塔の麓に、いくつか侵入口があった。
通風孔のダクトような場所を進んで中に入っていく。
砂埃にまみれたダクトの奥に、金属の鉄さびたような柵に
覆われた換気口が見つかり、なんとか柵を外して中に入った。
奥の方に進んでいくと、エスカレータのような段差があり、
乗っても反応はなかったが、階段として上層へ向かった。
塔の中には街があった。
街は、精緻に区画された四角形の建造物が摩天楼を成し、
そこかしこに模造された緑があった。しかし、虫くいの痕一つ感じられず、
景観を整えるために作られた模造品であることは明らかだった。
空気の動きを見ると、ここは空調が効いている。
しかし、人っ子一人居ない。
荒野と、市街の残骸、汚染され風化して、
半分砂漠に埋まった外の世界の風景と、
誰も居ないという点においては変わりがなかった。
街の建造物に足を踏み入れる。
突如として流れ出す軽快な音楽。
どうやら、ここはなにかの店舗だったらしい。
エネルギーラインはまだ生きているようだ。
私は、その街の残骸をあさり、数ヶ月に渡り歩きまわった。
そこにあったのは、先史文明と言う名の過去の幻影だった。