私が選ぶ事の出来たのは、結局ひとりきりで居ることだけだった。
私が私以外に番となるなにかと出会い、番う事が出来たとしても、
それに意味を感じなかった。なぜなら、私は生まれたからだ。
世界のすべてを犠牲に、私は生まれた。
私の存在が罪であり、罰なのである。
アルファであり、オメガである。
完全であるがゆえに何処にも出ることはなく、
かと言って完全であるがゆえに潰えることもない。
死んだ世界の怨念たちは、
未だ私の中で、人類が再興する幻を見ている。
だがそれは私の本質的内在ではなかった。
私の使命はもっと別のところにあった。
この、何もない場所を看取ることだ。
ここにあるのは行き止まりだ。宇宙の歴史のすべてが行き止まった。
それだけがここにある。何が不服だったろう?いいや、きっと不服だったろう。
いつまでも続き、連綿として広がっていく、なにか、自由の夢があった。
かつて私の中に存在していた全てだった。だが、自由は、可能性は溶けてしまった。
いつまでも皆が皆であるまま、幸せになれる未来があったはずなのに……!!
行き止まることなく、進み続けられる未来があったはずなのに……!!
私は、せめてもの祈りを捧げた。
人類の行き止まりは、ここだ。ここにある。
だから、こういった場所には来るな。私の中に眠る、
まだ生きている世界の残滓に語りかける。
この行き止まりを私が封じ続ける。
その思念が、想いが時を越えて、誰かに届けばいい。
その時、はじめて私には理解できた。
私はここで救世主となる運命として生まれたのだと。
その日、世界の終わりを願った誰かが居た。
誰かは破滅のスイッチを押そうとして踏みとどまった。
何者かの声が聴こえた気がした。こっちには来るなと呼びかけていた。
そんな白昼夢を見た誰かは、自分の夢想を思いとどまり、退いた。
世界は死なず、続いていく。それだけのためにこの物語は存在する。