Victo-Epeso’s diary

THE 科学究極 個人徹萼 [CherinosBorges Tell‘A‘Bout] ノーベルノークスクラム賞狙い 右上Profileより特記事項アリ〼

その部屋には何もなかった

私はその部屋に入ったが、その部屋には何もなかった。


ただ、私はなんとなく気になってその部屋に立ち止まった。
この部屋にはなにもない。同様に、この塔にもなにもない。


世界が滅びて、今までにないものが見つかった。
でも、その中身は空っぽのハリボテだった。


同じようなことだ。世界は、有りもしない内容を、
内蔵を、本質的なものを求めたから滅んだというのに。


私はしばし虚しくなって、その部屋に佇んで悟りを開いた。


テレパシーのような声で、私の内面に語りかけるなにかがあった。
清らかな乙女のような声で、私に語りかける。


あなたはどこに居るのです?
私はここに居るのです。
早く私を見つけてください。


ふと、涙がこぼれ落ちる。


それは、存在し得ない番を求めて咽び泣く私自身の煩悩そのものだった。
この世界に意味を、意義を求めて止まない。探究心はいつも我々の中にあった。
渇愛だったのだ。それは。


私を見つけてみせろ!
私は王の中の王、この世の最期を見通し看取った男。
私の対になる存在、妻になるべき女性が、この世の何処かに
残っていると言うならば、姿を表し、私を見つけてみせろ!!


虚しい咆哮が都市遺跡に響いた。


私はその時はじめて悟ったのだった。
私の先に私以外はなく、私の後に私以外は居ない。
だからこそ覚者であり、最期の存在であり、始原の存在でありえた。


私は、死んだ存在たちの怨念が呼んだ亡魂であり、
新しい世界を迎えるための神の器でもあった。


その使命を自覚した私は、塔を厳かに登り始めていた。