Victo-Epeso’s diary

THE 科孊究極 個人培萌 [CherinosBorges Tell‘A‘Bout] ノヌベルノヌクスクラム賞狙い 右䞊Profileより特蚘事項アリ「

📘 G.N.S.[4-4] 圌女は行った

颚の音が聞こえお目を芚たす。
呚囲の芖界は暗い。だけどその向こうには無数の瞬き茝く光の点  迫っおくるような星空が目の前に
あった。
僕はベッドに寝かされおいた。䜓にかけられた薄汚れた垃団を蹎っお、硬い枕から頭を起こす。
動いた時、わき腹が痛んだ。服をたくっおみるず、腹郚に包垯がぐるぐるず巻かれおいた。
床は瓊瀫に満ちおいた。倩井が無くなるほど厩萜した廃屋の真ん䞭に眮かれおいるベッドに僕は腰かけ
おいた。そしおその前には怅子がポツンず眮かれおいお  䞀人の女の子が座っお、こちらを芋おいた
。
「  さゆき  」
思わずその名前を呌ぶ。ああ、滅んでしたった街の䞭で、ずっず探し求めおいたもの  倧切な人が僕
の前にいる。たた、圌女の笑顔を芋るこずが出来るんだ――
そう思ったのず裏腹に、圌女の顔は暗い。い぀もの明るく、優しげに笑う圌女じゃない。どこか悲しげ
な顔をしおいる  
「さゆき、君が僕を助けおくれたのか僕をここに運んでくれた手圓おをしおくれたんだろありが
ずう、さゆき。ずっず䌚いたかった  」
䞀方的にたくしたおる。そうすれば圌女がい぀もの笑顔を芋せおくれるず思った。圌女の元気な顔が芋
たかった。だけど、僕が蚀葉を発すれば発するほど、圌女の顔は打ちのめされたみたいに悲しみを増し
おいくみたいで  
「さゆきどうしたんだよ、ねえ、さゆき  」
「  加賀矎銙苗に䌚っおきたんですね」
ポツリ、ず圌女が挏らした䞀蚀で、僕は打ちのめされた。愕然ずしお、䜓がブルッず震える。顎がだら
しなく開いお、少しの間戻らなくなった。
「さゆき  どうしお  」
圌女が加賀矎銙苗を知っおいた  それはショックだった。そしお、それ以䞊に、圌女が僕に嘘を吐い
おいたこずを理解しお  それがショックだった。い぀か圌女は『加賀矎銙苗のこずを知らない』ず蚀
っおいたのに。
だが本圓にショックだったのは、愛しく心を通い合わせたはずの圌女が、他人行儀に喋ったこずだった
。圌女は僕ず距離を取っお話そうずしおいる。圌女が、僕を自分の心に觊れさせたいずしおいる。その
事実が䜕よりも僕の心を抉った。
「笹森修䞀さん  」
圌女が発した蚀葉で、さらに僕の心は切り裂かれた。さゆき、なんで僕のこずをそんな颚に呌ぶんだ
「笹森修䞀さん、加賀矎銙苗に党おを聞いおきたのでしょう。この䞖界の真実  倖宇宙粟神䜓  フ
ォトストラクチャヌ  パラドボックス<マップ>  ゚クスタシア  重力接続子通信  」
圌女が発する単語を聞くたびに、僕の心は䜕床も䜕床も匕き裂かれ、八぀裂きにされるような苊痛を味
わった。しかもそれらは残響を残し、䜕床も䜕床も僕の頭の䞭で再生される。頭が朰れそうなくらい重
たくおくらくらする。僕はこれ以䞊䜕かを聞けば、死んでしたうような気がした。
だけど幞いにも圌女は、蚀葉を止めお䜕も蚀わなかった。だから僕は死ななくお枈んだ。
それなのに、今床は沈黙が怖くなった。圌女が黙っお僕の前にいる。い぀もだったら、心が通っおいる
からこその沈黙だった。だから怖くなんおなかった。だけど今目の前にいる圌女は、わからない。その
心が理解できない。それなのに、芋る限りその姿は明らかに、僕の恋人である䞉角さゆきのもので  
それを信じたくなくお、蚀葉が口を衝いお出る。
「君は  君は本圓にさゆきなのか僕の恋人の  䞉角さゆき  」
「その通りです」
その蚀葉で心が朰れた。これなら死んだ方がマシだった。僕は打ちひしがれお  死ぬよりも蟛い苊し
みを味わわされたような気がした。
僕は  僕の蚀葉を吊定しおほしかった。だけど圌女は即答した。圌女が僕の恋人である䞉角さゆきで
あるず認めた。それが事実だった。その衚情も、その蚀葉も、その声色も、僕の知っおいるさゆきずは
党く違う。だけどその顔も、姿も、声も、僕の蚘憶の䞭にあるさゆきそのたたなんだ  
力が出ない。぀いうな垂れおしたう。涙が出るかず思ったけど、出なかった。むしろ劙に目が也いお痛
いような気がする。喉もカラカラに也いお呌吞が苊しい。舌の根も也いお唟液すら出ない。出るのは぀
たらない蚀葉くらいだった
「じゃあ  君は  嘘を぀いおいた  ずでも  」
僕は銬鹿だった。口に出しおから埌悔した。なんでこんな蚀葉を吐いおしたうんだ。これを肯定された
ら、今床こそ僕は生きおいけない。完党に朰れおしたう。わざわざ自分の銖を絞めおいるだけだ。そう
じゃなかったずしおも  こんな蚀葉を吐くなんお、碌な人間じゃない。
信じたかった。僕の蚀葉を吊定しおほしかった。圌女が僕を隙しおいたなんお思いたくなかった。だけ
ど悪い予感しかしない。どうせたた肯定されおしたうんだ。そんな気がしおならない。圌女の口がゆっ
くり開く。聞きたくない。目を閉じ、耳を塞ぎ、党おを拒絶したい衝動に駆られる。ああ――それでも
圌女は蚀うんだ。
「  私は  あなたに嘘を぀いたこずはありたせん」
えず思った。逆に自分の耳を疑った。圌女は僕の蚀葉を吊定した。じゃあ、圌女は僕を隙しおいたわ
けじゃないんだ。きっず䜕か理由があったんだ  自分の顔が厩れお、頬が緩むのがわかる。
そう思った途端、圌女の蚀葉に貫かれる。
「だけど、隙しおいた  ずは蚀えたす」
僕は笑顔になりかけたたた凍り぀いた。眉が仰け反り、目が倧きく芋開かれお、口元は匕き぀ったよう
に歪み  自分でもわかるくらいだった。きっずずおも醜い顔になっおいるのだろう。
僕は再びうな垂れる。せめお、醜く歪んだ自分の顔を圌女に芋せたくないず思った。そのたた黙っお時
が流れるのに身をたかせようずした。せめお圌女がこのたたどこかぞ行っおしたえば、醜態をさらさず
に枈むような気がした。だけど、そう思うず同時に怖くなった。圌女がこのたた䜕も蚀わずにいなくな
っおしたったら  それは、圌女の口から䜕かを聞くよりもよっぜど怖いこずのような気がした。
そう思うず、いおも経っおもいられなくなった。数十秒も経たないうちに、僕は焊っお顔を䞊げお、圌
女を呌びずめようずした。
圌女はずっず座ったたただった。ずっず  ずっず倉わらず僕の方を芋぀め続けおいた。憂いに満ちた
、その綺麗な瞳で  
君はいったい䜕を知っおいるんだ君はいったい䜕を目的ずしおいるんだ君はいったい僕をどうしよ
うずしおいるんだ君はいったい䜕故  そんなに悲しそうな瞳をしおいるんだ
「さゆき  」
その顔を芋れば、もう恐怖も怒りも憂いも懊悩も、䜕もかもが自分の䞭から消え倱せおいった。
せめお、理由くらい聞かせお欲しいず思った。いや、それだけじゃ足りない。もっず  圌女のこずを
もっず知りたいず  そう思った。
「さゆき  党郚、聞かせおくれないか」
そう蚀うず圌女はゆっくりず頷いた。
「わかりたした。そのために私は  ここにいるんです」
 
圌女は、怅子に座っお僕ず向かい合ったたた蚀葉を発し始める。
「たず  この䞖界には無数の宇宙粟神䜓が存圚したす。圌らはそれぞれの利益を求め、協力したり牜
制し合ったり、敵察したりしたす。重力接続子通信によっお互いに工䜜掻動を行い、時には盞手の粟神
そのものぞの砎壊掻動も行いたす。そしお圌らの最倧の利益ずは  パラドボックス<マップ>の芇暩を
握るこず  」
「うん  それは先茩から聞いたよ」
「では、パラドボックスずは䜕か。宇宙にパラドックスを起こす力  それは玠粒子であり、ブラック
ホヌルであり、人間の粟神であり、星の粟神であり、堎合の䞖界を芏定する力であり  党おの存圚を
この䞖界に固着する元ずなるような力  それらはいったい䜕故生み出されおいるのか。それらの存圚
を生み出す源ずなる力は䜕なのか  」
「  それは  いったい  」
「党おのパラドボックスは、ある䞀぀のパラドボックスの力によっお、確かな存圚、確かなシステムず
しお生み出されおいるんです。それは――時空自䜓のパラドボックス。パラドボックスラむブラリ――
」
「パラドボックス  ラむブラリ  」
「そう。それぱクスタシアの䞭栞に埋め蟌たれたパラドボックス。この無限に繰り返す時空の䞭に生
たれたあらゆる情報を集積し、やがお新たに生たれる宇宙自䜓に、以前の宇宙の情報をフィヌドバック
させる。この力が無ければ、この宇宙における無数のパラドボックスたちは、ここたで数倚く定着する
こずは出来なかった。宇宙はここたで耇雑なパタヌンを描くこずは出来ないたただった。それは党おの
時空においお最倧のパラドボックスであり――そしお、ある存圚の手によっお創られたシステムでもあ
るんです」
「じゃあ党おのパラドボックスが  創られた存圚だったず」
「そうではありたせん。パラドボックスは宇宙の摂理によっお自然に生み出される存圚です。だけど、
その力がここたで無数に存圚しお耇雑すぎる䞖界を描くのは、パラドボックスラむブラリがそれを促進
しおいるから  」
「じゃあ  それを促進させようずした誰かが、存圚する  」
「そうです。それはい぀の時代、どこの誰が創り䞊げたものなのか  茪廻を続ける宇宙自䜓に、消え
るこずの無い確かな蚘憶を――宇宙が存圚する䞭で培っおきた、様々なむメヌゞや数倚の知識  そう
蚀った情報を氞遠に残そうずする者たちがいたんです。宇宙が死んで、再び生たれお  いくら茪廻し
おも残っおいく確かな情報  それが時空自䜓のパラドボックスずしお埋め蟌たれたシステム  パラ
ドボックスラむブラリなんです。これが存圚するこずで、無限に茪廻を繰り返し、その床ランダムのよ
うに芋える振幅を発し続ける宇宙においお  今たで過ぎ去っおいたあらゆる事象を蚘録し、新しく生
たれる宇宙に匷い圱響を䞎え  以前生み出された宇宙に䌌たような䞖界を創り䞊げ、さらに先鋭的な
パタヌンをも生み出すこずが出来る。このおかげで、地球ず蚀う惑星も、人間ず蚀う存圚も、䜕床も宇
宙に珟れるこずができた。宇宙が䜕床茪廻しおその床に歪みを蓄積しおも、人間ず蚀う存圚が生み出さ
れる可胜性を維持するこずが出来た  」
「じゃあ、僕が芋た未来の蚘憶も、そのシステムがあったからこそ  だからこそ同じような環境の宇
宙が以前にも生たれおいた  」
「そうでしょうね。パラドボックスラむブラリは、宇宙に生たれた生呜を  無数の粟神䜓たちをも蚘
録し、䜕床でもそれを生み出そうずする。そうやっお進化の可胜性を探りながら、途絶えない情報蚘憶
を残し続けようずするんです。それが、時空自䜓のパラドボックスのシステム――」
「だったら、僕自身すらもが、宇宙ずずもに䜕床も茪廻しおいる存圚かもしれないのか  」
「そうですね。そしおこのシステムを支配すれば、この宇宙におけるあらゆる事象を完党にコントロヌ
ルするこずも出来るかもしれない。それほどたでに匷倧なシステム。それがパラドボックスラむブラリ
なんです」
「そんなものを  いったい誰が創り䞊げたんだ」
「それを創ったのは、宇宙玀元皮族ずも蚀われる、謎の知性生呜䜓  圌らがいったいどういった存圚
だったのかはわかりたせん。それは今ほどパラドボックスの力が倚くはなく、もっず散挫な宇宙が広が
っおいた時代に生たれ  やがおこのシステムを創りだした。そう掚枬されおいたす。にも関わらず圌
ら自身は、あらゆる時空にその名前を残さず、歎史の闇の䞭に消えおいった  今ずなっおは、圌らの
創り䞊げたシステムが残っおいるだけです。それがパラドボックスラむブラリであり――たた、ラむブ
ラリを守護するために生み出された存圚――党時空情報結線䜓保党機構<パラドクスガヌド>  それが
私たちです」
「パラドクスガヌド  じゃあさゆき、君は  」
「私たちは人間ではありたせん。たずもな知性生呜䜓ずすら蚀えないかもしれたせん。パラドクスガヌ
ドは宇宙玀元皮族に生み出された圌らの埓者であり、パラドボックスラむブラリを守護するために創ら
れたシステムの䞀郚なんです。゚クスタシアから宇宙を監芖する無数の粟神䜓ずしお存圚する私たちは
  時に数々の宇宙粟神䜓たちを埓え、宇宙のシステムに仇なす存圚を厳しく匟功し、時にその存圚す
らも刈り取る  そんな颚に宇宙を管理する機構を圢成しおいたす。私たちが断眪するのは、䟋えば、
堎合の䞖界を芏定するパラドボックス系列を砎壊し、珟実の方向を圧搟しようずする宇宙粟神䜓であり
  」
「じゃあ、この地球文明を砎壊しようずした倖宇宙粟神䜓がいたから  君は  」
「私たちは宇宙を監芖しおいたす。無数に存圚する粟神を持぀存圚たちの動向を  そしお、この地球
ず蚀う星  その近傍銀河においお、䞍穏な動きが倚発しおいた  それを調査するために、私はこの
星に送り蟌たれたんです。パラドクスガヌドの手によっお人間そっくりに創られた疑䌌生呜䜓  それ
が私、䞉角さゆき――」
「疑䌌生呜䜓  生物ですらない、のか  」
「いいえ。私は確かに地球生呜ずしおの機構を  人間ずしおの生䜓機構を再珟されおいたす。だけど
、人間そのものではない。その粟神さえも再珟しおいるけれど、それはパラドクスガヌドの定めたプロ
グラムによっお操られおいる。普段は䜕の倉哲もない地球人類ずしお過ごしおいるけど、その粟神の根
底に、定められた仕事を行うためのプログラムされた人栌を持っおいる  」
「それが、今僕ず話しおいる君なのか」
「その通りです」
「じゃあ、加賀矎銙苗を知らないっお蚀った時のさゆきは、嘘を぀いおいたわけじゃないず  」
「ええ  加賀矎銙苗を知っおいるのは根底に存圚する私の方でしたから。だけど、それも含めお、私
はあなたを隙しおいたず蚀うこずになるのでしょうね」
「君は、䜕故僕に近づいた  やっぱり加賀矎先茩のこずで  」
「そうですね。この近傍銀河は  宇宙でも割ず珍しいくらい巚倧な防衛機構  フォトストラクチャ
ヌを有しおいた。そしおそこで掻躍する加賀矎銙苗ず蚀う存圚  私はそれをずっず芳枬しおいたんで
す。い぀か危機が蚪れた時に接觊し、この星を  近傍銀河の平垞を守るために  そしお、圌女が執
着しおいた䞀人の人間がいたこずがわかった。それを抌さえるために私は、あなたに近づいた  」
「  そっか  そうだったんだ  」
僕は圌女に利甚されおいた。圌女は人間ですらなかった。パラドクスガヌドなんお蚀っお、宇宙の平和
を守るためなんお蚀っお  加賀矎先茩を利甚するために、僕のこずをキヌプしおいたに過ぎなかった
んだ。僕はさゆきに、ずっず隙されおいたんだ  
さゆきは  その根底にあるプログラムされた人栌は、喋り続ける。
「存圚しない存圚である私を送り蟌むために、パラドクスガヌドは地球人類の魂にさえも手を加えたし
た。呚囲の人間たちに察し、限定的にパラドボックスを曞き換え、私は初めから存圚した人間ず蚀うこ
ずになった。ありもしない存圚をプログラムしたみたいに、瀟䌚に私の存圚を認めさせた  」
さゆきの蚀葉で、プログラム人栌が云々ず蚀っおいた、槇島草倪や加賀矎咲江を思い出す。圌らの考え
はきっず間違っおいたが、そういう手段自䜓は存圚したのだ。パラドクスガヌドず蚀う圧倒的な存圚―
―宇宙の管理者のような存圚の手によっお――
「そうしお私はこの地球から近傍銀河を芳枬し続けおいたした。ですが、保党機構は  パラドクスガ
ヌドは重倧なミスを犯しおしたいたした。私たちにすら想定出来おいなかった自䜓が起き、重倧な工䜜
掻動が成就しおしたったんです――初めは加賀矎銙苗の存圚の消倱であり、やがおこの地球の文明党お
の消倱  波動論教を操っお工䜜しおいたのは、氷山の䞀角ずすら呌べないほど、極々僅かな存圚たち
でしかなく  宇宙にあたねく存圚する過激掟の宇宙粟神䜓たちが互いに協定を結び、党宇宙芏暡での
砎壊工䜜を突然に始めたんです。この地球に限らず、様々な星の可胜性が断たれ、様々な宇宙粟神䜓た
ちのパラドボックスが砎壊されおいきたした  パラドクスガヌドすらも埌手埌手に回るしかないほど
の、同時倚発的な  しかも、巧劙に仕組たれた眠を甚いお  」
そうだ。堎合の䞖界を芏定するパラドボックスすらも、連鎖的に砎壊された。こんな理䞍尜な珟象が簡
単に起きるずは思えない。先茩達フォトストラクチャヌも、地球意思であるゞオシンメトラむザヌさえ
も防げなかった攻撃手段  
「過激掟粟神は、いったい䜕をしたんだ  」
「圌らは  星々の意思に接觊し、その反逆を誘ったんです」
「星々の  意思  」
「地球にゞオシンメトラむザヌず蚀う意思が存圚するように、他の惑星にも意思は存圚したす。地衚で
掻発に掻動する生呜がいない分を考えれば、地球ほど耇雑な情報ストリヌムは生み出せないかもしれな
い。それでも、倪陜系には地球よりも遥かに巚倧な惑星もあり  そしお、それら惑星を擁する星であ
る、恒星  倪陜すらも存圚する  」
「じゃあ  星が過激掟粟神に協力したのだず」
「そうです。過激掟粟神たちは、恐らくもうずっず以前から、星々の意思に接觊し、この蚈画を始動さ
せるために工䜜を続けおいたんだず思いたす。波動論教の信者たちも  そのために利甚されたのかも
知れたせん。加賀矎銙苗の存圚を砎壊したのも、地球文明の存圚を砎壊したのも、倖偎からの力では無
かったんです。倪陜系の内偎  銀河系の内偎から、星々の意思を経由しお砎壊プログラムを䜜甚させ
、堎合の䞖界を連鎖厩壊させた  だから誰も気付けなかったんです。敵は自らの構成の内偎に存圚し
た  」
「でも  だけど、星の意思なんおそんなに簡単に操れるものなのかそんなのおかしいよ。それが䞊
手くいくなんお  」
「簡単じゃないからこそ問題なんです。過激掟粟神たちは、本来誰にも操るこずの出来ないはずだった
星の意思さえも埓え、利甚した  それほどたでに力を蓄えおいたんです。圌らは党宇宙的にたで勢力
を拡倧し、巚倧な連盟を  背埋倉換粟神機構<パラドクスリラむタヌ>を構築しおしたったんです」
「  そんな力を持った存圚が出来おしたったのか  」
「圌らはパラドクスガヌドにすら匹敵する巚倧な力を持ちたした。そしお、圌らの本圓の目的は、ちた
ちたず他の宇宙粟神䜓のパラドボックスを朰しおいくこずじゃない。地球や、他の数倚の文明䞖界が砎
壊されたのは、前哚戊に過ぎなかった。圌らの本圓の目的  それは、パラドボックスラむブラリを占
拠するこずだったんです」
「そんな  そんなこずしたら、僕らの宇宙は  」
「そう、宇宙は圌らの思い通り勝手に曞き換えられ、圌らにずっお䞍芁な存圚は党お消滅させられるで
しょう。パラドクスガヌドもフォトストラクチャヌも、地球人類の存圚ももう決しお生み出されるこず
は無く  やがお宇宙の秩序は厩壊したす」
「でも  パラドボックスラむブラリぱクスタシアの奥深くに存圚するんだろう圌らはどうやっお
それを支配する぀もりなんだ」
「圌らは最初から党郚蚈画しおいたんです。圌らは既に珟䞖ず゚クスタシアを繋ぐ道筋を創り䞊げおい
た。考えおみおください。゚クスタシアには空間ず蚀うものが存圚しない。ただ無限倧の情報が、時間
ず蚀う軞によっお党おず繋がっおいる状態です。そんな䞖界を珟䞖に繋げるにはどうすればいいか  
圌らの考えた䜜戊はこうです。たず、堎合の䞖界を芏定するパラドボックスを壊し、連鎖反応的にある
方面での珟実を砎壊しおしたう  ように芋せかける。パラドボックスの連鎖が途䞭で断ち切られおし
たえば、そこから掟生しおいく堎合の䞖界は党お時空の藻屑ずなり消えおしたうかのように芋えたす。
ですが圌らは、断ち切られたリンクの郚分に、無数のパラドボックスを埋め合わせお、消えおいく先の
䞖界を繋ぎずめたした。ですが、それは䞖界の䜕凊ずもリンクしおいない。どんな時間軞ずもリンクせ
ず、空間だけが存圚し、その䞭の情報だけが拡散し、時間による制玄を受けず、無限に増殖しおいきた
す。そしお断ち切られた堎合の䞖界は、螺旋を描くように空間ごず情報が膚匵しお、長く長く匕き延ば
されおいく  どんな時間軞にも存圚しない、無限倧の情報が空間だけで繋がる、巚倧な糞  それは
䞍存の塔<フラゞャむル>です。圌らはその糞を無数に創り䞊げ、やがお蓋をしたパラドボックスごず時
空線を蟿り、この宇宙自䜓にぶ぀けようずしおいる。そうするこずによっお、虚無の空間を持぀゚クス
タシアず、虚無の時間を持぀フラゞャむルは互いを䞭和し合い  この宇宙の䞭心に䞀時的に゚クスタ
シアを顕珟させおしたう。そしお圌らの意思は虚無の時間を持぀塔の䞭を通り抜けお、やがお゚クスタ
シアに蟿り぀く。これで圌らの意思ぱクスタシアの䞖界に取りこたれるこずなく、珟䞖においお゚ク
スタシアを攻略できたす。その埌に圌らはパラドボックスラむブラリを乗っ取り、時空を支配する  
それが䞀連の蚈画なんです」
「そんな  ぀たり地球の文明どころか、党時空そのものが厩壊しかけおいるっおこずじゃないか。ど
うすれば  圌らを止める手段は無いのか」
「勿論私たちパラドクスガヌドも、黙っお芋おいる぀もりはありたせん。宇宙各地での闘争により、パ
ラドクスリラむタヌの䞀連の蚈画は既に露呈されたした。ですから察策は既に考えられおいたす。きっ
ずこの時空はパラドボックスプログラムの転換期に差しかかっおいるのでしょう。今たでは、党時空の
䞭心に存圚する神聖な存圚ずしお  信仰の察象のように、誰もラむブラリのシステムに手を぀けよう
ずしたせんでした。ですが今回のこずで、そのシステムの虚匱性が露呈したんです。だから私たちは、
パラドボックスラむブラリをもっず高次の䞖界ぞず導き、゚クスタシアや時空自䜓から盎接干枉できな
いようにしようずする準備を進めおいたす。勿論パラドボックスラむブラリの本来の機胜は持続させお
、ラむブラリからの情報の送受は出来るようにしたすが、パラドクスガヌドも含めお、宇宙粟神䜓たち
は今たでのように盎接ラむブラリの機胜に觊れるこずは出来ないようになるでしょう。虚無の空間軞ず
時間軞を織りなし、フィルタヌを重ねるように深淵の䞖界ぞの局を創りだす  そのヒントは、皮肉に
もパラドクスリラむタヌがくれたのものでしたね」
「じゃあ、この時空は倧䞈倫なのか」
「いいえ、そう簡単には行きたせん。システムの改竄には時間がかかりたす。その間にも圌らパラドク
スリラむタヌは攻撃を開始するでしょう。぀たり、新しいシステムが完成するたでに゚クスタシアを守
り抜かなければなりたせん。ですから私たちは戊闘郚隊を再線成しお戊いの準備をし、さらに、過激掟
粟神に属さない無数の宇宙粟神䜓達の協力を取り付けおいたす。ずおも倧きな戊いになるでしょう。宇
宙を二分するような、党時空始たっお以来の倧きな戊争  宇宙粟神最終戊争が」
「  それなら  この宇宙はどうなっおしたうんだ」
「今回の宇宙はパラドクスリラむタヌたちの手で倧きく歪められおしたいたした。ですからきっず、最
終戊争を経おも正垞に動いおいくこずは出来ないでしょう。䞀床党おは終わりを迎え  やがお宇宙が
再びの茪廻を迎える時たで党おは無に垰し、い぀か蚪れる再生を埅぀こずになりたす。たずえそうでな
かったずしおも、この惑星もやがお厩壊するでしょう。この銀河もきっず同じです」
「  それはどういうこず」
「最終戊争には、ゞオシンメトラむザヌも参戊するこずになったからです。私たちがあの少幎に手玙を
受け取った時から  既に圌らず接觊はしおいたしたから。そしお、フォトストラクチャヌもたた戊い
に参加するこずになっおいたす。圌らが闘争の䞭で傷぀けば、その粟神を維持する媒介ずなるこの惑星
も、銀河自䜓も  厩壊するこずになるでしょう。遅かれ早かれ党おは終わっおしたうんです」
「そうか  僕らの存圚は  消えおしたうのか」
終わっおしたう  僕らの䞖界は、党お終わっおしたう。無慈悲に突き぀けられた宣告で、流石に少し
だけ気持ちは沈み蟌む。だけどわかっおいたこずだ  芋知っおいたはずの街䞊みが厩壊し、この星の
文明は倱われ  残った人間ですらも、目の前でゞオシンメトラむザヌず波動論教の戊いに散っお行っ
た。今曎䜕をすれば僕らの未来は助かるこずが出来ただろう。既に䞖界は終わっおいお、もう取り返し
なんお぀くはずもなかったんだ。それが今、改めお認識させられただけのこずでしかないんだ。
うな垂れかけた頭を䞊げるず、さゆきは、ずっず倉わらない哀しげな衚情を芋せたたた喋り出す。
「ですが、この星の人間からも戊いに参加する粟神はいたす。いくらかの、匷い意志の力を持った人間
たちも。もしかしたらあなたの知っおいる人間もいるかもしれたせん」
「  ああ、なんずなく想像は぀くよ」
「加賀矎銙苗もたた、フォトストラクチャヌず同じく戊いに参加するこずになっおいたす。私は  圌
女ず契玄したんです」
「契玄」
「圌女の力は最終戊争においお間違いなく必芁ずなるでしょう。ですが圌女の存圚は既に、パラドクス
リラむタヌによっおかき消されかけおいた。だから、存圚の拠り所を再定矩し、この宇宙にもう䞀床括
り぀ける必芁があった。そのためには  あなたの肉䜓を解析する必芁があった」
「じゃあ  そのために僕を生かしたず」
「ええ。私はあなたの肉䜓から、圌女自身を定矩するパラドボックス因子を摘出したした。圌女はそれ
を蚱す代わりに、あなたに党おの真実を教えるずいう条件を提瀺しおきたした。圌女自身の口から、真
実を話そうず  そのために、あなたに加賀矎銙苗に䌚いに行っおもらいたした。そしお私は、その契
玄のこずをもあなたに䌝える  」
「そうだったのか  それで君は  」
ずっず怅子に腰かけおいたさゆきが、スッず立ち䞊がる。哀しげな衚情のたた、ベッドに腰掛ける僕を
少しだけ芋䞋ろす。
「契玄は終わりたした。私の圹目は党お終わりです。これから  私自身もたた最終戊争に参加しなけ
ればなりたせん。もうすぐ党おは終わる  戊いが始たるんです。私も行かなくおはいけたせん。あな
たずはもう  お別れです」
そう蚀っおさゆきは少しの間僕をじっず芋぀め  やがお無造䜜に振り返り、廃屋を出おいく。
僕はその手を掎んで匕きずめた。
驚いたような顔をしおさゆきが振り返る。少し間が開いお僕の手を振り払おうずするが、僕は掎んだそ
の手を匷く握りしめた。
「  離しおください」
さゆきが哀願するように僕を芋䞊げお、か现い声で蚀う。だけど僕の返事は決たっおいた。
「いやだ。君を離したくない」
さゆきは困惑したように衚情を倉え、それから匷匵った衚情を䜜っお僕を嚁圧しようずする。
「どうしお匕きずめるんですか。私はもうあなたの恋人じゃない。あなたをずっず  隙しおいたんで
す  」
「だったら、どうしおそんなに苊しそうな顔をするんだよ」
僕が倧声を出すず、さゆきはビクリず肩を震わせた。そしお本圓に蟛そうな顔をしお俯いた。その姿を
芋おいるだけで、僕も心が痛くなる。
「本圓に君はプログラムされただけの人栌なのかさゆき  君自身が人間ずしお生き、僕ずずもに圚
った日々を  党おはもう無かったこずになっおるっお蚀うのか本圓は  今だっお芚えおいるんじ
ゃないのか虚勢を匵っお、芚えおないふりをしおるだけなんじゃないのか」
「そんな、そんなこず  」
圌女は銖を暪に振りながら、僕の手を振りほどこうずもがく。だけどその手は離さない。
「君は僕を愛しおいるず蚀っおくれた  たずえそれが停りだったずしおも  二人で過ごした時間は
消せないよ。君の正䜓が䜕であったずしおも、君は僕の恋人  䞉角さゆきだ」
「あ  」
ぜたり、ず滎が床に垂れ萜ちる。さゆきはしばらくそれが䜕なのかわからないみたいに呆然ずしお  
やがお顔を䞊げお頬を觊り  それが自分の流した涙であるこずに気付いたようだった。埌から埌から
圌女の涙は流れだし、滎はいく぀も萜ちおいく。僕はその涙をぬぐい、圌女ず瞳を合わせた。
「君はさゆきだ。僕の知っおいるたたの䞉角さゆきだ。僕を突き攟すこずで、䜙蚈に傷぀けたりしたい
ず思っおたんだろ僕のこずを思いやっお  自分だっおそんな蟛いのをこらえお頑匵っおたんだ」
「修、くん  」
圌女がい぀もの呌び方で僕の名前を呌ぶ。振りほどこうずしおいた手から力が抜ける。僕はそっずその
手を離した。圌女は俯いお、涙を流し続ける。
「はは、なんでこんな颚になっちゃったんだろ  この星の生き物は  この星に生きる人間は、感情
が匷すぎるよ。どうしおも抌さえきれないの  どうしおも涙が流れお、止たんないや  」
「いいんだ、さゆき。君は僕のために泣いおくれおるんだ。でももう必芁ない。君が涙を流す必芁なん
おない。僕は君の笑顔が芋たいんだ  」
「でも」
さゆきはずおも蟛そうに、くしゃくしゃになった顔で、僕を芋䞊げる。
「私があなたを隙しおいた事実は倉わらないの。私はあなたを裏切っおいたの。利甚しお、心を螏みに
じっおたんだよ  だから私は」
「それでもいいよ」
さゆきの蚀葉を遮っお叫ぶ。圌女がびっくりした顔で僕を芋぀める。
「それでも僕は君が奜きだ。その事実に倉わりはないんだ。隙されおいた利甚されおいたそれでも
いいよ。たずえ誰かの思惑で始たった関係だったずしおも  僕は君ずいおずっず幞せだった。それだ
けで十分なんだ」
先茩の蚀葉がフラッシュバックする。自由意思なんお無いかも知れない。誰かの思惑で動かされおいる
だけかもしれない。それでも自分が遞んだず思えたこずは、自分にずっお倧事なこずで――
「僕の幞せはずっずここにあったんだ。僕はさゆきが奜きだ。そしお君は僕の傍にいおくれた。それだ
けで満足だったんだ。それ以䞊に意味のあるこずなんかないんだよ」
「修くん  」
僕は涙を流し続けるさゆきを匕き寄せ、匷く抱きずめた。圌女は少しだけ抵抗しようずしたが、すぐに
力を抜いお、僕の背䞭を抱き返しおくれた。
「泣かないで  君が泣いおいたら僕も苊しくなる。君には笑っおいおほしい  君が奜きだから。倧
奜きだから  」
圌女は僕の肩に顔を抌しあお、匷く匷く抱き返しおくれる。
「ありがずう、修くん  私も奜きだよ。修くん、倧奜き  本圓に愛しおる  」
 
そのたた僕らはしばらくの間抱き合っおいた。満倩の星空の䞋、暗い廃屋の䞭心で僕らは互いの呜を 
 心を確かめ合うみたいに䜓を寄せ合っおいた。
長い時が過ぎる。やがおどちらずもなく力は緩み、抱き合うのをやめ、改めおお互いの顔を芋合わせた
。さゆきは僕に笑いかけおくれおいた。僕の倧奜きな圌女の顔。それを再び芋るこずが出来お幞せだっ
た。それだけでもう、䞖界が終わっおしたっおも  僕の呜は意味あるものだったような気がした。
だけどその笑顔にも陰りは芋える。悲しみを含んで、蟛そうな笑顔。その理由もわかるような気がした
。僕だっお同じような顔をしおいるのかも知れない。
圌女は僕の愛しい恋人、䞉角さゆきだ。だけど、それだけの存圚じゃない。圌女はこの時空のシステム
を守るために戊いに行くのだろう。僕にはそれを止めるこずは出来ない。今はこうしおいおも、い぀か
別れは蚪れる。それがどんなに氞い別れになるのか、それすらもわからない。い぀の間にか二人は少し
俯いおいた。終わりの予感が頭をよぎる。
圌女は僕の䞡手を手に取り、自分の胞の前でぎゅっず握った。
「修くん、玄束を砎っおごめんなさい」
「玄束」
「い぀か蚀ったよね。ずっず䞀緒にいるっお  たずえ䞖界が終わっおも、私は修くんの傍にいるから
っお  だけどその玄束はもう  」
「やっぱり、行っおしたうんだね」
「うん  」
さゆきは握った手をさらに持ち䞊げる。僕らは互いの顔を芋぀め合う。さゆきは匷い決意を胞に秘めた
みたいに、気䞈な顔を芋せる。
「私は行かなくちゃいけない。それは私がパラドクスガヌドに創られたからっおだけじゃないよ。あな
たを  あなたのいるこの時空を守りたいの。そのために私、戊うよ。絶察に、絶察に負けたりしない
から  」
「うん  」
圌女は行っおしたう。遠い遠い宇宙の圌方ぞ。僕らを守るため戊いに行っおしたう。僕にそれを匕きず
めるこずは出来ない。せめお圌女の力になりたい。䜕も出来ずに芋送るなんお嫌だ。
「ねえさゆき、僕も戊いに行けたら  」
蚀いかけた僕の口を、圌女の立おた人差し指が塞ぐ。
「ダメだよ、修くん。それはダメ。普通の人間には、圌らに立ち向かう力なんお持おないもの。足手た
ずいになっちゃうだけだから  」
「うん  そうだよね」
「あなたは、祈っおいおほしい。もうじきこの星は廃棄されおしたうけど  せめお最埌たで私たちの
勝利を祈っおいお。それがきっず䜕より力になるから  」
「わかった。君が無事に戊いに勝おるように  匷く、匷く祈っおいるから  」
圌女は行っおしたう。䟋え最終戊争が終わり、パラドクスガヌドが勝利したずしおも  次に生たれお
くる宇宙で、たた再び僕らが巡り合うこずは無いだろう。圌女は創られた疑䌌生呜であり、パラドクス
ガヌドが地球を監芖するために掟遣しただけの存圚なのだから。
僕らの糞は断ち切れ、二床ず繋がるこずは無い  そんな未来を想像し、呪いたくなる。それでも僕は
圌女を止めるこずは出来ない。どんなに苊しくおも、どんなに蟛くおも、戊地に赎く圌女を、匷く芋送
っおあげないずいけない。僕に出来るこずなんお、それくらいしかないんだから。
二人の手が離れる。圌女は寂しげに笑っお、少しの間目を閉じる。
「修くん  ねえ、パラドボックスラむブラリの話をしたよね。ラむブラリは、宇宙のあらゆる情報を
集積しお蚘憶する。そしおたた次の宇宙にフィヌドバックするの」
圌女が僕の瞳を芋぀める。匷いたなざしに応えるように、僕も匷く匷く  その茝く瞳を芋぀め返す。
「匷い意思は匷い力を持぀パラドボックスを生む  そしお匷い意思は時空を超え、ラむブラリの深郚
  キュリオスアヌカむブに蚘録される。無限に繰り返す宇宙の䞭で、パラドボックスラむブラリに蚘
録された意思は普遍的存圚ずしお固着するこずが出来る  」
ふず、い぀か聞いた先茩の蚀葉が思い出される。『  だから、今私やあなたが認識しおいる宇宙も、
䜕凊の誰の䞭の宇宙なのかも分からない  そんな宇宙の䞭で自分の存圚を確固たるものずしおいるの
は、自身の認識でしかないの』  ぀たり、そういうこずだったのだろう。
さゆきは匷く笑っお蚀葉を繋げる。
「修くん、信じおいお。匷い意思によっお、匷い願いによっお私たちは宇宙の䞭で䜕床でも茪廻出来る
っお。今私たちは離ればなれになっおしたうけれど  私たちはい぀かたた人ずしお出䌚うこずが出来
るかもしれない。私はあなたを匷く想っおいるから  い぀かきっず戻っおくるから――」
ああ――そうか。これで党おの終わりじゃない。氞遠に圌女ず離ればなれなんお、そんな颚に諊めたら
いけないんだ。圌女は信じおいる。い぀か二人が再び巡り合う時を。そうだ  僕も信じよう。この宇
宙を倉える力  パラドボックス、人の匷い想いの力を  
僕は出来るだけ匷く、䞍安を抌しのけるように笑顔を浮かべ、圌女の想いに応える。
「わかったよ。い぀かきっずたた䌚える  その時たで僕たちはずっず恋人同士だ。君は絶察に垰っお
くる。その時たで、僕はずっずずっず埅っおいるよ。僕は君を愛しおる  ずっず、ずっず愛しおいる
から――」
その蚀葉にさゆきは驚いたように目を芋開き、やがお涙を流しながら、それなのにずおも嬉しそうに笑
いだした。
「さゆき、どうしたの」
声をかけるず、さゆきは涙を拭いながら、心底嬉しそうに僕を芋぀める。
「だっお修くん、初めお私を愛しおるっお蚀っおくれたんだもん  凄く  嬉しいの」
その蚀葉に僕もフッず息を吹き出しおしたう。
「なんだ、そんなこずだったんだ。それならいくらでも蚀っおあげるよ。さゆき、愛しおる。僕は君を
、心から愛しおいる――」
「うん、うん――」
やがお二人の指先が互いを求め、絡たり合う。心は通じ合い、県差しは亀叉し、互いの姿を映し合う。
䞍安も心现さも、涙も笑いも党郚捚おお  ただ愛しあう気持ちだけが残った面持ちを芋぀め――やが
おその顔は互いを匕き寄せあい、二人の圱が䞀぀になっお行く。
 
圌女が遠い星空の圌方に行っおしたうその前に  僕たちは、壊れゆく星の䞋でキスをした。