Victo-Epeso’s diary

THE 科学究極 個人徹萼 [CherinosBorges Tell‘A‘Bout] 右上Profileより特記事項アリ〼

Total Break Through - トータルブレイクスルー [MORE THAN LET MANWALKER]

>>focus_01 走り出した今
気がつけば、俺は走っていた。いつから走り出していたんだろう。誰だって走っているのかもしれない
。それはまるで風を切るように。矢が飛んでいくように。ただ走って。何度も何度も立ちふさがる障害
にぶつかり続けて、無数の傷が更に痛みを増していくけれど……それでも……ゴールに向かわなければ
いけないのか?目の前の壁を破って、貫いて、進まなければいけないのか?俺の求めるゴールはなんだ
ろう?自分でそれを決めるとすれば?そうだな、俺はきっと……もう一度……彼女と。

>>focus_02 月世界で思う
月面都市セレーネで生まれた俺は、優しい両親の元で何不自由なく生い育った。子供の頃から勉強は得
意で、順調に成績を伸ばしていった俺は月世界随一のアカデミーに入る事ができた。物理学を専攻にし
、チームの皆と馬鹿をやりながら楽しんで研究を行った。その内容はニューラルネットワーク――つま
り脳神経が接続した情報網の構造――に関する研究で、その中に伝わる信号の処理系に置いてブラック
ボックス的に解明できない部分が多数存在する、といった内容の卒業論文は高い評価を受けた。俺はア
カデミーの卒業と同時に月を出てもっと進んだ科学研究を求めて火星へ移住する事を決めた。それは間
違いの始まりだったのかもしれない。

>>focus_03 世界の裏切り
勿論、自分の生きている世界が偽りのものだとは思わなかった。
いや、思ったことはあるかもしれない。本気じゃなかっただけだ。
誰だって考えることはあるのかもしれない。
この世界はあくまで偽りで、自分の妄想によって出来ただけの虚無な夢で、
その背景としてもっと大きな世界が在るとか……
それが事実だったかもしれないなんて、自分の世界が崩れることで初めて知った……
俺の人生は、本当に偽者だったと言うことか?俺の関わってきた人々は皆<代替物>に過ぎなかった?
その世界の壁を破ってしまったと言うことなのか?

>>focus_04 夢の中の令嬢と
いつの間にか大きな屋敷の中に入り込んでいた。だだっ広いその中を歩き回る。無数の窓からは
外の世界が見えなかった。景色としてのみ存在し、世界として形成されていなかった。
使用人たちと出会った。特に何も言われなかった。どいつもこいつもまるで俺の存在を意識しない。
なんとなく、他の部屋とは違うような、他の使用人たちにはない人の気配を感じた。
その部屋に入ると、一人のお嬢様風の女の子が、父親や母親、使用人と思われる人間と戯れていた。
だが、人の気配はその少女からのみ。少女は俺の存在に気づくと、言った。
「ねえ、あなたは何をしてくれるの?」俺は叫んだ。俺は違う。こんな奴らとは違う。
お前の考えた<代替物>じゃないんだっ……俺は窓から飛び降りた。そしてその世界を抜け出した。
あの世界がいつまで存在したかなんて分からない。あれも幻だったのかもしれない。

>>focus_05 モアフィールド
そして俺はまた新しい世界を見た。大きな都市だった。いろんな人々が通りを行きかっていたが、
俺にはそれが<代替物>ばかりだと思い、気持ち悪くなった。俺のようにこの世界を創造した奴が
どこかに居る。さしずめ支配人格<ルーラー>か。よろめきながら裏通りを歩くと、少女に出くわした。
彼女は俺を見かねて、ホテルに案内してくれた。彼女の親が経営するホテルだった。
シャワーを浴び、部屋で休むと気持ちが落ち着いた。とにかく、別の世界に入り込んでしまったんだ。
これからどうすればいい?考えているとチャイムがなったので部屋のドアを開けた。
あの少女だった。彼女は自らの名前をモアと言った。

>>focus_06 思いがけない襲撃
「気分は落ち着いた?ゆっくり休んでいいからね。だってそんな気分が悪いんじゃ何も美しく
見えないでしょ?この街は本当に綺麗なの。それを見ないと損でしょ?そう、私はこの街が好き。
この街が好きだから」彼女は間を置いて、「だからあなたを殺したいの」
俺はドアを閉め鍵をかけた。ガチャガチャとノブを回して開けようとする音が聞こえた。
「どうして……開けてくれないの……?」そしてドンドンドンと叩く音。
俺はドアを後にしてベッドに潜り込もうとした。
枕を耳に当てて何も聞こえない振りをしようとした矢先、「ど、う、し、た、の……?」
窓の外から彼女の声が聞こえた。外ですらなかった。それは鏡のように俺の顔を映し、その中から、
彼女の顔だけが現れた。俺は絶叫して気絶した。

>>focus_07 イレイジング・コミュニティ
自分の意識が消えていくようだった。俺の頭の中――もはや体の部位など無意味かもしれないが――に
凄まじい記憶の濁流が入り込んできたのだった。それは彼女、モア・イレイジングフィールドという名
の<ルーラー>の記憶だった。彼女は<マインドリンク>・ネットワークの中に自我を保ったまま存在し、
その海の中に自我として発生した意識情報をサルベージし、自らの世界に取り込みコミュニティ・ポイ
ントを形成した。しかし彼女の目的はただ仲良しこよしの世界ごっこをするためにそうしたんじゃない
。他の存在を食らって自らの糧とするためだった。その目的は――デ……ル………………そこで記憶は
途切れた。

>>focus_08 旅の導き
気がつくと目の前は眩いばかりの光に閉ざされていた。いろんな色に光る綺麗な光の海。
その上に、俺とモアが立っている。彼女は言った。「驚いた?でもあんな風に殺すことなんて不可能
なのよ。自らの世界の中で真の人間を直接殺そうとするのは、結果的に自らの世界から排除するだけに
過ぎないからね。それに、あなたは私の街に留まって存在を衰弱させて消えるような人間じゃない。
目標があるんでしょ?私が与えた以上にこの世界の事が知りたいなら、まず彼に会いに行きなさい。
彼は自由な旅人よ。行き先は知ってる。この前私の世界に来たからね。それを教えてあげるわ――」
彼女は言うだけ言って消えてしまった。彼女は本体じゃなかったらしい。そして俺は彼女に教わって、
当面の目標が出来た。その旅人に会ってこの世界の事を教えてもらう。
それぐらいしかやるべき事が分からない。まあ、構わないさ。

>>focus_09 仏道世界
旅の途中、また別の世界に入り込んだ。そこはガンダーラという世界で、人間の<代替物>も<ルーラー>
もなく、全てが本物の人間で、色々な人間が集まった――いわば<コミュニティポイント>だった。多く
の者が悟りを開くために修行を積んでいた。俺は三途の川の浅瀬を渡り、彼岸に聳える仏が住まう山を
見に行った。山を守る番人に会ったが、事情を話すとそのまま通り抜けできた。その山を登り仏の世界
に入り込み、俺は大いなる光に包まれた仏と会った。彼(と呼ぶべきなのだろうか?)と話をした。話を
聞くに、アタナシオスも覚者に近い存在だそうだ。世界の実体を知っているという意味では。俺は修行
者としての菩薩のレベルだと言う。俺はここで修行して仏を目指さないかと言われたが、断った。仏は
、修行者たちの抱く象徴であり、無数の人間の集合体だった。そして自我を持ちながらも無我、世界の
背景となる光の海に近い存在で、仏の後光もそのためなのだろうか。だが自我を捨てることに興味は無
い。俺はアタナシオスの行方を聞き出しその世界を去った。それにしても不思議だが、あのような世界
<コミュニティポイント>で一般人が子供を作るときには一体どんな原理が働いているのだろうか? <代
替物> との違いは何処に?

>>focus_10 神話世界
火星ではない。オリンポスの山頂に聳えた宮殿で、神々と出会った。これは神話の世界だ。その神々も
、仏のように無数の人間が寄り集まった象徴としての存在であり、ヴァーチャルな世界で力を持ったイ
メージだった。アタナシオスは奈落の底、タルタロスに向かったと聞き、そこへ向かった。無数の腕を
持った番人の巨人と話し、その奈落に通じる門をくぐって入ろうとしたが突然の声に止められた。「ア
タナシオスはそこにはいない。会いたけりゃワシについてくるがいいさ」ただの男はそう言った。こい
つも俺と同じように世界の部外者であり、旅人のようだった。俺はそいつについてその世界を飛び出し
た。

>>focus_11 悟り
しばらく、男と一緒に光の海を泳ぎ、話をした。今までどんな旅を重ねてきたのか、何故アタナシオス
に会いたいのか、洗いざらい吐かされた。俺が彼に会いたいのはこの世界の実体が知りたいからだ、と
言うと、男は頷いて、俺を招いて一つの小世界に入った。辺りは霧に覆われ、目の前には巨大な門、そ
の前で男は言った。
「そうとも、ワシがアタナシオス。ワシを追ってきたお前が何を望むのか探らせてもらった。何故自分
が超常的なスピードで高く険しい山を上り下りしたり、何処とも知れぬ奈落の門をたたいたり出来た?
その間の移動という概念が抜け落ち、イメージの世界を旅しているのではないか?その事を良く考えて
、世界の実体を掴むべきだ。それがお前の望みだろう?」
そして悟った。俺は生きてなんかいなかった。ただこのヴァーチャルな世界で自分の想像した夢を見続
けていただけだ。他に見てきたおかしな世界たちだって、同じように実体の無いヴァーチャルだからイ
メージだけで転移したり出来たんだ。それとも、昔は生きていたのか?俺の死後に精神だけがこの訳の
分からない世界に転送されたと?それとも最初っから擬似的な精神だけがここにあったのだと?知った
こっちゃ無い。とにかく、俺は生きていなかった。それだけだ。

>>focus_12 記憶の再発見
俺はアタナシオスに洗いざらい話した。というより、記憶を覗かせてやるといったほうが正しかったか
もしれない。だが、衝撃に浸された俺は半ば自棄になって彼に対し心をさらけ出した。俺が自分の中で
想像した夢の内容までも。所詮ヴァーチャルに過ぎなかったあの日々の記憶を。
「だが、事実だ」アタナシオスは言った。「お前の意識が作り出した世界、その記憶……それは紛れも
無く本当の歴史だった。ただし、多少の脚色はされているだろう。だが、お前は、自らの夢の中で過去
の記憶を再現しただけなのだ。とても珍しい話だが、お前は自らの人生に無意味な希望とか理想とかを
抱くことなく、ただありのままの世界で満足していたのだろう。幸せな奴だ」
その言葉に少し安心した。全てが嘘じゃなかったと気づいた。俺はかつて実世界に生きていたんだ。で
も、俺は知っていた。一つ事実と確実に違うこと。最後に見せた、彼女の笑顔……彼女の幸せこそが俺
の本当の理想だったのかもしれない。

>>focus_13 記憶の門
アタナシオスは俺の記憶の代価として、この世界に聳える目の前の巨大な門を開いてくれた。俺がその
門をくぐって中に入ると、とてつもない量の情報が流れ込んできた。それは、アタナシオスが光の海か
らサルベージした非常に希薄な記憶の集合体だ。俺は様々な事を学んだ。実世界のこと、このヴァーチ
ャルの世界<マインドリンク>のこと、そして……トータルブレイクスルーという計画を携えたアダムと
いう人物の物語を。目覚めたとき、俺の頭――そんな体の部位すらイメージの産物に過ぎないが、つま
り記憶――の中には、新しい胎動が始まっていた。

>>focus_14 <マインドリンク>
「知覚とは何か?感覚器官が外界と自意識を結ぶインターフェースだと?
ならば自意識とは何だ?他の何者ともネットワーク構造を結ばない低次的得異点だとでも?
ワシはこう考える……自意識もまた直接的に外界と繋がっている。知覚とは外界との繋がりを認識し、
自分の中の外界を感じることに有るのだと……」
「つまり自意識とは世界そのものに直接的影響を与える事ができる……
いや、衝動に過ぎない。自意識は世界と融和しているのだから。それは物質と等価ということか。
つまり、自意識が形作るネットワーク構造物……それが<マインドリンク>だと」

>>focus_15 夢現
「<マインドリンク>は<集合精神体>とは違う。人間社会の裏側――いわば意識世界――において局所的
に自然発生するネットワーク構造……それを含むシステムが<マインドリンク>となる。それは人間たち
の心に深く影響する。お前が見た仏道世界や神話と一致する世界は、人間たちが生み出したイメージが
寄り集まって出来たものか?それとも<マインドリンク>で誰かの人格が生み出した物語を元に、実際に
人間社会に思想が反映されただけか?あるいは、それらの人物ははるか過去に実在した人間を元に脚色
されたものなのか?お前が見たアダムの物語もそんな程度のものだったかもしれない。何処までが紛れ
も無い事実なのか。その脚色の度合いなんて、もはや誰にも分かるまい……地球の宗教におけるアダム
の物語とて同じことだ」

>>focus_16 <ギーク>たちの吸引体
「死して<マインドリンク>の深層に入り込んだ者の内、<ギーク>は自らの意識世界を造ったり、同じよ
うな意識を持つもの同士が惹かれあい、セクト的世界――<コミュニティポイント>を形作る事がある。
だが、その密度は少ない。お前は、特殊な力を持っているのかもしれない。<ギーク>を引き寄せる精神
的性質でもあるのだろう。いまだに<セル・ワールド>を見る事ができたのは貴重な経験だ。その後すぐ
さま <コミュニティポイント> に辿り着いたことだってな。どうだ、ワシの弟子にならんか。お前の力
はユニークなものだ……いつ奴らに見つかるとも限らんしな」
「ああ、考えておくよ。ただし、俺の目的を果たした後になるけどさ……」
「行くのか?」
「勿論……彼女に伝えなくちゃいけないだろ、俺が学んだこと……」

>>focus_17 光の壁
「太陽系開闢・星系外探査時代にあたって、人類が乗り越えなければいけなかった大きな壁がある。
宇宙船の速度という壁だ。地球から冥王星まで電波でメッセージを送っても、
ゆうに5時間以上はかかる計算だ。ましてや、有人飛行宇宙船で移動したとすれば……
身近な月ですら何日もかかるし、テラフォーミングの有力候補である火星への移動は、
何ヶ月もの時間を要する……
旧来の常識を覆す航法が必要だった。最終的には、光速を超えることすら目指さなければならない。
技術の壁を破る事が必要だった」

>>focus_18 火星の架け橋
「人類の目指した光速を破る方法……
タキオン航法や高次元滑空航法など、様々な手段が考えられた。
だがそれらを実現させるためには今しばらく時間が必要だった。
火星をテラフォーミングするにあたって使われたのはアインシュタイン・ローゼンブリッジ――
つまりワームホールインターフェースだ。天文学的短距離においてワームホールの出入口を
安定させる事が可能になった。発生したワームホールを拡張し、その端を重力操作フィールドで
固定し、火星と地球のそばに置いた。これにより、地球と火星の航行距離を大幅に減らし、
結果として人類は地球という枷を……一つの壁を破り、他の惑星へ定住するということが
可能になったんだ」

>>focus_19 動物霊に添えて
動物に宿る精神の力。それは存在するかもしれないが、だとしても非常に微弱なものらしい。
彼らには強い知性の力は宿っておらず、薄弱な精神で意識の海の肥やしになっているのだと。
シンクロニシティの様な精神ネットワーク構築能力は存在するようだが、高度ではない。
人間を超える動物は現れるだろうか。人間の持つ知性の輝きを超えることは出来るだろうか。
俺が知る限りの世界において、自然発生的にそれを満たすものは現れないだろう。
滅亡後の現地球には、様々な形の進化動物が現れた。だが、思考の形が違うとか――
物理的な知性の所在の問題ではなく。彼らが、何の要因も無い状態で人間に匹敵する<知性力>を
勝ち得ることは恐らく無いのではないか。そう。人間以外の動物には。

>>focus_20 我が祖先の実体
思えばそれは生まれる前の思い出だったような気すらする。
月面都市で俺を生んだ両親は、何も言わなかった。自らの祖となる者が何なのかなんて。
俺だってそんなこと考えたことも無かった。生まれてからずっと知るよしも無いことだった。
だが、今になってみれば疑問に思わざるを得ないだろう。
俺が持つ様々な記憶……それを解き明かすにはこれを考えなければならない。
俺の祖先は一体何者なんだ?
……俺の前に大きな壁として立ちふさがる謎だった。

>>focus_21 アダムの知性
アダム・クレイドル・アースロード――
まがい物に過ぎない人間たちの社会にまぎれた真の知性を持つ人類――
彼が全ての人類に知性を伝えた。仮想世界の中から現実にまでも感染したその精神構造体は、
心の壁を突き抜けてかけがえのない知性という力の種を全人類に宿したのだ。
彼を生み出した彼らは――現世の人間にあらず。
彼らが来る前のこの宇宙は、そもそも知性と言う力が存在していなかった可能性さえあると考える。
環境が自分自身を観測する力を持たず、全てが抽象的な世界だったのだと――
彼らがこの宇宙に来たことで知性は森羅万象に伝わり、可能性は収束し今の明確な姿を得たのだと――
あくまで可能性に過ぎない。しかし――彼らの事を知っている俺と言う存在は一体何なんだ?

>>focus_22 ガラクシアンとルミナリーズ
そう、ガラクシアンとルミナリーズはそれぞれ別の宇宙からやって来た。
彼らは一つとなってこの宇宙に生命を宿したのだ。
では、ガラクシアンとルミナリーズの宇宙では、どうやって生命が生まれたのか?
おそらくそれは人間原理に基づく考えで説明できる。宇宙は無数に存在し、
たまたまどこかで生命が誕生した。それが彼らであり、彼らは進化し別の宇宙にも生命を与えたのだ。
しかし、彼らがどうやって別宇宙との壁を破ったのか?それは分からないままだ……

>>focus_23 <集合精神体>の放浪
それから<集合精神体>は宇宙を放浪した。
原初の惑星リリアスから飛び立ちどのくらいの時間がたったのだろう。
何千年、何万年、何十万年……それとも何億年もの時を?
時間の経過などもはや<集合精神体>には無意味なはずだった。
だが、その集合精神体ですら時間の侵食を免れないと考え、
彼らは生命を求め……やがて他の星系にも辿り着き、自らの思い通りに新しい命を生み出そうとした。
巨大な精神の力によってすら、自らの記憶に眠る生命という壁を破ることは出来なかったのだろうか?

>>focus_24 ルミナリーズ・ルナティック
原初の惑星から遠い時間と空間を隔てて、この地球で人類とルミナリーズは再び邂逅した。
それが偶然ということはあり得るのだろうか?
ルミナリーズ自身がマインドリンクを追跡していたのか?気が遠くなるほどの時間をかけて?
それとも、ルミナリーズより更に高次的存在である何者かの<導き>によって?
だが、他に誰も知る者はいない。彼らが今やあの月を通じて人類を監視し続けていると言う事を。
原初の惑星でも衛星が次元の扉だった。彼らは、新しい世界で人類の興亡と言うゲームを
やり直そうとしているのだろうか……いつか彼らが人類の前に立ちはだかる日も来るのだろうか?
もしその時が来るとすれば……彼らは人類にとって破ることの出来ない壁となるのだろうか……

>>focus_25 そしてノアは
そしてノア・あるいはウトナピシュティムは永遠の存在となった。彼が融合した<コア>世界は <集合精
神体> の核となり、その<集合精神体>の全てに波及し影響を与え、結果としてノアも人間の祖となった
のだ。彼が避けようとした洪水とは一体なんだったのか?それが遠き惑星リリアスにおいて全ての人間
の精神を宇宙に飛ばした作用だったと?また、彼が行きついた先はどこだったのか?まだ分からない。

>>focus_25 創世の真実
地球古来の有名な宗教の聖典によれば、神が人間を創る記述が二回重なっていると言う。
これは一見矛盾しているように見える。しかし、一部の解釈ではそうではないのだ。
この宗教には、一部で神秘主義的な密教的思想もあった。その思想によれば、なんてことは無い。
聖典が間違っているわけではないのだ。実際に人間は二回創生されたというのだ。
もしも、これが真実だとしたら?

>>focus_26 伝承・言葉・夢想
勿論、俺の見たアダムやノアの存在が、地球で生まれた伝承の登場人物とは違うことは明白だ。
ただし、<集合精神体>に残っていた<無意識>の中の概念としての記憶が伝わることで、
地球上の思想に何らかの影響を与え、本来とは違う伝承を形作った。
遠き惑星リリアスの言語形態すら不明なのだから。それでも概念は伝わる、それが精神のリンク。
そして、俺が見た夢の中で、その伝承と結びつけて人物の呼称をこじつけた。
正に、様々な記憶を重ね合わせて生じた夢想だと言うことだ。
だが、何故その<集合精神体>の記憶が地球に伝わったのか?

>>focus_27 セカンドジェネシス
つまり、原初に人間が生まれた惑星リリアス……そこから分離した集合的精神体はとてつもない時間と
空間を越えて、この地球に降り立った。神は言った。「我々に象り、我々に似せて、人を造ろう」つま
り、そういうことだ。二回目の人間創生は、神となった人間たちの見えざる手によるものだった。リリ
アスの人間は今も生きているのだろうか?過去の<マインドリンク>におけるトータルブレイクスルーは
達成できたのだろうか?俺の考える――彼女のためのブレイクスルーは?……俺の旅の終わりももうす
ぐそこに迫っている。

>>focus_28 ペインフルアクセシス
俺はいったいなにをしていた?無くしたはずの記憶が俺に語りかける。すべてをなくしたはずのこの惑
星に、過去に滅んだ星<原初惑星リリアス>から<リリアス・ノート>とでも呼ぶべき情報帰化存在制克圏
、時間旋転方向への操作回数を増やしすぎてネストが深まり、単純な情報存在になるまで世界や現実と
いった事象すべての在り方が帰化してしまった<時間終極点>、その単純平面と交差することで……俺た
ち決して交わるはずのないはずだった<存在終極点>地球。<彼女>は情報帰化惑星リリアスから発生し、
俺たちの地球と<マインドリンク>を通じて惹かれ合い、一つの結論を得た。「あなたがたの望みは一点、
『わたしたちを欲しがっている』」ぞっとしたような気分で俺は人類の底であり、底となるなにかを目
の当たりにした気がした。滅びゆく世界は、それはそれで美しかった。《彼女たち》決してそれを許す
はずもなかった。それは原初の楽園に纏わりついた蛇のようにも思えたリリアス・アトラクアス・ア
ラクタラス。アトラクタは形成した。人口創生された《アダム》を何処かに繕い、それを《彼女》は
欲しいままにしようとしている、女の欲望の根元にして原初の怨念が如き存在、リリスのようにそれを
知覚していた。

>>focus_29 ラストアンダームーンアンビシャス
だが、同じことだったと、そう気付いた。なぜ俺たちはこんな風に悪徳と悪辣を極め衰退したのだろう
?論理なく柔和も平和もない世界を行きてきたつもりだった。突然に世界は滅んだ。俺は壊れゆく月世
界からあと残り僅かな機会しか無い地上へと、地球へと降り立ってすべてのやり直しと取り消しを臨ん
でいた。あとは、すべてが終わってしまえばいい……物事の《終わり》ほど単純で単調で、完璧で無欠
、こんなに美しいことはないのだって。彼女たちは何を臨んでいたのか、急に見えてきた。《アダム》
を創生して何をやらせたい?『ひとりの人間にのみすべてを与えてみたい』この世のすべてを……。俺
は、すべてが滅びきることも出来ず、すべてがやり直し切ることも出来ず、いずれ、《彼ら》の中の望
みと《彼女たち》の中の望みすべてが交わるそのポイント、《世界最後の二人》のような概念に向かっ
て……滑落していった世界のままに、望みを叶えさせたいのだと思った。俺は……それでも懊悩に屈し
た。

>>focus_30 ライトネスロード
ひとりの女性が「おはよう」を唱えた。世界は平和で満ちた。彼女はすべてを手に入れて、そして結局
これ以上無いほどに幸せになった。俺が臨んだ通りの結末、彼女が臨んだ通りの結末。一人の女性を、
ただ一人の女性を、その夢を、恋を、愛を守り抜き、そのすべてを幸せに染めてやりたいと願った、そ
れだけのための物語。俺は、俺たちは願った。たぶん、きっと、どうにもならないくらいに行き詰まっ
て、誰もが何かをどうにかしようとして、その過程において行き止まってしまった、行き詰まってしま
った。だけど、そんなワケの理解らない状況の中においても、「だからこそ、あなたを望んだ。そんな
、ひたむきに私に尽くしてくれるあなただからこそ──」『でも、俺はそこに居ない』「あなたが居て
も、居なくても──」『違う、これは俺の本当の望みじゃ、本当の俺自身の意思なんかじゃ──』「で
も、現実に、あなたは私の手を引いて踊ってくれた──」『何もかもが滅茶苦茶になって、破綻してし
まったのに──』「あなたは私を大事にしてくれた。それだけで十分だったのよ」『俺は──』すべて
を見透かされた気がした。心が丸裸になったかのような気がした。心の壁を破ったのは、俺だったのか
、彼女だったのか。「どちらがどちらで、なんて、関係ない。私達はここに居る、私達はここにいた。
」すべてが光に包まれて、許されたかのような気になった。俺の弱さも、俺の繕ったすべての壁も越え
、すべてが瓦解して、吹き飛んでしまった。俺は唐突に気づいて、少し後悔して、すこし苦笑いして、
微笑んだ。これは俺の物語じゃない。彼女が自らの意思で心の壁を破る……そんな物語だったんだ……

>>fake booked focus_28 アウターインプット
「森羅万象は、ひとつの夢を見ようとしてる」モアは、そういった。「どんな夢を?」彼女は笑ってそ
ういった。「私の名前が示す通り。もっと、もっと。より多くを」俺は途方に暮れて星の曙光煌めく空
を見上げた。「示せば良いんだな……より多くの、幸福を」俺は傅いて、ゆっくりと手を取った。誓い
の口づけを、手に、その手にする指輪に、彼女自身の光明のためにすべてを示した。

>>fake booked focus_29 アナザーカオス
世界が終わったあと、深遠なる炎が現れていった。「お前のすべてが私は欲しい、お前は一人の孤独な
男であり、そして同時に、一人ではない」俺はたぶん、間違っていたんだと思う。人は、しょせん、ひ
とりひとりがひとりでしかない。でも、何故か、すべてはひとりでもないなにかに満ちた。結果として
俺は俺を見失ったし、それでも別に良かったんだと思う。俺は、何かを忘れていたことに気付いた。な
ぜ俺は俺のための生をなくしてしまったか。たとえたまたまであっても、星が死ぬような世界に産まれ
た。俺は無我夢中で駆け抜けてきた。そして俺は、逃げ出した先で、結局、戻ってきてしまった。誰か
を幸せにしてやりたいと、無我夢中で駆け抜け願っていた頃のことを。さようなら、と言って捨て去っ
ていた。滅んでしまったはずの星で何故か生きていてしまった。俺は願った。彼女とのこの先を。俺は
唱えた、その名前を。モア。

>>fake booked focus_30 リプレイスドトゥユー
視線の先で、彼女は示した。「じゃあ、何をする?」別に、なんだっていい。それ以上に何を言える?
こうやって俺たちは「今以上、これ以上」それだけを願い、果のない世界の果の、その先の世界、果の
果のその先の果へ歩みだしていった。これからがすべての始まり、ここからがすべての終わりだった。
マインドリンクを終えて、ネクサスの輪が閉じた。此処から先、この世界は俺たち二人だけのためにあ
った。そう信じるために、そう信じられるために今からを生き続ける。