地上に降り立った私は、何が起こったのか確かめようとした。
大地は灼熱の地獄と化して、人間にはどうしようもないくらいの
大いなる災厄によって焦土と化したことが目に見えていた。
人間であった頃の私が覚えているのは、平和だった世界に急に、
東の空から渦巻く光が「カッ」と「カッカッ」と数度瞬いた事くらいだった。
そして、気がついたときには私の血肉は滅びていた。
焼け焦げ、ドロドロの脂の塊として溶けていた。
私はその自覚を持って、自分自身の死を悼んでいた。
そして、誰か一人でも生き残っている人が居てほしいと願った。
私は、私達はあの時仏陀と化したのだろうと思う。
仏陀でなければ神霊であろうか。私達は人類の滅びを悟り、
即座にその魂が覚者となったのだ。
覚者たちは手を繋いで、地球の育んできた可能性のうち、一欠片でも残そうと誓った。
この星は程なくして滅びたのだ。
人類の科学は、亡魂は、文化は、執念は、もう発展の可能性を無くしてしまった。
私は悲しみの中、誓った。それでも生きる。
それがこの星の答えだった。死んだ生命と魂と星の泥の塊が溶け合い混ざり合い、
一つの命を形成して蘇らせた。それが私だと悟った。
この星の上で、私は一人だ。天上天下唯我独尊。
私は、ゆっくりと灼熱の大地を踏みしだき、裸のままで歩き始めた。