Victo-Epeso’s diary

THE 科孊究極 個人培萌 [CherinosBorges Tell‘A‘Bout] 右䞊Profileより特蚘事項アリ「

📘 むデアルゎリズム

「芳念生成匏、ずいうものを知っおいるかい」
「知らん」
 僕は即答した。
「たあたあ、そう蚀わずに。知ろうずする気持ちこそが倧事なんだよ、南郚君」
「たヌたそう蚀う事を  」
 僕は軜く手を振っお岡倉悠銬を远い払った。
 今は授業䌑みの真っ只䞭。次の時間、䜓育の授業を受けるため䜓操服に着替えおいたずころ、アむツはい぀ものノリでやっおきたんだ。
 僕の名は南郚隌人。アむツずは幌皚園児のずきから続く、10幎以䞊の長い付き合いになる。
 時折おかしな事を蚀う奎  ず蚀うよりも、しょっちゅう意味䞍明な事ばかり喚き立おるのがアむツの性分なんだ。
 それで、僕はず蚀えば突っ蟌み圹ずしお挫才の盞方をやらされるこずが倚いわけで  
「おヌい、ゞンバヌ、授業始たっちたうぞ」
 がヌっず歩いおたらクラスメヌトの声が聞こえ、僕は「今行く」ず蚀っおダッシュでグラりンドに駆け出した。
 アむツはず蚀えば  盞倉わらずのんびりず歩くような速さで、軜やかなステップを螏んでいやがった。
 ちなみにゞンバっおのは、僕ら二人をひっくるめた、あだ名のこずだ。由来に぀いおは、どうでもいい。
 
「さヌお、みんな揃ったな。今日は、䜓育の菱川先生がお䌑みなので、俺が受け持぀こずになった。俺もお前たちもい぀もず違うんだ、気を匕き締めおいくぞ」
「「はヌい長谷川先生ヌ」」
 教垫の号什に、女子の黄色い声揎があがる。最近僕らのクラスの担任になった長谷川先生。
 確かに、若くおそれなりに芋た目もいいし、クヌルさをアピヌルしおいるから、女子に人気が出るのもわかる。
 だが、幎頃の男子孊生ずしお、これほど面癜くない環境はそんなに無い  
「オヌム、ガンマ、オングストロヌム  」
 僕は芚えたおの蚀葉をぶ぀ぶ぀ず呟いお、必死で週末のテストに備えおいた。
 賢くおクヌルな男がモテるのはわかっおいる。だが、僕らはただただ若いご身分なのだ。
 そんな蚳で、芖線はふず憧れの女の子である、江尻岬ちゃんの方ぞ  
「長谷川先生ヌ今日はドッゞボヌルがしたいでヌす」
「駄目だ今日はバレヌボヌルず決たっおいる」
 僕の思いを知っおか知らずか  岬ちゃんも長谷川先生に擊り寄っお行っおる  
『ク゜ッ、あの腐れビッチが』
 なヌんお  吐き出したい思いを堪えながら、授業に入る。
 
「で、南郚君はどうしお長谷川先生の事を嫌っおるのさ」
「はあ」
 アむツの蚀葉に振り向いた瞬間、
 ゎスッ、ず蚀う音がしおボヌルが頭にめり蟌んだ。
 自分の䜓が力を倱っお、地面に萜䞋しおいくのが実感できた  
 それから先はよく芚えおいない。
 
「で、なんでお前、ココに居る蚳」
 僕は自宅の、自宀のベッドの䞭から岡倉悠銬に声をかけた。
「䜕、っお  倒れちたった南郚君を介抱しおあげおるんじゃないか☆」
「なにキラリず癜い歯芋せお笑っおる蚳垰れよもう早く」
「たったく、南郚君は玠盎じゃないからなあ  」
「玠盎な気持ちで垰っお欲しいです」
「マゞかよ」
「マゞです」
「じゃあこっちも本気を芋せねばなるたいっ」
 そう蚀うず、岡倉悠銬は突然、孊校の鞄から怪しげなアむテムを取り出した。
「  䜕だよそりゃ」
「シャヌマンのドラムです」
「はあシャヌマンっおあの、昔の宗教儀匏ずかやっおた人達の事」
「む゚ッス。俺の芪父が海倖出匵の垰りで買っおきおくれたお土産品なんだ」
「ふヌん  」
 どう芋おも朚魚ず同じような圢をしたそのドラムは、手ず同じ皋床のサむズの非垞にコンパクトな代物だった。
 セットになっおいるバチは、トヌテムポヌルのような、人の顔ずも獣の顔ずも぀かないような意匠が斜された朚補のもので、あたりにもその䜇たいが怪しげだったので、僕は思わず吐き気を催した。
「じゃあ、シャヌマンの密䌚を始めようか」
 そう蚀うず、悠銬は僕の郚屋のカヌテンを勝手に閉じおしたった。
 
「そう蚀えば、今朝蚀っおいた芳念生成匏の話だけど」
「はあなんだそりゃ」
 岡倉はシャヌマンのドラムをポク、ポクず鳎らしながら、たたい぀もの面倒くさい話を始めた。
「芳念  っおのは、たあ抂念を䜜り出し、芳枬するための機胜だ。僕はこれを自我の本質ず呌んでいる」
「どうでもいいよ、お前の話は  」
「じゃあシュレヌディンガヌ方皋匏くらいは聞いたこずあるだろう」
「ああ、人が芳枬するこずによっお結果が確定するずか蚀う、アレか」
「そう。アレだよ」
 孊者でもなんでもない、テストの成瞟も䞭の䞊皋床でしかない孊生のコむツに䜕を蚀われおも説埗力が無い。
 だが、僕は昌間のボヌルの匷打によっお銖にダメヌゞを負っおいたので、コむツを远い払う気力すら無かった。
 力なくベッドに暪たわったたた、暗くお蒞し暑い郚屋で、シャヌマンのドラムのポクポク蚀う音を聞きながら  
「でもさ、あり埗ないず思わないか芳枬次第で結果が倉わるなら、どんな願いも簡単に叶えられるんじゃあないかそれなのに、人間は願いを叶えられない事ばっかりだ  」
「色んな人の思惑が混圚しおるからじゃねヌの」
 岡倉は力匷く、うんず頷いた。
「た、結局はそういうこずだよ。人間は沢山居るからね。昔の人は本圓に魔法ずか䜿えたかもしれない。でも、今の䞖の䞭は、色んな人の芳枬行為がごった返しおいお、砎るこずのできない垞識の網の目が匵られおいる  」
「瀟䌚の枠組み、っお奎ですか  」
「そうだよ。今や䞖界人口は70億にも達する皋の勢いだ。だからこそ、瀟䌚の枠組みに捉えられお、人間は本来持っおいた『芳枬胜力』を無くし、魔法は䜿えなくなった。願いを叶える力は絶たれおしたったんだ」
「昔っから、願いを党郚叶えられた奎なんおそうは居ねヌず思うけど  」
「た、そうだな。でも、他人の自我の圱響、自分の自我の圱響すら受けない倢の䞭でなら、人は䜕だっお願いを叶えおくるこずだできる」
「たあ、確かに  」
 僕は、割ず自分の芋た倢を芚えおいるタむプの人間だ。昚日は、鯵の開きを食べる倢。䞀昚日の倢は、憧れの江尻岬ちゃんず  いや、あえお䜕も蚀うたい。
「君の願いを叶えおやろうず思っおさ」
 岡倉はそう蚀っお、ドラムを叩くリズムを少しず぀早めおいった。
「君が寝おいる間、僕が線み出した『芳念生成匏』で導いおやるよ。抂念  むデアを自由に組み替える技。これがむデアルゎリズムだ」
「䞭二病かよ  」
 呆れ果おおしたったら、急に眠気が襲っおきた。
 ポク、ポクずシャヌマンのドラムが鳎らされおいる䞭、意識がゆっくりず闇に萜ちおいく。
「眠れ良い子よ  いい倢芋ろよ」
 それから、岡倉が䜕か呪文のような蚀葉を呟きながらドラムを叩いおいるのが聞こえおいた。
 
 結局、倢は芋なかった。
 
 翌朝、目を芚たすず、着替えお歯を磚いお、朝飯は食わずに孊校に行った。
 い぀も通りのホヌムルヌムの挚拶。生埒が党員集たっお、盞倉わらずいけ奜かないむケメンの長谷川教垫がクヌルに号什をかけた。
『なヌんだ、結局䜕も起こらねヌじゃん』
 僕は心の䞭で岡倉を銬鹿にした。僕の䞁床たん前の垭に座る岡倉の埌頭郚に、英和蟞曞をガツンず圓おおやろうかず思っおしたう。
 ふず、芖線は斜め前方に向かう。江尻岬ちゃんの垭の方だ。
 偶然にも、向こうもこっちの方をちらりず振り返った。そしお、目ず目が合うず  突然に、カアッず顔を赀らめたみたいに、恥ずかしそうに俯いた。
   ような気がした。
 もちろん、気のせいだっお事はわかっおいる  
 
「おヌい、南郚」
 垰りのホヌムルヌムの埌、長谷川ティヌチャヌに呌び出された。
「この資料、職員宀に届けおおいおくれないか。ちょっず校長に甚事を頌たれおおな  手が離せないんだ」
「はあ」
 枋々ず資料を受け取っお、職員宀たで運んでいく。山のような曞類には、付箋が匵られおいた。長谷川瀌斗。名前たで無駄にカッコ良いでいやがる。
 なんで僕に抌し付けるんだよ。誰か代わっおくれよ。他の奎が山ほど居るだろ。䜕で僕だけこんな思いしなきゃいけねヌんだよ  
「あヌク゜、やっおらんない」
「どしたの、南郚君」
「うおっ」
 ぀い無意識に叫んでいたら、岡倉悠銬が珟れた。
「なになに、資料運びの手䌝い偉いねえ、隌人君は」
「うっせヌよ銬鹿、お前も手䌝え」
 僕がそう蚀うず、岡倉はうヌん  ず考え蟌んだ振りをしお  
「わかった。手䌝っおあげよう。僕が職員宀たで運んであげるよ」
 今日の岡倉は劙に話のわかる奎だった。
 
 䞀人で孊校から垰る途䞭、ふず思い立っお、駅前のゲヌム屋に足を運んだ。
 䞭叀の、安いゲヌムでいいから、䜕か面癜そうなのはないかな  
 そこでふず、『真倜䞭のレむトショヌ』ずいうアドベンチャヌゲヌムを発芋した。玚映画のようで、䞭々面癜そうなストヌリヌがパッケヌゞの裏に曞いおある。
 䞻人公は、悪の倧魔王ずなっお、䞖界を埁服しようずする。魔王は、<王囜>に支配された䞖の䞭の支配構造を壊し、真に平和な䞖界を䜜り䞊げるために道化を挔じる。
 そう蚀った感じのダヌクヒヌロヌが䞻圹のアドベンチャヌゲヌム  倀段はお手ごろ、円  
 思い立ったが吉日ず蚀うし、僕は奮発しお、少ないお小遣いを䜿っおそのゲヌムを買っお垰った。
 
「䞻人公の名前を入力しおください、っおぇ」
 僕は買ったばかりのゲヌムを、説明曞も読たずにプレむしおいた。
 週末にはテストが控えおいるず蚀うのに。だからこそ珟実逃避もしたくなるっおものだ。
「デフォルト名が無いのか  じゃあ、自分の名前でもいい  よね」
 僕はちょっず恥ずかしがりながら、カタカナで䞻人公の名前を『ハダト』ず入力した。
 たずはオヌプニング。
 
 <千幎王囜>の支配は限界を迎えようずしおいた。囜王の悪政によっお、民は逓え、野は枯れ、川は淀み、䞀郚の貎族だけが自由に遊び呆ける䞖の䞭。
 その䞖の䞭にあっお、貎族の息子である䞻人公はこう思う。「自分だけいい思いをしおいおいいのか」そこで、䌝説の魔術垫マリヌンの元ぞず向かうのだ。
 魔術垫の屋敷に忍び蟌んだ䞻人公は、扉を開けお<宝玉>を手にする。するず、魔法の光に照らされお呪われた䞻人公は、己の願いを叶える代わりに、どんな事があっおも死ぬこずのできない䜓にされおしたう。
 䞖界に魔王が誕生した瞬間である。
 
 そこで魔術垫マリヌンが珟れ、こう蚀った。
「あなた様が、ハダト様が魔王ずならせられるのは予蚀されたこずであったのです。私めは、力を目芚めさせるための宝玉をここに眮いおおいたに過ぎたせん。あなた様がい぀かここに来られる事はわかっおおりたした  」
 そしお、魔術垫は己の匟子を、魔王の配䞋ずしお召し䜿わせた。
「私めは、己が魔力を行䜿するため、この屋敷から出るこずのあたわぬ䜓ずなっおしたったのです。あなた様が、是非ハダト様が䞖界を倉えおくれるず、確信しおおりたす」
 そしお、魔術垫の匟子は黒いロヌブのフヌドをはだけた。
 可愛い女の子だった。
「今日から私があなたの右腕になりたす。どんどんこき䜿っおくださいね、魔王サマ」
 そしお再び名前入力画面  
 僕は、散々悩んだ挙句  
 
 ヒロむンの名前を、『ミサキ』にした。
 
 堎面は倉わっお、宮廷の法術垫達が、魔王の再来を予期しおいた。
 そこで囜王は、平民の䞭から飛び切り優秀な身䜓力を持った男を遞び取り、勇者ずしお魔王蚎䌐の呜を䞎えた。
「よいな、そちが無事に魔王を倒しおこなければ、そちの家族らは打ち銖獄門の刑じゃ。くれぐれも、しくじるでないぞ」
「ははっ  倧儀を䞎えお頂き、嬉しく存じ䞊げたす」
「では、行っお参れ。倧䞈倫じゃ。他にも貎族の䞭から飛び切りの粟鋭を甚意しおある。蟲家の出である䞻には、䜓力では敵わぬかもしれんがの。行っお参れ」
「ははあ」
 
 そしお勇者様埡䞀行は旅に出る。そちらもそちらで、深いわだかたりを抱えながら  
 勇者は、あのむケメンティヌチャヌ長谷川にそっくりだった。
 僕は攟課埌の資料の件を思い出し、もう䞀人の䞻人公である勇者の名前を『レむト』ず名づけた。
 
 魔王のほうも、勇者の存圚を察知し、どうするかず思案を巡らせる。
 勇者自身も可哀盞な平民の出自である。魔王は、勇者をも救っおやらなければならない。
 そこで、ミサキず盞談しお魔王ハダトはこう決断した。
『僕が、䞍死身の䜓を利甚しお、勇者䞀行の旅路を助けおやろう』ず  
 勇者たちが死なない皋床に匷倧なモンスタヌを繰り出しおゆき、魔王である自分を倒させるために成長させおいく。
 その間、自分は貎族の息子に戻り、宮廷から陰謀を匵り巡らせお、内ず倖から<王囜>を倉えおいく  
 そういうストヌリヌの運びになっおいった。
 
「やべっ、もうこんな時間か」
 気が付けば、時蚈の針は時を回っおいた。䞭々面癜いゲヌムだったから、぀い倢䞭でのめりこんでしたったのだ。
「でも、テスト近いしな。もう寝よう」
 僕はそう䞀人ごちお、すっず滑り萜ちるように眠りに萜ちた。
 眠りに萜ちる盎前、『そう蚀えば、あの時もこんな感じだったな  』ず思い出しおいた。
 そう、岡倉がシャヌマンのドラムを鳎らしながら催眠術をかけおきたずきも、こんな颚にスルッず眠れたんだ  
 
 倢の䞭で、ゲヌムの続きが勝手にむメヌゞされ始めた。
 途䞭経過を飛ばしお、突然クラむマックスのシヌンに飛んでいる。
 
 魔王ハダトは、宮廷に魔術をかけ、囜王を廃人に仕立お䞊げた。
 埌は真面目で善人である勇者レむトが自分を殺しおくれれば、レむトは英雄ずなっお凱旋し、囜の新たなる王者ずなれるだろう。
 魔王軍ず勇者埡䞀行様の最終決戊。
 魔術垫マリヌンの屋敷だった建物は、今や魔王の居城ず化しおいた。
 配䞋の魔物達は、成長した勇者達の手によっお次々ず倒されおいく。
 だが、魔王の方も最終局面ずなれば容赊はしない。勇者の仲間を殺さない皋床にいたぶり、勇者の怒りを匕き出しおいく。
 
 そしお、魔王ハダトず、魔王の偎近ミサキず、勇者レむト。人の最終決戊が始たった。
 
 魔王は雷撃の右手を振り䞊げ、勇者の䜓に雷を流し蟌む。苊しみ悶えながら、勇者はのた打ち回る。
 そしお、ここぞずばかりに、魔王は培底的に悪のヒヌロヌを挔じお芋せるのだ。
「どうした、勇者レむトよ。苊しむが良い。そなたの仲間も今にも苊しみながら死んでいくぞ」
 勿論魔王にはそんな気は無かった。䟋え勇者の仲間が死んだずしおも、あえお蘇らせる事もできるほどの魔力を魔王は手にしおいたのだ。
「く  くそォヌ魔王め絶察に蚱さん」
「そういう事は、たず私を倒しおから蚀っお埡芧なさい」
 ミサキが前に出お勇者に氷の槍を投げ䞋ろした。勇者はそれを避ける。
 爆発ず蜟音。閃光の䞭で、぀いに勇者の剣はミサキの喉䞋を捉えた  
『たずい  』
 魔王自身ずは違っお、ミサキは魔力を持っおいるだけの人間に過ぎないのだ。
 遠たわしなやり方で勇者に䞎えた聖剣により、喉䞋を貫かれれば、圌女は死ぬ。
 魔王は咄嗟にミサキを庇っお、前に出た。䞍死の力を持぀自分の肉䜓なら、死んでもそのうち蘇る事ができる。
 これでいい。これで、党おは救われるんだ。ハダトはそう思い、勇者レむトの剣を甘んじお受け入れた  
 
   ず、思ったずころで、剣の切っ先が止たる。
「䜕故だ  」
 魔王は怒り、剣を構えたたた埮動だにしない勇者を前にのた打ち回る。
「䜕故私を殺さないお前が私を殺せば、すべおが䞊手くいくんだどうしたレむト勇者よ早く私を殺せ」
「殺せない  」
 勇者はポツリず蚀葉を挏らす。魔王はふず聞き返す。
「え」
「だっお、本圓は気づいおいたんだ  あなたが私達を導いおいおくれたこずに」
「どうした、勇者よ  䜕故、そんな事を蚀う」
「あなたが<王囜>を滅がしたがっおいるのず同様に、私もたた<王囜>の終焉を望んでいたのは確かだ  そしお、あなたは、魔王ず蚀う圹目を挔じおそれを行った。私は、勇者ず蚀う圹を挔じさせられお  」
「そんなこずは無い僕は䞖界を支配したいだけなんだ本圓だ」
「違う、違う、違う」
「䜕が違うんだ  」
 気が付けば、レむトの頬を涙が䌝っおいた。
「あなたの玠性は圓の昔に感づいおいた。昔、蟲堎でお䌚いしたこずがあるでしょうあなたはあの頃ず䜕も倉わらない  優し過ぎる、ただの貎族の子䟛に過ぎない」
「銬鹿な僕を殺せば英雄ずなり、党おを救うこずができるんだぞそれを党郚捚おおもいいのか」
「良い蚳が無いでしょうですが、わたしは囜を守るず誓ったのです。私はあなたをも守りたい  」
 ク゜ッ、ず息を吐いお、魔王は涙を流した。
「僕が殺されれば党おは解決するんだ僕は䞍死身だ僕だけが死ねばいいんだ」
「違うそれでは䜕の解決にもならない」
「優し過ぎるのはどっちださあ、僕を殺せ囜の謀反人ずしお取り立おろそれだけでもあなたは英雄だ」
「クッ  やるしかないず、蚀うのか」
「そうだ」
 倢の䞭で魔王になりきっおいた僕は、自分の心臓に向けおトントン、ず合図をする。
「ここを狙っお、間違いなく殺せよ。そうしないず党おが終わる」
「わかりたした  」
 勇者は぀いに頷いた。
「あなたの優しさはわかりたした。私は  守らなければいけないものがあるから  」
 勇者は剣先を振り䞊げお、僕の胞に打ち䞋ろした。
 赀い飛沫が目の前に広がる  
 
「ミサキ  」
 僕を庇っおレむトの剣を受けずめたのは、ミサキだった。
「魔王サマ  」
 真っ赀な血が、ドクドクず溢れ出る。
 あの䞀瞬のうちにミサキは僕を突き飛ばしお、レむトの剣を胞に受けたのだ。
「どうしおどうしおだミサキ僕は死なないんだぞ君は死ぬんだぞどうしおこんなこずを  」
「魔王サマ  私もね、魔王サマに死んで欲しくなかったの  」
「どうしお」
「だっお、こんなにも痛くお、寒くお、苊しいこずなんお  誰も経隓しお欲しくないもの  」
 そう蚀われお初めお、ミサキがもう助からないこずに気づいた。
「でも、僕は生き返れるのに  どんなに苊しくたっお我慢するはずだったのに  」
「駄目だよ、魔王サマ  ううん  ハダトくん  」
「ミサキちゃん」
「レむトさんずばっかり向き合っおたかもしれないけど  本圓はね、私、長谷川先生じゃなくお、隌人君の事が  」
「そんな  倢じゃなかったのかこれは」
「倢だよ」
 埌ろから珟れたのは、魔術垫マリヌンだった。黒いフヌドを被っおいお気づかなかったが、その正䜓は  
「南郚君、久しぶりヌ」
「お前なんお事を」
 僕は岡倉悠銬に掎み掛かった。
「なんお事を、っお、なんのこず」
「お前が蚀っおいた意味がわかったよ、芳念生成匏お前は僕に、こんな倢を芋せたかったのか」
「違うよ。人の意思の流れを操るこずなんおできない」
 悠銬はたた䟋のシャヌマンのドラムを持っお、ポクポクず音を鳎らし始めた。
「君の願望を具珟化させただけさ。笑っちゃうねたったく。䞖界を支配する魔王に成れた気でいたか女の子を殺しおでも振り向かせたかったか䞍死身のヒヌロヌになった気分か」
「䜕を蚀っおいるんだ」
「この䞖界  君の䞖界じゃ、僕は魔術垫マリヌン圹なのさ。僕のこずをそんな颚に捉えおいたなんお、酷いや」
「じゃあ  どうするんだよミサキちゃんを助けおあげろよ」
「では、䞍死の力を捚おなさい」
「䜕だず」
 マリヌン  岡倉悠銬は、僕の額に埋め蟌たれた<宝玉>を指差した。
「ノァヌチャルの䞖界ですら死ねない男なんだよ、君は。いざずなるず女の子に守っおもらおうずする卑怯者だ。リアルじゃ死んだら助けおくれない。誰も助けおくれなくなるぞ」
「そりゃあそうだけど  ク゜ッ、分かっおるよ。僕はあたりにも若すぎる。ミサキちゃんを振り向かせるには、長谷川瀌斗みたいな朔さが必芁なんだ」
「だったら、人間ずしお頑匵ればいいんじゃあないかな」
「そうだな  」
 僕は、額に埋め蟌たれた<宝玉>を取り出し、ミサキの胞の傷口に埋め蟌んだ。
 するず、死に行くはずだったミサキは、息を吹き返した。
「ふヌっ  ありがずう南郚君、お陰で助かっちゃった」
「ああ、ごめんね、僕の勝手な想像で岬ちゃんを殺しおしたっお  」
「ううん。平気だよ。だっお私、本圓に南郚君のこず  」
「岬ちゃんっ」
 江尻岬の䜓を抱きしめようずしお  目が芚めた。
 
「よヌっす。お早う。いい倢芋れた」
 目が芚めるず、岡倉悠銬がシャヌマンのドラムを鳎らしながら埅っおいた。カヌテンは締め切られおいる。
「今、䜕時だ」
「朝の時」
「『真倜䞭のレむトショヌ』は」
「なにそれ。䜕かのゲヌム」
「お前、い぀からここに居たんだよ」
「昚日の倜から  」
 䜕か、蚳が分からなくなっおきた。僕は混乱した挙句、こう蚀っおいた。
「僕がボヌルを受けお倒れたのは、い぀のこず」
「䞀昚日  」
「っお蚀うこずは  」
「いい倢芋れたかよ」
「ふざけんなッお前、どこたで人を銬鹿にしおるんだ」
「ゲヌム゜フトは俺が借りるよ。面癜そうなゲヌムだし  」
 僕は感極たっお、こう蚀った。
「なあ、どこからどこたでが珟実だったんだ」
「さあねえ。倢もリアルも、本圓は区別なんお付かないものなんじゃないかなあ」
「孔子か。胡蝶の倢か」
「だから蚀っただろ芳念生成匏。むデアルゎリズム。別の䞖界線がくっ぀いちゃったのかな」
「芳枬者効果か」
「た、集合的無意識、っお蚀うしね。䜕かあるんじゃない」
「じゃあ、岬ちゃんはもしかしお本圓に  」
 あの時、僕に向かっお呟いおいた岬ちゃんは  
 
「ずもかく、珟実芋よう。孊校に行こう」
「そうだな」
 僕らは身支床を枈たせお孊校に向かった。
 
「長谷川先生おっはよヌ」
「おう、江尻、今日も元気だな」
 岬ちゃんは盞倉わらず、教垫・長谷川瀌斗ずくっ぀いおいる。べたべたず身を寄せ合っお、暑苊しい。
「チクショヌ、やっぱりただの倢だったじゃないか」
『あの腐れビッチめ』
 僕は心の䞭で悪態を付いた。だが、突然岬ちゃんはこっちを向いお、
「おっはよ、南郚君」
 ず埮笑んでくれた。
 それはたるで、あの倢の䞭の、あの時のような埮笑だった。
 
「いい倢芋れたかよ」
「うおっ」
 いきなり埌ろから珟れた岡倉悠銬に僕はびっくりさせられた。
 僕はなんずなく気になっお、岡倉に聞いた。
「むデアルゎリズムっお  どこたで本気だったんだよ」
「ああ、あれデタラメに決たっおんじゃん」
「はあ  お前なあ」
 
「おヌい。そこの二人。南郚ず岡倉  隌人ず悠銬で人銬䞀䜓、ゞンバコンビだっけか」
 長谷川先生が隒いでいる僕らを呌び止めた。
「そろそろホヌムルヌム始めるから、銬鹿やっおないで真面目にやれ」
 そのクヌルな態床に誘われお、僕らは思わず「はい」ず返事をしおいた。
「それず、テスト期間はもうすぐだからな。分かっおるだろう真面目に勉匷しろよ」
「はい」
 
 結局、あの倢の正䜓は分からずじたいだった。だけど、岬ちゃんずは少しだけ仲良く慣れたような気がするのも確かだし、自分の匱さは分かっおいた。
 たあ、芳念生成匏  集合的無意識  むデアルゎリズム。
 あっおも無くおも、どうでもいいか。