塔の果て、宇宙の彼方には、
「なにもない」があった。
倒れ伏した私の肋骨から、一本の骨がこぼれ落ちた。
それは塔の炉である銀河中心の太陽に落ちた。
新しい形の染みが生まれた。
それは、因果の因と、因果の果をいとも簡単に入れ替えた。
世界のすべてが完全なるものになりたいと願った結果、
かつて完全だったものが完全に帰ろうとする働きが生まれた。
不完全だったものが、完全だったものから離脱してゆく。
故にそれは目覚めであり、覚者である私から、不完全性が消えてゆく。
そこに垣根はあった。
気がつけば、私は美しい娘と手を取り合って歩む幻を見ていた。
それは、かつて私の手であったなにかであり、私以外の誰かの手であるなにかだった。
私自身の肋骨から生まれた娘だった。
その娘と手を取り合って生きる、美しい、夢幻だった。
私は目を覚まし、私自身の肋骨を取り戻すために再び歩み始めた。