Victo-Epeso’s diary

THE 科学究極 個人徹萼 [CherinosBorges Tell‘A‘Bout] 右上Profileより特記事項アリ〼

G.N.S.

📘 G.N.S. - 別離の理由

G.N.S.4.44 ──空が落ちてくる。 廃病院のベッドで寝転がりながら昨夜の事を思い出す。 眩しすぎたあの星空の彼方に消えていった彼女の事。 もう朝日は昇っているはずの時間なのだが、天体の軌道が歪んでいるかのように光も姿を現さない。 その代り、天に瞬く…

📘 G.N.S.[4-5] 十二年後

記憶の中で、柔らかい夕日が窓から射しこみ、視界が鮮やかな赤で彩られている。開かれた窓から吹き こむ風は、窓枠の上に座る先輩の長い髪を、たおやかに揺らし続ける。 僕はそのころ高校二年生だった。放課後の校舎、静かな部室棟の一室。僕らは二人でそこ…

📘 G.N.S.[4-4] 彼女は行った

風の音が聞こえて目を覚ます。 周囲の視界は暗い。だけどその向こうには無数の瞬き輝く光の点……迫ってくるような星空が目の前に あった。 僕はベッドに寝かされていた。体にかけられた薄汚れた布団を蹴って、硬い枕から頭を起こす。 動いた時、わき腹が痛ん…

📘 G.N.S.[4-3] 未来のこと

意識が真っ暗闇に染まったと思うと、今度は次第に明るくなってきた。何かが開く音がした。自分の中 の閉ざされた扉が開き、自分の実存が溶け、魂が肉体から解放されたような気がした。その外側に飛び 出していくと、あまりにも眩い光が僕を貫く。だけど不思…

📘 G.N.S.[4-2] 星詠みの子供達[後]

いつの間にか閉じていた目を開く。目の前には少年が立っている。その後ろの廊下の外では、操られた 市民たちが大勢で待っているのが見える。この少年は何ものなんだろう。考えるまでもない。ジオシン メトライザーだ。だけど、他の市民とは異質な感じがする…

📘 G.N.S.[4-2] 星詠みの子供達[前]

空気は少し肌寒くなってきた。走り続けて温まる体と、そこから抜けていく熱を感じる。壊れた街の向 こうに見える空が、少しずつその色合いを変えていく。薄暗い雲の向こうで日が落ち、再び夜が訪れる 時が近づくのがわかる。それでもまだ日が落ちるまでには…

📘 G.N.S.[4-1] 思考する箱[後]

奥の部屋に入ると、僕が助けた少女は、ベッドの中からぼんやりとこちらを見ていた。部屋の中は暗く 、窓から射す星の光が彼女の顔を照らしている。かすかに聞こえる息遣いは断続的に、少し苦しそうに 、響いている。だけど、こちらを見た少女は、その苦しさ…

📘 G.N.S.[4-1] 思考する箱[前]

遠い記憶の中で、電子生命の『僕』と古竜が会話している。 「地球が滅びた時の話……?一体いつ、地球が滅びたと言うんです?このエクスプローラー船が旅立つ まで、そんな記録はどこにもなかったはずです。旅立ってからは地球の状態を確認する術もない。なの …

📘 G.N.S.[3-3] 世界の敵[後]

西暦4000年台、5度目の千年紀も後半を迎えていた頃――僕は、ネットポリスのとあるスポットで、他 の電子生命<インフォミアン>の男と、テーブルの座席に座って会話をしていた。そこは、精神への快楽 や陶酔感を、合法的なレベルで味わわせてくれるサービスエ…

📘 G.N.S.[3-3] 世界の敵[前]

それから、笹森修一は死んだ。 昭和19年のことだった。 戦時中のことだ。それは、空襲だったのだと思う。突然の衝撃と爆発。僕は、戦火の中で焼かれて、体 は焦げて、やがて灰のようになり、死んでいった。 ……え?昭和、19年だって? その頃には、僕は、…

📘 G.N.S.[3-2] 波動論者は笑う[後]

僕は漠然とした気持ちで読み始めたのだが、途中からは、どこか茫然としながらこの文章を読み進めて いた。胸騒ぎが止まらなかった。あまりにも飛躍した論理展開と、結論を言うためだけに持ち出された ような科学用語。どこまでが本当なのかはわからない。異…

📘 G.N.S.[3-2] 波動論者は笑う[前]

夢だった。僕は夢を見ていた。結局のところ、そういうことなのだろう。あの時、目が覚めたと思って いたけれど、実際には寝ぼけたまま、半分夢を見続けていたのだろう。なに、珍しいことじゃない。時 として夢は、現実以上にリアルに振る舞い、自らの心を揺…

📘 G.N.S.[3-1] 揺らぐ世界

加賀美さんと一緒に彼女の家に戻ると、宮田が居た。宮田は玄関を開けるなり、リビングから顔を出し て呟いた。 「……おかえり」 「ただいま、宮田さん」加賀美さんは返事をした。 僕が口を開く前に、もう一人見知った顔が宮田の後ろから現れた。彼女はピンク…

📘 G.N.S.[2-2] 二つの真実

「……くん……しゅーくん」 僕を呼ぶ声が何処からか響いていた。若い女の子の声だった。まるで薄い壁を通して聞こえてきたよう なくぐもった感覚が僕の心を揺さぶっていた――この声はいったい、誰のものだっただろう。そこには 懐かしさに似た、どこか暖かいぬく…

📘 G.N.S.[2-1] 合コンにて

「じゃあ私もう帰るね」 「え」 「あなたもあまりダラダラしてると卒業なんてあっという間だぞ!」 「あ、ちょっと先輩……」 「じゃあ ね」 その光景は何度もフラッシュバックしている。 あの日の僕は何を言おうとしてたのか、それだけが思い出せなかった。 …

📘 G.N.S.[1-1] 先輩は言っていた

「あなたは―― あなたは自分が宇宙と一体だと思った事はない? 自分のすべてが宇宙と等しく、宇宙のすべてが自分に入り込んでくるような――」 長い黒髪が陽光に照らされ、赤光を反射するエナメル質が風に舞い踊る。 カーテンがバサバサと音を立てる、夕暮れの…