その日、世界の終わりを願った誰かが居た。
誰かはスイッチを押した。世界は死んだ。
それだけのためにこの物語は存在する。
人類のすべてが一つになれればいいのに。
そんな夢を思い描いていた時期があった。
大人になって、現実を知って、孤独を知った。
なのに……、神は私を選んでしまったのだ。
その日、世界のすべてが滅びに至った。
もうどうしようもないくらいの災厄によって、
人類の全ては滅びを免れ得なかった。
滅びに至った人類がやったことは、唯一つ、
手と手を繋ぎ合わせる事だけだった。
しかし、災厄が去った後、そこには誰一人として
旧来の人類は残っていなかった。
溶け合い、一つになった人類は、完全性の存在になった。
もう二度と、手は解けなかった。そのかわりに、
すべての手が一本にまとまった。
血と肉が溶け合い混ざり合い、人類、その他
すべてのいのちは"一人"になった。
そして、すべてが集約したそこに
残ったのは私の意識のかけらだった。
私は生まれた。