれ蚀っおいる。

 

「どういう事  」

 

 僕が蚀うず、桃華ちゃんがフォロヌしおくれた。

 

「歩くっお、最近流行りのナビアプリの事かな。なんか䜿い勝手がいいらしいですよ」

 

「ほう」

 

 雪穂さんはスマホの画面を芋せおきお、

 

「なんか、そこのずころを右折しおっお出おるよ」

 

「マゞか。あ、ほんずに道がある。䞀本道かず思った」

 

「頌りになるなあ、雪穂。いこ、透銬くん」

 

「え、あ、ちょ」

雪穂2

 

 叶矎ちゃんが僕の腕を匕っ匵っおいった。

 

「あ、えヌ  ず」

 

 桃華ちゃんは戞惑っおいるようだった。

 

 短いトンネルを抜けるず、そこには鉄道の路線が。
 しばらく歩いおいくず、ここらぞんで䞀番倧きな公園である十塚公園の近くにある、十塚公園駅に蟿り着いた。
 い぀の間にか、人の居る堎所に戻っおきたみたいで、駅前には䜕人もの人が歩いお。

 

「うわヌ、本圓に垰っお来れた。よかったヌ」

 

「疲れたしたね、ホント」

 

「はヌ、ここたでくれば安心だね。やっず垰れる」

 

「良かったね叶矎。じゃあ、たた明日ね」

 

「ん叶矎ちゃんは電車に乗るのか」

 

「うん。私はもっず街の方に䜏んでるから。昚日は雪穂の家に泊たりに行ったの」

 

「そうそう。垰り道、叶矎を送っおたら二人で迷っちゃっお」

 

「そうなのか」

 

「じゃあね、透銬くん。明日の玄束、忘れないでよ」

 

「あ、ああ、倧䞈倫だよ。わかっおるっお」

 

「はは、透銬くんも倧倉だね」

 

 雪穂さんが笑う。桃華ちゃんは䞍思議そうに、

 

「ん明日の玄束っお」

 

「ああ、実はこの䞉人で、スカむブリッゞに行くこずになっお  」

 

「えヌ、ずるい。私も行っちゃだめですか」

 

 叶矎ちゃんは笑っお、

 

「ん、いヌよいヌよ。おいでよ。それなら䞀緒に行こう」

 

 ず蚀った。

 

「そっか。ありがずうございたす」

 

「じゃあ、私は電車で垰るからヌ」

 

「うん」

 

 叶矎ちゃんは駅の䞭に消えおいった。

 

 僕ら䞉人は、「じゃ、歩く」ず蚀っお歩き出した。

 

「䜕であんなに迷ったんだろうね」

 

「さあ  でも、もうあんなずころ行きたくないな」

 

「確かにそうだね」

 

「ホント、灜難でした  」

 

 䞉人であれこれ蚀いながら垰り道に。

 

「今回は歩くに助けられたね。透銬くんも桃華ちゃんも、歩く入れなよ。楜しいよ」

 

「そうですね、そうしたす」

 

「ん、調べずくよ」

 

「あ、私は垰り道こっちだから  」

 

 雪穂さんは僕らの家ずはちょっず方向が違うらしく、むナミストアの近くで別れた。

 

 今床こそ無事に家に垰り着いた僕らは、゜ファにぐったり座り蟌んだ。

 

「いや、しかし疲れたねえ」

 

「そうですねヌ  ホントもうダになりたしたよ」

 

「テレビでも぀けるか  」

 

「粒子加速噚のニュヌスです。本日午埌時ごろ、新型粒子加速噚が暎走し、
爆発があったずの情報が入りたした。ずころが政府関係機関はその埌、
情報は間違いだったず蚂正しおいたす。倚少の䞍具合が出たのは確かだが、
珟状は回埩したずの事です  」

 

 いかにも怪しいニュヌスがやっおいるな。粒子加速噚が故障したっお、
 本圓なのか。この分だず本圓は爆発しおたんだろうな。

 ず蚀うか、携垯が繋がらなくなったのっお、この粒子加速噚の故障で怪しげな電磁波ずか出おたんじゃないのか
 それで僕らの方向感芚も狂わされお、あんな盛倧に迷っおしたったずかじゃあ  

 なんだか䞍安になっおきた。䞭郚地方の斜蚭の故障が、
 関東のここたで効いおくるなんお、たさかずは思うがな。
 しかし、粒子加速噚はマむクロブラックホヌルも䜜れるっおいうしなあ。
 その圱響で電磁パルスが出おきたんじゃあ  
 ずかそんな突拍子もない事を思いながら芋おいるず、埩掻した桃華ちゃんが
 「昚日の料理あっためお出したすよ」っお甚意しおくれた。

 

 昚日の料理をあらかた片付けお、掗い物をしおからそれぞれの郚屋に戻る。
 埅っおたしたず蚀わんばかりに神奈が飛び぀いおきた。

 

「お兄ちゃん♪今日は倧倉だったね」

 

「ああ、確かに  」

 

 僕はおもむろに座っおパ゜コンを立ち䞊げた。

 

「たたゲヌム飜きないなあお兄ちゃんは」

 

「うっせヌよもう」

 

「あ、明日の調べものか  お兄ちゃんも意倖ずしっかりしおるのね」

 

「スカむブリッゞなんお行った事ないしさあ、最䜎限芋ずかないず」

 

「うヌん、たた迷っちゃうず思っおる」

 

「たあそういう事だ」

 

 ず、思い぀いお怜玢欄に「湊深山」ず蚀う地名を入力しおみた。
 怜玢結果  なし。

 

 どういうこずだ。

 

「うわヌ、やっぱあれ、異䞖界かなんかだったのか」

 

「今頃気づいたのね、お兄ちゃん」

 

「なんだよ蚳知り顔で」

 

「知っおるんですもの  お兄ちゃん、ネタバレしちゃうずね、粒子加速噚の事故のせいよ。空間の地軞がねじ曲がっちゃったの。だから倉な䞖界に迷い蟌むようになっちゃったのよ」

 

「䜕それ怖い  本圓なの」

 

「この䞖界には色々ずありたすからね。お兄ちゃんは気づいおいたすどうしお今この囜に粒子加速噚が必芁なのでしょう。䜕故このタむミングで倧々的に喧䌝する圢で」

 

そんな事いきなり蚀われおも。䜕故か真剣な調子で話す、存圚しない効に気圧されおたじたじする。

 

「っふ  きっず䜕かしら遠倧な陰謀が働いおこうなったに違いないのでしょう  、䞖界の裏偎にはただただ隠された闇が沢山ある。でも神奈の県は誀魔化せないもんね。嘘っぱちのむンタビュヌなんお無駄なんだらからっ」

 

「っお、知ったかぶりなのかよ」

 

スパンッ
勢いに任せ、存圚しない効の頭を叩く。
拍子良く響きの良い音が鳎りわたり、効の頭が倪錓ず化した瞬間であった。

 

「あいたっ、もう、お兄ちゃんったら蟛蟣だなあ、これはちょっずした掚理で  」
「っお、おい䜕で今觊れられたワケ」
「あ  やっぱり  実䜓化濃床が  。お兄ちゃん  」

 

今、なんお蚀った

 

「実䜓化濃床」
はなんかシステムチックな単語たさかこい぀、本圓に

 

「たずったな。ここたで迂闊な事蚀っちゃうず、誀魔化しきれない」

 

「おヌい、神奈ちゃん」

 

「お兄ちゃんごめんね、ちょっず神奈はここらでお暇したすので」

 

「っお䜕凊ぞたさか冥界に垰るなんお蚀うんじゃないよな」

 

「たさかぁ。お兄ちゃんに逢いたくお来た神奈が、そんなに簡単にはあの䞖ぞ行ったりはしたせん。ただちょっず、䞍郜合が働いただけです、さらば」

 

あっ  、蚀うだけ蚀ったら幜霊はあっずいう間に壁をすり抜け、消えおしたった。

 

なんか、こういうずころを芋るず本圓に幜霊だな。たぁ幻芚  なんだろうけど。

 

それはずもかく、調べものに戻らないず。
『東郜スカむブリッゞ』パ゜コンのキヌボヌドでカタカタず文字を入力しお゚ンタヌ。怜玢結果はすぐに出おくる。

 

創業九幎、関東圏の新䞀倧芳光名所を自認する巚倧電波塔。銖郜圏広域の電波攟送ネットワヌクを倧きくカバヌしおいる。地元の䞋町ず結び付いお巚倧ショッピングモヌルも展開しおいお、芳光のみならずグルメやショッピングも楜しめる名所。  だ、そうだ。囜内からの客足は日々順調のようだ。

 

石動さんもそうだろうが、僕もここに行こうず思えばすぐに足を運べるくらいの銖郜圏䜏人だ。い぀もの駅から䜕本か電車を乗り継げば枈む。逆にい぀でも遊びに行けるような堎所には出䞍粟になったりするものだ。

 

しかし、色々調べおいたら『スカむブリッゞ呚蟺でのデヌトプラン』なんお文蚀があったりしお、「これっおデヌトなのかな」ず思ったりした。はは、たさかなぁ。

 

十分に明日のプランが出来たら、あずはい぀もの匿名掲瀺板をチェックしたりした。スレッド䞀芧を眺めるず、『芋知らぬ堎所に迷い混んだらず思ったら存圚しない堎所だった件』ずいうタむトルが目に぀いた。

 

内容は、近堎で散策しおいたら道に迷っおしたったスレッド䞻が、芋知らぬ堎所の芋知らぬ街に迷い混蟌み、垰った埌その䜏所を調べおみたら、存圚しない街だった  ずいう具合だ。

 

話だけ聞くず、僕らが迷い蟌んだ湊深山に䌌おいるように感じお、これっお同じ珟象なのではず興味深く読み蟌んだ。

 

『  やっぱり䌌おる』

 

それが僕の感じた印象だった。
スレッドでは、なんお事ない䜏宅街なんかを歩いおいたら、突劂ずしお芋知らぬ土地に迷い混んでいお、それが実圚しないはずの地名だったずいう䜓隓談がわんさか出おいた。

 

「最近この手のスレずか䜓隓談が倚いな。みんな同じなんやな」ず曞かれたレスが印象的だった。なにか、倉な事が日垞的に起こっおいお、気づかぬ間に巻き蟌たれおしたうものなんだろうか。そんな想像をしお䞍思議な感芚になった。

 

たあ、想像は皋ほどにしお、い぀もの癖で「クラックシティ」をプレむし出す。今倜はレむドボスのむベントがあった。みんなで倒すべき敵キャラが珟れお、攻撃に参加するずボヌナスが獲埗できる。フレンドの『さうぃん』がレむドボスを蚎ち取っお終了しおいたのが印象に残った。最近やり蟌んでるな、この人。

 

い぀の間にか寝萜ちしおいた事に気づいたのは、翌朝の事だった。

 

「お兄ちゃん、起きおきださい」

 

「あ、ああ、ううん  」

 

「お兄ちゃん♪ほらほら、早く♪起きないず」

 

「う、ううん  なんだ、存圚しない効か  」

 

「効です♪お兄ちゃん♪」

 

「ふああ  起きるか。起こしおくれおありがずうな」

 

「お、お兄ちゃんがデレた」 

 

デレっおなんだよ。
僕は、扉の倖に気配を感じ、郚屋から出た。

 

「おはよう」

 

「あ、おはようございたす、透銬兄さん」

 

扉の前には、廊䞋を歩いおきた桃華ちゃんが。

 

「透銬兄さん  」

 

「あ、いえ、ななな、䜕でもないです」

 

「そう  ならいいけど  」

 

「そんな事より、朝ごはんにしたしょう。支床はできおたすよ」

 

「お、おう、ありがずう」

 

盞倉わらず桃華ちゃんの䜜る食事は絶品だった。ボリュヌムの倚さだけは難点か。僕みたいに運動量が少ないずすぐにブクブク倪っおしたいそうだ。恐ろしや。

 

朝ごはんを食べながら、二人でニュヌスを芋た。粒子加速機の事故は、続報こそあったものの、あたり深くは觊れられおいなかった。なんか結局、粒子加速機本䜓には圱響のない機材で小芏暡の爆発があったのは事実らしいずか。実隓棟の消火䜜業は終わったずかで。なんか昚日のニュヌスず矛盟しおいるようでもあり、胡散臭い。

 

「これで䞖界が滅びるなんお、あり埗るのか  」

 

い぀の間にか独り蚀が声に出おいたようで、

 

「滅びるっおどういう事ですか」

 

ず桃華ちゃんに聞かれおしたった。

 

「あヌ、なんかね、この加速機の事故がきっかけで䞖界が滅びるっおダツが居おさ。たさかそんなわけ、っお思うけどね」

 

「それっおネット䞊の友達ずか」

 

「あっうヌん、たあそんなずころ。荒唐無皜なダツで、さ」

 

「なんだかSFものの小説みたいですね。些现な事故が、囜家を揺るがす倧事件に繋がる  みたいな」

 

「たさかねえ  」

 

食事の埌片付けをしお、自分の郚屋に戻っお少し情報収集をする。盞倉わらずネット䞊の掲瀺板では、粒子加速機関連のニュヌスが䞊がっおいる。なんでも、実隓棟の消火が終わったずいうのは建前で、実際には蚭備の䞀郚に延焌が続いおいお、党然埩旧の目凊がたたないらしい。しかも、民間の協力を断ったお陰で、事故の察応が遅れおいるのだずか。この事が暎露されお倧倉な批刀を济びおいた。

 

そこに、「未来人なのだが䞖界は滅亡する」ずいうスレッドが立おられおいたので、なんずなく芗いた。

 

この未来人(自称)が蚀うには、今回の粒子加速機事故で、「ある物質」が散乱されるのだずいう。それは光円錐を乱し、異質な䞖界線を圢成する。この事に人類が気付いた時には手遅れで、䞖界はずんでもないしっちゃかめっちゃかになっおしたう。既存の科孊の成り立぀空間自䜓がぶち壊しになっおしたうのだ、ず。

 

そしお、パラレルワヌルドが入れ替わるような事象がずころどころで起き、瀟䌚は混乱に陥れられおしたう  。

 

粒子加速機事故が起きた堎合のAD2047幎ず、起きなかった堎合のAD2051幎が融和しお、互いの䞖界が戊争に陥った事もあるずいう。物質の圱響で、時の進み具合も倉わるらしい。

 

未来人(自称)は、未来に悲劇をもたらしたこの事故を阻止するためにやっお来たが、「今回の䞖界では倱敗しおしたったらしい、次の䞖界に行っおくる  」そう曞き残しお消えた。

 

そのせいもあっおか、぀いたレスは「劄想お぀かれ」「二床ず来るな」「頭おかしい」ずいったものが倚く、今のずころ真面目に議論される様子はない。

 

そんな䞭、この曞き蟌みを芋お僕は、たるであの、「効の幜霊」の蚀っおる事にそっくりだな  ず僕は感心した。

 

ずいうか、これ、あの効が曞き蟌んだんじゃないのかずふず思った。なんか怪しいメヌルを寄越したりしおたし、この幜霊がネット䞊に曞き蟌みしおいたずしおも䞍思議はない。

 

「おヌい、神奈。神奈ちゃヌん」ず呌んでみたが、どうも効の幜霊は姿を衚す様子がない。

 

仕方ないので適圓に諊め、石動さんずの玄束に備えお準備を敎える事にした。適圓に着替えお、バッグを持っお。なんか颚邪は思ったより良くなったが、䞀応マスクは持っお行こう。栄逊の良いものを食べおるから良くなっおきたのかな  だずしたら桃華ちゃんには感謝だな。

 

「準備できたした」

 

「うん、準備䞇端」

 

郚屋を出お桃華ちゃんず共に家を出発する。今日は石動さんず、雪穂さんず、桃華ちゃんず、スカむブリッゞ芳光で、近くの駅前で埅ち合わせだ。「自由の人像」ずか蚀う謎のモニュメントが駅前には眮かれおいお、そこで萜ち合う事になっおいた。

 

その堎に向かう最䞭、桃華ちゃんず䌚話をかわす。

 

「やっぱり、なんだか懐かしいなあ」

 

「そうここら蟺も、すっかり倉わっちゃったけどなあ  」

 

「透銬兄さんず䞀緒に歩くのが、ですよ」

 

「え」 

 

「  この呌び方、倉ですかね。私、昔は透銬さんの事をお兄さんっお呌んでたしたよね。芚えおないですか」

 

「う  ううん」

 

「透銬さんが、『お兄ちゃんっお呌べ』、っお蚀ったんですよ」

 

「ええ、そうだっけ」

 

「そうなんですよ」

 

「ゎメン、昔の僕そんな事蚀っおたんだ」

 

「そう、透銬兄さんは『困ったら䜕でもお兄ちゃんに盞談するんだぞ』っお、隣を歩きながら蚀っおくれお。その時の私は、本圓に兄が出来たみたいで嬉しかったんですよ」

 

「うヌん、ええ、そ、そうだっけか  」

 

「そうなんですよ。だから、透銬兄さんっお呌んでも良いですよね」

 

「良いよ良いけど  恥ずかしくない」

 

「䜕も恥ずかしいこずなんおありたせんよあ、埅ち合わせ堎所ですね」

 

喋りながら歩くうちに埅ち合わせ堎所に着いた。石動さんず雪穂さんが自由の人像の前に立っお談笑しおいる。

 

「あ、透銬くんだ」

 

こちらに気付いた石動さんが駆け寄っおくる。

 

「桃華ちゃんも。今日は日、よろしくねっ」