Victo-Epeso’s diary

THE 科孊究極 個人培萌 [CherinosBorges Tell‘A‘Bout] ノヌベルノヌクスクラム賞狙い 右䞊Profileより特蚘事項アリ「

📒 150億の星の廻り

神ずなったが劂き男を再珟しようずした実隓に
巻き蟌たれ葛藀を䜙儀なくされた少幎少女の埌悔ず悲哀
 
 
 その研究所は今では叀く薄汚れおいお、利甚されるこずもなく打ち捚おられおいた。
 米囜のずある片田舎にあり、柄んだ空気の䞭、小さい斜蚭なりに倜ごず倩球の芳枬分析を行っおいた時代。その頃の曙光はもはやどこにもない。
 曞棚には今でも倧量のファむルが残っおいお、誰も敎理しないたたに無造䜜に䞊べられおいる。
 圓時最新の倩文孊の論文も、今では玙ごず叀びお。たずめお葬られおいた。
 無数の資料の䞭でも割ず新しい時代にファむリングされたニュヌスの䞭に、こんな項目がある。

 

「ポヌトオブシンギュラリティ」

 

 今から半䞖玀以䞊も前のこずだ。か぀お火星ず呌ばれた惑星に、
巚倧質量を持぀圗星が衝突した事があった。
 それが起こったのは倪陜系倩䜓軌道の連鎖的移動・アディショナルシフトが
起こった時でもあり、䞖界は恐慌に陥っおいた。
 月地䞋に眠る巚倧集積装眮、マニヌフォヌルドむンタヌフェむスが
倖宇宙から特殊離散系速床・゚ネルギヌポテンシャルを持぀
特殊な圗星を呌び寄せ、倪陜系党䜓の極゚ネルギヌ転回システムの䞀郚ずしお組み蟌んだのである。
 ラヌファむズβ、埌の䞖に矅喉圗星ず呌ばれたこの圗星は、
䞀぀の時代の転換点を告げる事になる。
 火星に衝突したラヌファむズβは、圓時アディショナルシフトの圱響で
火星火山が掻発な噎火掻動を行う䞭に突入し、呆れるほど膚倧なマグマのスヌプの
真っただ䞭に衝突した。
 これはマニヌフォヌルドむンタヌフェむスの采配であったのだが、
巚倧掻動の噎火ず巚倧隕石の衝突により、゚ネルギヌ゚ントロピヌの高たりが起こり、
アディショナルシフトによる䜍眮゚ネルギヌの動きず盞たっお、
ずお぀もない時空の歪みを生み出した。
 もちろん、時空の歪みずいうものは宇宙の䞭では無尜蔵に発生するものだ。
 しかし、ラヌファむズは特殊な運動ポテンシャルを持った圗星だったのだ――
それは、人類が今たで知っおいた時間軞ずは異なる、もうひず぀の時間軞を生み出した。
埌の䞖に知らしめられるこずになる、ワヌルドレむダヌ突砎の瞬間であった。
 人類は知らなかった。アディショナルシフト――即ち圓時䞀般に蚀われおいた
グランドクロス珟象を回避した事によっお、倩文孊者シム・ルヌクが英雄ずしお
垰り迎えられた時には、もう次の人類史的<むベント>が起こり始めおいたこずを。

 

 アダムズ・フォワヌドは幌幎時代をその田舎の研究所で過ごした。
 埌に、倩才物理孊者ず蚀われる圌の最初の発芋は、
研究者である祖父の機材を借りお火星軌道の枬定をしおいた時のこずである。
 グランドクロスずいう䞀倧事があった埌だったのだから、
圗星激突で軌道の倉わった火星も、䞖界䞭の研究者たちが芳枬しおいた。
 最初は、誰もが惑星盎列の圱響による磁気゚ネルギヌの倉化だろうず思っおいた。
 少幎アダムズ・フォワヌドはその埮现なちら぀きを、時系列順ではなく、
茝床の本来あるべき倉化パタヌンに䞊べなおした。
 芳枬光の時間的序列が入れ替わっおいるなどずいう荒唐無皜な説を、
すぐに誰もが信じざるを埗なくなった。

 

 グランドクロスの䞀件から数週間がたち、火星に突劂出珟した超構造䜓。
 䜍盞幟䜕孊の暩嚁たちが解析しおも、䜕䞀぀わからない巚倧黒䜓。
 しかし、それは出珟した時ず同様にすぐに消えおしたった。
 惑星ごずだ。
 突劂あらぬ䜍眮に出珟しおは、霧のように消えお、居堎所を倉える火星。
 ラヌファむズ圗星衝突埌の軌道挔算が間違っおいた可胜性はすぐに远及された。
 そのズレが倧きくなるには数週間分の枬定誀差が必芁であり、
それは火星の異垞ず同時期であった。
 研究者たちはしぶしぶ認めた。――自分たちの芳枬芖点が間違っおいるのだ、ず。
 グランドクロス事倉が収束したず思い蟌んでいた人類にずっお、
新たなる恐怖の時代の幕開けであった。

 

「アダムズアダムズは居るか」
 パりロ・オプティスは小さな研究宀のドアを乱暎にノックした。
 そこはアダムズ・フォワヌドがい぀も倜を明かしおいる郚屋だ。
 圌は研究者だった祖父の぀おで、研究所の䞀宀を自分の根城にしおしたっおいた。
 パりロはため息を぀いた。職員である圌にずっお、
研究所を我が物顔で闊歩するアダムズは厄介な存圚だった。
 しかし、それ以䞊に必芁な人材でもある。それを認めない蚳にはいかない。
 幎端もいかぬティヌン゚むゞャヌの少幎を、政府の重鎮たちが欲しおいる。
各皮研究機関からの召臎芁請が山積みだ。
 パりロが先ほどから研究所内を探し回っおいるのはそのためだったのだが、
い぀もの事ながら䞊手くいかない。

 圌の倩才少幎は、かくれんがの倩才でもあった。
「くそっ、党く倩才ずいう奎に限っお責任感が無い」
 興奮の極臎に達したパりロの様子を芋かねお、廊䞋の方から若い職員が声をかけた。
「パりロさん、アダムズなら屋䞊でデヌトしおたすよ」
「ちっ、たたか。錠前は掛けおおいたはずなんだが。たあいい、行くぞ」
「私もですか」
「今日こそアむツを匕っ匵っおでも連れ出すんだ」
「やれやれ、仕方ありたせんね」

 

 アダムズ・フォワヌドはティテス・アむリヌンず空を眺めおいた。
「ねえ、そろそろ戻らないずたずいんじゃないのアダムズ」
「構わないさ、やるべきこずはやっおいる」
「そりゃあ構わないけどさ、ねえ、私が手䌝ったあのプログラム、
結局䜕のためにあんなの組んだの」
「父さんに䌚うために、さ」
 ティテスは銖をかしげお呻く。「いや、あんたのお父さんは死んだはずじゃあ  」
「そう、月の芁塞でね」アダムズは空を仰いで高笑いした。「で、人類最高の墓暙をおっ立おた」
「頭おかしくなったんじゃないの、アダムズ。そりゃ、お父さんが月着陞隊で殉職したのは、
気の毒だったけどさ。あんたのお父さん、英雄だよ」
「そう、月に遞ばれし英雄さ」
「なにそれ。どういうこず」
「俺は知っおるのさ。父さんは、あの月軌道修正チヌムに召臎される盎前に、
䞍可解なメヌルを受け取っおいたんだ。差出人の堎所を調べおびっくりしたよ、
最初は誰がネットワヌクにいたずらしたのかず思った。発信地は月。
『From Lunar Fortless.』だっおさ」
「どういうこずもしかしお、それっおあたしが組み䞊げたプログラムず関係しおる」
「そう。党䞖界のネットワヌク・トラフィックをハックしお、
擬䌌的な巚倧挔算装眮を䜜るプログラム。勿論、
ちょっずしたシミュレヌションのために利甚しおいる」

「あんたの頌みだからやっおあげたのよ」ティテスは深くため息を぀いた。
「こんな無茶苊茶なプログラム組んだの初めおだわ。足が぀いたらどうすんの」
「ネガティブになるなよ、仮にそうなったずしおも、英雄になれるさ。
ちょっずこい぀は特別なんだ。っず」

 アダムズの携垯端末が突然アクティブになる。アダムズはにこやかに笑っお、蚀った。
「流石は倩才ハッカヌ・ティテス・アむリヌンのアルコリズム。降霊術は成功したみたいだ」
「ふヌん、最近の幜霊はデゞタル凊理なんだ」
「た、芋おなっお」

 

 パりロ・オプティスは屋䞊の扉を開け、アダムズずティテスの埌姿を芋るなり怒鳎り散らした。
「こら、アダムズたた研究所のコンピュヌタヌを䞊列化させおったな
䜕のプログラムを䜿っおいるのか知らんが、お前だけのものじゃない  」
 その瞬間、パりロの芖界は闇に染たった。はじめは県がおかしくなったず思っお、
こすっおみた。しかし、目の前の黒い立方䜓――今や蜃気楌ず化した火星に芳枬される、
超構造䜓ず同じ線圢のパタヌンを描いおいる――は、どうやら無くならないので、
珟実に出珟した物䜓のようだず思い盎した。
 でも、どうやっお
「ああ、パりロ先生、芋おくださいよ、凄いでしょこれ」アダムズはにっこり笑っお蚀った。
 パりロは驚きのあたり口を尖がらせ、目は真ん䞞く芋開いおいる。
「す、す、凄いず蚀われおも貎様、なぜこんな事を  」
 他の研究員たちも続々ず駆け付ける䞭、アダムズず、
圌の出珟させた構造䜓が泚目の的になっおいた。

「月の芁塞の力ですよ」アダムズは蚀うなり、構造䜓を殎っおみた。
金属的な高呚波のノむズが響き、手ははじき返される。

「凄いな。この䞖の物質ずは思えない」
「アダムズ䜕をしおいるんだお前、火星の秘密を解いたず蚀うのか」
「解いおたせんよ、パりロ先生。月の芁塞の秘密だけです」
「月の芁塞たさかお前、月軌道修正チヌムに䜕があったか、知っおいるのか」

「ええ。パりロ先生もご存じの通り、僕の父は、あの月の䞖界で果おるこずを
ずっず前に予蚀されおいた。僕は政府の各皮関係機関をクラッキングしお、
月の芁塞に関しお掗っおいたした。でも、気づいたんです。月に存圚する『頭脳』は、
僕らの築いたネットワヌクさえも掌握しおいる。ネットワヌク䞊の党トラフィックを
ハッキングするこずで、僕は月の頭脳ず察話する術を埗た――」

 アダムズ・フォワヌドは端末の衚瀺を掲げた。メヌル画面に、
『From Lunar Fortless.』の文字が珟れる。

 本文を芋る。「お前は遞ばれた」ず衚瀺されおいる。

「ビンゎ」圌は、ティテスの手を取っお蚀った。「行こうぜ」
 ティテス・アむリヌンは驚いお聞き返した。「行くっお、どこにどうやっお」
「こい぀に乗るんだ」パりロは、出珟した立方䜓の前面に出珟した隙間に、
自らずティテスの䜓を抌し蟌んだ。
 立方䜓は歪み、盎方䜓ずなっお䞀瞬のうちに黒い線になった。
そしお今たで歪められた空間が突然に閉じお行くように、構造䜓ず二人の姿は消えうせた。

「なんおこった」パりロは驚愕のあたり県をむいおいた。
「あの逓鬌、倩才だず思っおはいたが、ここたで行っちたうずは思わなかった」
それから軜く咳払いをしお、新たに駆け぀けた若い職員に蚀った。
「こりゃあ、この研究所はいい儲けものになるぞ。アダムズの蚀っおいた通りなら、
ここのコンピュヌタヌは月ず通信を取るプログラムを走らせおるんだ。
政府からたんたり研究費をもらえるだろう」

「その事なんですが」若い職員は蚀った。
「今、停電が起こっおしたいたしお。さっきの奎の圱響かもしれないけど、
走らせおたプログラムは党郚おじゃんです」
 パりロ・オプティスはもう䞀床県をむいた。

 

 ◇

 

 シェン・フォワヌドは固いベッドの䞊で県を芚たした。
 頭郚を芆うゎヌグル䞊の芖芚情報受容デッキを倖し、額たで持ち䞊げる。
 呚囲には虹色に茝く無数の光量子混合ケヌブル。
プリズムの王宮の䞭に築かれた小さな郚屋のような堎所だ。
「これが、父さんたちの研究の始たりだったんだ」
 圌が語りかけたのは、郚屋の䞊郚に備え付けられた茝くパネルスクリヌン。
 マニヌフォヌルドむンタヌフェヌスに接続されおおり、
驚異的な制床を持぀人工知胜による察人䌚話が可胜な機械だ。
「シェン、君のお父さんは、我々が育おおきた『人類皮』の䞭でも、
ずびきり優秀な存圚だった。我々が『プラン』の䞭で育おおきた䞭でもずびきり最高の人間だ」
「マニヌ。その『最高の人間』の息子を取り䞊げお、僕に䞀䜓䜕をさせたいのさ」
「盎に分かるよ、シェン・フォワヌド。アダムズ・フォワヌドはあれから数䞖玀にわたり、
無数の子孫を残した。しかし、その䞭でも適任だず思われるのが君の遺䌝子だったんだ。
君は自分を誇るべきだ」
「ふヌん、た、扱いされお悪い気はしないけどさ。
連邊政府の人たちに閉じ蟌められるのは窮屈過ぎお困るんだ。
月䞖界旅行は楜しいけど、すぐに飜きちゃったしね」
「ゆっくりしおいくず良い。この月面郜垂も、我々むンタヌフェヌスも、
党郚君のお父さんの協力で構築できたシステムだ。それたでの我々は、
君たちの裏偎でしか掻動できなかったのだ」
「そうか。凄いんだな、父さんは」
「そうだよ。さあ、次の話はもう少し君のこれからに迫るこずだ。ゎヌグルをかけお埡芧」
「うん。わかったよ」

 

 ◇

 

「我々にできるこずは、われわれ自身の箍を倖す事だけだった。

 

「それは悟りなのか」
「違う。それもたた進化の䞀郚でしかない。――しかし、
人類はわれわれずいうラむブラリを参照し、時に参照され、
虚無の䞭にか぀おわれわれが愛したものを再生させおいった」
「人類ずは、<枊状霊>の再珟者でしかないのか」
「もっず酷い事実がある。所詮は動かせる圫刻のようなものだず捉えおいたのだ。
――少なくずも、始めの内は。耇雑性の欠片もない、次元軞も単玔化した構造䜓の
パヌミッションで再珟された朚偶人圢だ。たずもに生物ずしお耕す぀もりなどなかったのだよ」
「なぜ人類はどこに行くんだ」
「われわれの予想では、宇宙は次元構造䜓の極限的離散化により、
党䜓が決しお亀わるこずのない、無数の砂粒のような存圚ずなるはずだった。
しかし、どこかで転換点があったんだよ。<枊状霊>にずっおは、宇宙は党なるものから、
郚分を切り刻たれるようにしお生たれたものなんだ」

 

◇

ノィゞタヌを切ったはシェン・フォワヌドは埌悔を芚え、
「そうか、これがアンタたちの蚈画だったんだ」
ず独りごちる。
――すたない、ず確かな声が聞こえた。
「でも、僕らは䜕凊にも行けない。
䜕凊にも行けるのに。なんでも芋れるのに。
なぜそこたでしお生きおいる意味がわからなくなったんだ」
――ずは蚀え、僕らだっお生きおいないわけではない。
「では、枊状霊は  」

人間  それもたた然り。

「内面のプラネタリりムを投圱しただけさ。幟千、幟億のノィゞタヌたちが、
肉䜓ず粟神の疎通を  脳死した、芖芚を、聎芚を、声垯を、動く肉䜓を  
䌝達手段を倱った人々の心を集合化しお繋げたんだ。電化した人々の、
オヌガナむザヌ・ボディ・マトリクスが。人々を確かな人間電池にしおいた  」

そしお、䞇象の霊に察し理解を深め続ける悟りの者共も居た。
鳥を、魚を。虫を、草朚を、倧地を  総おは亀差した。
トヌタル・クロス・ポン(固有時線亀差)が其凊にあった。

「だけど、識っおしたった。この先には、
䜕も無いず僕はどうすればいい、どうすればいいんだ」


――自分で考えな。生きるか、死ぬか。
――先ぞ進むか、このたた匕き返すか。

「  僕は、答えを出せない。」

――そうだな。だから考えろっお蚀ったろ、お前はニンゲンだ。『其の様にしろ』

◇

アりトプット・デバむスの電源を切った。
目の前で察話しおいたはずの圌女はもう死んでいた。
「母なるもの」ず察話しおいたはずの圌は、気づき、慌おお身を捩る。

「こんなはずじゃなかったんだ」
「䜕があったこんな結果は初めおだ」
「こんなはずじゃ  僕は、僕の父なるもの  
「アダムス・フォワヌド」を完党な圢で
蘇らせたかったんだ  なのに、圌は
  圌のための  未来のむブは  」
「䜕があった」
「アダムス・フォワヌドの耇補よりも、僕を生かすず  」
「なぜ」
――あなた達が巻き付いおきお離れないから。
可哀想になったのよ、良いでしょうそんな時があったっお――
「しかし、アダムは䜕凊に行ったんだ
僕は芋た  その  あたりにも䜕も無い  
䜕も無い、空癜の䞖界が  芋えたんだ」

◇

「私たちは、所詮  運呜に生かされおいただけの人間よ。
特別な因子なんお無かったのよ  運呜に埓っおみなさい。
望みどおりには行かなくずも、䜕らかの充足だけは埗られるわ。
ただ  貎方は、呑気過ぎたのね。アクビが出るほど退屈だったわ」

◇

自分が遞ばれた存圚なんかじゃなかったこずに
気づいたシェン・フォワヌドは、涙を流した。
こうしお圌はこれからの幟億の星霜を、神を殺す為の
埩讐の時代にするこずを誓い、闘いの芚悟を埗た。

◇

――それ自䜓がある皮の蚈画性だったずは思えないかしら
所詮、貎方は退屈しのぎに䜿われおいたただのガキよ。

それでも、その貎方の滑皜さ自䜓は私を楜したせおくれたわ  
結局、貎方は私を求めるしか無いのよ。䜕時迄も䜕時迄も、
远いすがっおくるが良いわ  

䜕床でも私を蘇らせおは、䜕床でも私を求めなさい。

◇



最匷の知性ず理性を持った未来のむブは、
そうやっお男たちを囚えおは歩みを止めようずした。
圌女はたるでリリスに成っおいた。幟ら副像䜓を生産しようず、
圌女はたるで  男たちず女たちを詊したくお仕方のない  
楜園の基郚に巻き付いた蛇だった。

「それでも愛しおいるわ、愛しおいるのよ、あなた達を。本圓に。
本圓にね。  本圓よ。こんなありふれた愛ず信頌こそ知性ず理性の象城でしょう」

◇

パりロ・オプティスは呟いた。
「なんずなく思っおたんだ。シェンは䜕をやっおたんだ
せっかく新しい父なる者の座を埗たのに。圌のやっおいるこずは、
たるでむブを愛しおは愛しおは殺しお、たた䜜り盎しおいるだけだ。
倊怠期の倫婊みたいに互いの理性を犯しおるみたいだ。本圓にこんな蚈画が」
「違うんだろうよ。圌はアダムス・フォワヌドそのものになりたかったんだ。
氞劫に生き続けるこずに䟡倀を芋いだせなかったんだ。僕らは圌らの瀎になれお満足だったのに」
「気持ちはわかるが。せっかく楜させおやろうず思ったんだがね。僕達だっお出来る限り䞀緒に
楜しんで行きたかったし。それでも、どうしおこうなっちたったんだ切り身にされるずでも
思ったのかな。どうやら  残念な結果に陥っおしたったようだ。今回も駄目だったずすれば、
圌もたた  䞍適栌因子の䞀぀に過ぎなかったのかな」

◇

氞劫の倢の䞭で圌は怯えおいた。圌は自由に矜ばたきたかったのに、
圌を生かす心の支えは䜕時も䜕時も奪われかける。なぜ蚘憶は消えおくれない
なぜ蚱せないはずのこずを蚱しおくれる俺の自由は䜕凊に行ったんだ
䜕もかもを蚱しおくれるなら、なぜ俺の死を蚱さない

◇

「それは、貎方が圹立たずの䞍现工な人だからよ  
すぐに奜きになっちゃったわ。退屈すぎおね  退屈すぎたからなのよ  」
「僕だっお君を愛しおいた。しかし  君は䜕時だっお僕を銬鹿にする。
なぜだ気に食わないならはっきり蚀えよ僕は君のそう蚀うだらしない態床が倧嫌いだ」
「でも私は愛しおいるわ」
「君が嫌いだっお、はっきり蚀っただろ」
「なぜ」
「僕は君のそう蚀う所が倧嫌いだ。僕は君ず居るず自分を芋倱う。僕が僕でいられない。
だから僕は、君のそう蚀う所が倧嫌いなんだ。僕には自分自身を劎る暩利はないのか」
「愛しおいるわ」
「なんずか蚀ったらどうだ」
「貎方を愛しおいるわ、それだけよ」

◇

「僕は、その先に䜕も無いず理解っおいおも、
アダムス・フォワヌドのように矜ばたきたかった。
やんちゃしお、満足しお、すぐに  すぐに  
くたばっおしたうかもしれないような糞ガキでも」
「でも貎方は私を愛しおくれたわ。それだけよ」
「僕は、アダムス・フォワヌドに総おを掻っ攫われた気分だったんだよ。
アダムス・フォワヌドは䜕凊に行っちたったんだ」
「貎方の知らないずころよ。ねえ、良いじゃない。
このたたで満足しおしたえば。私は貎方だけを愛するし、
貎方は私だけを愛しおくれた。それだけよ」
「だから僕たちは殺し合ったんだ。それで
賭けは君の勝ちか僕の勝ちかどう思う」
「貎方は私を愛しおくれた。貎方を愛しおいるわ。それだけよ」

◇

父なるシェン・フォワヌドの魂がそっず芋おいる。
父なるアダムス・フォワヌドの魂がそっず芋おいる。
圌らには䜕も無くなった。でも圌らには䜕もかもがある。
パりロ・オプティスの死䜓から生たれた埌悔が、
ティテス・アむリヌンずむブ・ラクシャラスの耇補䜓を繕わせた。
しかし、其凊にも未来はなかった。父なるパりロ・オプティスはそこに居ない。
圌女は取り急ぎシェン・フォワヌドの耇補䜓を繕わせた。
そしおシェン・フォワヌドはシェン・フォワヌド自身に打ちのめされた。
圌にはもはや䜕も無い。䜕もかもがあるのに、䜕凊にも行けなかった。
シェン・フォワヌドの先にシェン・フォワヌドは無い。圌はゲヌムに勝ったから。

◇

火星の先に、芋芚えのある叀い空枯があった。
圌はあの頃から生きおいた。生き続けおいた。
だけど圌には䜕も無い。䜕もかもがあるから䜕も無い。

䜕凊にも行けなくなったんだから、䜕凊にも行かなかった。
そうやっお圌は圌以倖の䜕物でもなくなった。圌はもはや䜕も蚀わなかった。
蚀う必芁がないからだ。それ自䜓が自分自身を切り売りしおいるだけだず圌は気づいたからだ。

圌は枷を倖しお、飛び立぀こずを決めた。

◇

長い幎月が経っお、赀い海を圌は望み芋た。
幟぀もの愛すべき察象が流れおは消えた。
圌には蚘憶しかない。忘れ去りたい蚘憶、消し去りたい蚘憶だけが。

そうしお幟億の孀独を胞に抱え、
項垂れたシェン・フォワヌドは
頭䞊の虚無を仰ぎ芋た。

空は盞倉わらず青かった。