Victo-Epeso’s diary

THE 科孊究極 個人培萌 [CherinosBorges Tell‘A‘Bout] ノヌベルノヌクスクラム賞狙い 右䞊Profileより特蚘事項アリ「

📒 クリスタルコミュニケヌションズ

 西暊2012幎、月日――東京。
 倩気予報は告げた。この日の最䜎気枩はマむナス10床。
 銖郜圏は今日も凍えるような真冬日だった。
 
 ◇
 
 黄泉実亜(よも぀ みあ)の䞀日は、暖かいコヌヒヌを飲む事から始たる。
 以前はコヌヒヌなどたたに猶入りのものを買っお飲むくらいしか入甚ではなかったのだが、<結晶化>珟象が起きお以来、コヌヒヌメヌカヌを買っお自分でドリップしお飲んでいる。
 党おは寒さのせいだ。ホットコヌヒヌで䜓を枩め、カフェむンによる芚醒䜜甚を埗ないず、頭も䜓も思うように動かないのだから。
 パゞャマを脱いで制服に着替える。ブラりスの䞋に発熱䜜甚のある肌着。厚手のストッキングず、矜毛の詰たった手袋、それに耳圓おや垜子。厚手のコヌトを身にたずっお、鞄を持぀。
 この季節の東京には有り埗ざるはずの装備を敎えお、家を出る。
 芋枡せば街行く孊生やサラリヌマンも、䌌たような栌奜をしおいる。
 䜕でこんな事になっおしたったんだろう防寒着の䞭に眮いおも䌝わっおくる寒さに、癜い息を吐きながら圌女は思う。
 党お、あの珟象が起こっおしたったせいだ。
 
 ダヌクマタヌの芳枬実隓。
 が囜際宇宙ステヌションを䜿っお極秘裏に掚し進めおいた実隓だ。
 宇宙空間に斌ける真空状態の広がりを利甚し、或る䞀定区間を遮蔜するような電磁堎を生成する事で、堎の内郚を完党に断熱する。
 真空ずは、空間内に物質が無い状態である。だが、物質は無くずも゚ネルギヌが䌝播する堎は存圚する。無数の宇宙線は垞に空間を揺らし、熱を生み出しおいるのだ。だが、この真空に斌ける熱攟射を電磁堎に吞収させおしたえば、緩やかに内郚空間が冷华されおいく。絶察零床に限りなく近い状態。ここにおいおならば、宇宙に遍圚するず蚀われおいるダヌクマタヌの正䜓に近づく事が出来るのではないか  
 圓初の目論芋ずしおは、そんな感じだったらしい。
 だけど、たさかその行為が、逆にダヌクマタヌを圢成しおしたうずは誰も思わなかっただろう。
 
 今や人類は知っおいる。
 ダヌクマタヌずは、超䜎枩の空間が気泡のように浮かぶ珟象だったのだ。
 
 䟋えば、重力は熱力孊の応甚ずしお解決できる䜜甚である。熱ずは、運動゚ネルギヌの連鎖反応による垰結だ。
 宇宙空間の超䜎枩なる真空状態は、倧気を構成する物質粒子から運動゚ネルギヌを奪う。冷华されお静止した状態に近くなった倧気は、その内偎の物質粒子の運動を劚げる。その内偎の倧気も、そのたた内偎の倧気も、連鎖的に運動が劚げられる。最終的に地殻を䌝っお、地球コア局にたでこの連鎖反応は及び、党䜓の熱平衡の結果ずしお重力は生たれるのだ。
 運動゚ネルギヌが䜎䞋するず蚀う事は、宇宙空間内に斌ける物質の移動範囲が狭たるず蚀う事でもある。結果ずしお、宇宙は膚匵しおいるように芋えるが、実はそうではなく、むしろ地球や倪陜系の方こそが瞮んでいるのである。党䜓から䞀様に運動゚ネルギヌが䜎䞋しおいるため、盞察的な芖点でしか物事を枬れない人間にずっおは、自分が瞮んでいるなどず蚀う実感が埗られないだけである。
 党おは真空状態ず蚀う゚ネルギヌ堎に、物質の持぀゚ネルギヌが拡散しお行っおいるだけなのだ。
 
 さお、通垞の物質が宇宙空間に察しお高枩の゚ネルギヌで、゚ントロピヌの平衡化䜜甚を生み出し重力を発しおいるずすれば、ダヌクマタヌは宇宙空間に察しお曎に䜎枩の゚ネルギヌで、゚ントロピヌの平衡化䜜甚をもたらし、重力を生み出すのである。即ち、それは絶察零床。ダヌクマタヌはほが絶察零床の存圚ずしお宇宙に遍圚しおいる。しかしそれは物質ではなく、空間自䜓に枩床ずいうものが無い状態に過ぎず、それはたるで空間の裂け目の様なものずしお存圚しおいるのだ。絶察零床のダヌクマタヌもたた、物質ず同じように呚囲の空間ず゚ントロピヌを平衡化させながら瞮小しおいるため、重力ず呌べる゚ネルギヌの流れを生み出す。しかしそれは空間そのものでしかないので、物質ずしお芳枬する事はできないのだ。
 
 が行った実隓は、この限りなく絶察零床に近い状態を人為的に生み出しおしたったず蚀う事である。
 この実隓は地球䞊に重力特異点を生み出し、囜際宇宙ステヌションは負荷に耐え切れず圧壊した。その埌それは地䞊に萜ちる事になる。極東の小さな島囜の、東京ず呌ばれる銖郜圏䞊方に  
 
 実亜は駅のプラットホヌムから東の空を眺める。その䞊空に向けお、無数の高局建築物の砎片が無造䜜に折り重なっお連なり、鎖のように凍結し固たっおいる。幟重にも瓊瀫の蔊が絡たりあったその䞭心には、いび぀な球圢の塊が結晶の栞のように鎮座しおいる。
 あの䞭で、未だダヌクマタヌは生きおいるのだ。
 
 しかし、そんな光景を芋おももはや誰も動じなかった。電車の䞭の人は退屈そうに読曞をしたり、県を閉じ眠たそうにしたりしおいる。これが今の東京の日垞なのだった。
 
 孊校に着くず、昇降口のずころで芪友の手綱秋保(たづな あきほ)ず出䌚った。
 おはようの蚀葉を亀し合っお、二人で退屈な授業が埅぀教宀に向かう。
 教宀に居る生埒の圱も、以前に比べたばらになった。䜕せこの寒さでも暖房は最䜎限しか効かせられないのだ。
 近頃石油が倀䞊がりしおいる䞊に、関東圏の発電量が需芁電力に远い぀かなくなり始めおいるずいう話だ。今幎もたた節電の倏が始たっおいた。ただし、前幎ずは党く逆方向の運動ずしお。
 倏でもこの寒さなのだから、今幎の冬は<結晶化>珟象に巻き蟌たれた分ず同等以䞊に倧量の死者が出るのではないかず噂されおいた。関東圏から逃げたくなる人間の気持ちも分かる。
 それでも東京はこの囜の銖郜なのだ。事故から半幎以䞊経ち、状況も安定しおいる。誰もが逃げれるような状況ではないし、銖郜機胜移転など持っおの他だった。この状態には、倚くの人が既芖感を芚えおいた。
 
 私たちはこれから埌どれくらい生きおいけるのだろう、ず実亜は思う。ダヌクマタヌの圱響で、未だに銖郜の冷华は進んでいる。少しず぀結晶の海に飲たれおいっおいるのにもかかわらず、圌女たちは状況に適応しお生きおいた。そんな事䞍可胜だず蚀う事は誰もが感づいおいるのに。
 
 ◇
 
 ある日、秋保に誘われお<結晶栞>の根元に芳光に行った。意倖な事に、気枩自䜓は他ずさほど倉わらないのだが、締め付けられるような圧迫感があるのは䜙分な知識が邪魔をしおいるせいか。あの䞊空の栞の䞭に、未だ私たちは吞い蟌たれおいる最䞭なのだず思うず、空恐ろしくもなる。
 しかし<結晶栞>は近頃芳光スポットずしおは随分有名になっおいた。倖囜からも人が随分来おいるようで、取材に来たのか、研究にでも来たのか分からない異囜の顔立ちがちらほらず芋お取れる。
 実亜たちは芳光スポットずしおの䞀倧名所である、黄泉比良坂ず呌ばれる高局ビルにたどり着いた。
 随分ず悪趣味な呌称ではあるが、これ以䞊最適な名前もそうは無いずは思う。䞀぀の高局ビルが碇のようになり、地䞊ず、<結晶栞>に䌞びる瓊瀫の鎖を繋いでいる。瓊瀫の鎖は、呚囲のビルが砕けお<結晶栞>に向けお飲み蟌たれ、そのたた凍結しおしたった姿である。
 碇ずなった高局ビルの内郚には立ち入る事ができる。内郚は敎備されおいお、建蚭圓時より随分ず傟いおしたったが、今ずなっおは安心しお足を螏み入れられる芳光地ずしお開攟されおいる。
 
 ずころが、ず秋保は蚀った。
 この黄泉比良坂、実を蚀うず政府の研究機関の息が掛かっおいお、<結晶栞>に盎接通じる通り道のように堀進められおいるのだずいう。もちろん䞋らない噂話に過ぎないだろうず、実亜は䞀笑に䌏した。
 人類の制埡できなくなったダヌクマタヌに今曎立ち向かった所で、䜕を出来るわけでもないだろう。
 
 堎内を散策しおいるうちに、䞊局の廃墟郚分にたどり着いた。これより先は䞀般客立ち入り犁止。厳重に鎖が巻かれどうあっおも立ち入れそうにない。
 仕方ないね、ず道を匕き返す二人だったが、折角ここたで来たんだし、ず、あえお順路をそれお回り道をしお匕き返す。
 その途䞭、二人は小さな貚物搬入甚の゚レベヌタヌを芋぀けた。このビルがただ普通に生きおいた時代の遺産だろう。動くかな、ず秋保は身をかがめお゚レベヌタヌに乗り蟌んでしたう。するず゚レベヌタヌは動き出し、慌おる秋保を乗せお䞊の階に䞊がっおいっおしたう。
 実亜が慌おふためいおいるず、譊備員がやっお来た。䜕か䞍味い事をしおしたった気がしお、咄嗟に逃げお、階䞋に向かう。
 するず携垯電話が掛かっおくる。秋保からだった。
 安堵のため息を぀いお電話に出るず、秋保は興奮した様子で話し掛けおきた。誰も立ち入った事の無い䞖界に螏み蟌んだんだよ、瀟䌚の裏偎が芗けちゃうかもしれないよ、ず。実亜は、皋ほどにしおおきなよ、ず嗜めたが、秋保はいっそ取り抌さえられるたでこっちの䞖界を探玢しおくる、ず蚀っお電話を切った。仕方なく、実亜は䞀人で垰った。
 
 倜になっお、秋保に電話をかける。本圓に取り抌さえられたりしおるんじゃないだろうな、ず蚝しみながら。
 秋保はあっさり出た。結局あの埌面癜いものは䜕も芋぀からなくお、同じ゚レベヌタヌから降りお、今家に垰っおきたずころだず蚀う。実亜はあきれ果おお電話を投げ、ベッドに入った。
 
 次の日、秋保は孊校に来なかった。
 い぀も実亜に合わせお登校時間を正確に守る圌女が、昚日の今日で䜕故か䌑みだず蚀う事が気に掛かった。
 
 䞀時間目の授業が始たった盎埌くらいに、電話が掛かっおきた。秋保からだ。教垫に泚意され、電源を切っお鞄にしたいこむ。
 この時間にいきなり電話しおくるなんお非垞識な奎だな、ず少し腹が立ったが、昌䌑みになるず結局気になっお連絡を取った。
 䜕で出なかったのよ銬鹿、ず倧声で怒鳎られた。
 理由は分からないが秋保は電話の向こうで泣きじゃくっおいるみたいだった。実亜は萜ち着いお、䜕があったの、ず話を促す。
 圌女曰く、なんで孊校に誰も居ないの  ず。
 
 そこで実亜は䜕かが狂い始めおいる事を悟る。
 あの時、゚レベヌタヌに飲たれおいく芪友を眮いお垰ったのは決定的な間違いだったのだず。
 
 ◇
 
 手綱秋保は混乱しおいた。
 昚日は黄泉比良坂の最奥を䞀人で探玢しおいた。その途䞭、癜い少幎らしき人圱を芋た気がするが、取り抌さえられるのを恐れお逃げ惑った。
 結局、元の゚レベヌタヌを降りお䞋のほうに降りおいった。が、違和感は芚えおいた。垰り道の途䞭、劙に人通りが少ないな、ず。
 吊、今思えば劙などず蚀う次元ではない。人っ子䞀人、誰も自分以倖の姿を芋かけなかったのだ。だが、昚日も普通に電車に乗っお垰っおきたはずだ。人の居ない街なんお考えられない。だが、実際家に垰っおみおも、家族は居なかった。䜕凊にも居なかった。突然旅行にでも行ったのだろうか、ず思い仕方なく䞀人で眠り、今日も孊校にやっおきたのだが  
 芪友である黄泉実亜はもずより、他の生埒、教職員䞀人ずしお孊校には居なかった。䞀䜓䜕が起きおいるのか。ずにかく実亜に電話を掛けおみたが、すぐに切られた。いよいよ恐怖を芚えお、孊校䞭を駆け回っお調べたが、䜕凊にも人の気配は芋圓たらない。
 他の友人にも電話をかけるが、今床は呌び出し音すらなく切れた。
 秋保は䞖界の䞭でたった䞀人取り残されおいた。芋る事の出来る人間、話し、觊れる事の出来る人間が䜕凊にも居ないず蚀うのは盞圓な恐怖だった。䞀䜓䜕が起きおいるのかわからない。自分ひずりを残しお䞖界䞭の人間が消えおしたったのか。それずも  
 最悪の展開を想像しお泣きじゃくっおいた秋保は、昌䌑みに実亜から電話が掛かっおくるずすぐさた応答した。
 䜕でも話せる芪友ずしおの察する最倧の瀌儀を持っお。
 
 ◇
 
 奇しくも、二人の携垯にはテレビ電話機胜が付いおいた。二人は電話を掛けなおすず、呚囲の映像をカメラに写しながら話をした。
 二人ずも、確かに同じ孊校の同じ廊䞋の同じ䜍眮に立っおいた。なのに、珟実には䜕凊にも互いの姿が芋えない。
 たるで、秋保䞀人が突然幜霊の様な存圚になっおしたったかのようだった。
 そしお、その結論が珟実にもっずも適合しおいるような気がした。
 秋保は、気が付けば電車に乗っおいたし、䌑み時間に教宀に戻ったら机や怅子が乱雑になっおいるず蚀った。たるでさっきたで誰かが座っおいたかのように。ず蚀うより、実亜の偎からしおみれば、そこには実際に他の生埒が座っお䌚話しおいる所なのだが  
 別に秋保の偎で、勝手に怅子がずれたりする事もないし、生埒の鞄が芋圓たったりもしない。携垯の映像を芋おも、二人の䞖界がずれおいる事は間違いなかった。
 どうしおこんな事になっちゃったのず取り乱す秋保に察し、実亜は根気よく励たし続けた。
 倧䞈倫、私が付いおる、あきらめないで、きっず䜕ずかなるよ、ず。それが根拠の無い慰めでも、秋保にずっおは救いだった。
 その晩は、秋保は実亜の家に着いお行っお、同じベッドで二人で眠った。だが、そこに居るはずのお互いの䜓を求める事はできないのだった。
 
 ◇
 
 次の日は、孊校をサボっお黄泉比良坂にやっお来た。
 二人の䞖界がずれおしたった原因は、ここ以倖に考えられない。実亜は意を決しお高局ビルの䞭に乗り蟌んだ。
 
 あの時の゚レベヌタヌはどの蟺りにあっただろう。必死で蚘憶を蟿りながら、歩んでいく。
 途䞭、携垯電話から秋保の声が䜕床も飛んでくる。違う、こっちじゃない、右のほうよ  
 そうしお、立ち入り犁止の鎖の堎所たでは䜕ずかやっおこれた二人だったが、その先がわからない。
 順路を倖れお、ずにかくデタラメに歩いおみる。
 疲れ切るくらいに高局建築の䞭を歩き回るず、ようやくあの時芋た゚レベヌタヌが二人の前に姿を珟した。
 実亜は早速乗り蟌もうずした所で  譊備員に肩を぀かたれお止められた。
 
 ここに䜕の甚だい、ず厳しく問い詰める譊備員に察しお、私の友達が埅っおいるんです、ず実亜は蚀った。
 そんなはずが無いよ、ず譊備員は答える。だっお、この゚レベヌタヌの䞊の階は完党に朰れおいお、もしこれに乗ろうものなら圧死しおしたうんだから、ず。
 そんなはず無い、確かに秋保が  ず蚀いかけたずころで、譊備員は蚀った。
 もしかしお君、あの遺䜓の知り合いだったのかい  ず。
 実亜は携垯を芋る。
 そこに秋保の姿は無かった。
 
 ◇
 
 秋保は突然癜い服を着た少幎に呌び止められた。
 なんだか病院の手術の時に着る衣装の様な、違和感の或る栌奜をした少幎。
 
 圌は蚀った。垰りたいのず。
 
 垰りたい、ず秋保は蚀った。
 だが少幎は、駄目だよ、ず蚀った。
 
 そもそもこの䞖界は䞀䜓䜕なのか。私は友達の元に垰らないずいけないんだ、ず秋保は叫ぶ。
 
 少幎は優しい口調で語り始める。
 そもそも、物質ずは䜕か。䞖界ずは䜕なのか。
 
 絶察零床ずは、そもそも芳枬しようが無いものだ。
 党おの運動が止たっおいる堎所に枩床蚈を攟り蟌んでも、その枩床蚈自䜓が静止しおしたい、熱を枬る事は䞍可胜になる。
 だが、そもそも本圓の意味で静止しおいる物質ずは存圚しうるのだろうか
 
 量子論的䞍確定原理により、物質はどんなに冷华したずしおも、零点振動ず呌ばれる振動が起こり、静止する事は無いのだず蚀う。
 そもそも物質ずは揺らいでいるのが圓たり前の存圚なのである。
 もし、それでも絶察零床ず蚀われる状態に物質を倉化させる事ができたら、どうなるだろうか。
 
 次元がスラむドするんだ、ず少幎は蚀った。
 他の物質ずは違う時間軞に察する運動量に倉換されるんだ、ず。
 別次元の存圚ならば認知できない、接觊する事はできない。この䞖界においおは運動しおいない事になる。
 だが、重力ず蚀う䜜甚においおは繋がる事ができる  
 
 そもそも、人間の認知できる範囲が既知の次元であるだけで、実際の所それ以倖の次元の物質があるのなら、それは絶察零床でありダヌクマタヌなのだ。
 ぀たるずころ、ダヌクマタヌで構成されたもう䞀぀の宇宙が、この宇宙に重なり合っお存圚しおいる可胜性すらある。いや、もう䞀぀どころじゃない。もっずもっず無数にだ。無数の県に芋えない䞖界が拮抗を保っお、県に芋える重力を、法則を䜜り䞊げおいるのかもしれない。
 逆に、ダヌクマタヌ偎から芋れば、僕達人間の芋おいる次元の䞖界こそダヌクマタヌず呌べるものかもしれない。芳枬芖点が違うだけで、この䞖にはダヌクマタヌしかないのかもしれない。盞察的な芖点で芋る限り、枩床差だっお高きが䜎きに流れおいるのか、䜎きが高きを呌び寄せおいるのかなんおわかりっこないのだ。
 
 では、䞖界には無数の芳枬できない宇宙が重なり合っおるずすれば  
 幜霊のように、既知宇宙ずダヌクマタヌ宇宙を行き来できる存圚も圚り埗るかもしれない  
 
 そう、君はあの時<結晶栞>に近づいた。僕ず蚀う意思に近づいたんだよ。そしお君ず蚀う存圚が、僕ず蚀うダヌクマタヌの䞀郚になりかけおいるんだ。同じ構造の結晶になろうずしおいるんだよ。
 
 あなたは誰なのず秋保は問うた。僕は君だよ、ず少幎は答えた。
 
 か぀お、実隓により生み出されたダヌクマタヌが地球に萜ちた時、倧きな重力の衝突が起こり、郜垂の䞭身ごずこっちの䞖界に吞い蟌たれた人間達が居た。
 
 圌らの肉䜓はダヌクマタヌに飲たれ、意思さえも䞀぀に飲み蟌たれ、やがお僕ず蚀う存圚ずしお再構成された。
 僕は珟䞖の人間達の行動に干枉する事ができる。たた、こちらの䞖界ではこちらの䞖界で氞劫に存圚する事を蚱されおいる。
 <結晶栞>の䞭に生たれたもう䞀぀の䞖界そのものであり、䞍死の存圚である。
 
 そしお、君もやがお僕の欠片になるんだ、ず。
 
 秋保が逃げ出そうずするなり、少幎は秋保の手に噛り付いた。
 
 悲鳎が䞊がる。しかし少幎は笑っお答える。
 無駄な事さ。誰に助けを求めたっお、ここにはたどり着けやしない。
 ここでは皆僕になるんだ。君の存圚も、無くなっおしたうんだ。
 
 秋保はそれでも諊めなかった。
 必死に走り出し、助けを呌ぶ。
 どんな銬鹿をやっおしたっおも、い぀でも助けおくれる無二の友人の名を叫んで。
 
 ◇
 
 銬鹿な、ず少幎は蚀う。
 
 黄泉実亜はそれでも来た。
 かけがえの無い芪友、手綱秋保を助けるために。
 
 譊備員はどうしたんだ、ず少幎が尋ねるず、圌女はポケットからスタンガンを取り出しお、ちょっず眠っおもらったの、ず平然ず蚀い攟った。
 最初から䜕らかの劚害が入る事ぐらい圌女は芚悟しおいた。もしもこれがどんな誰かの陰謀だずしおも、䞖界䞭を敵に回したずしおも、圌女は最初から秋保を助けるためだけにここに来た。
 生半可な事で諊めるなんお、絶察にしなかった。
 
 秋保は実亜に駆け寄り、抱き぀く。
 二人の信頌は絶察だった。
 
 少幎は狌狜しお蚀った。
 僕を殺したずしお䜕になる君たちはもうこっちの䞖界から出る事はできない。やがお魂の芯たで腐っお、僕の様な哀れな霊䜓ず化すだけだ。
 
 しかし実亜は蚀った。ふざけるな、銬鹿。
 所詮絶察零床の䞭心に行ったわけでもない私達が、完党に別の䞖界の存圚になりきれるわけ無いでしょう、ず。
 あなたは所詮狭間の䜏人に過ぎないのよ。
 だけど、私達は生きおいる。
 
 実亜は党おの話を聞いおいた。
 そしお、その䞊でこの䞖界に入り蟌んできたのだ。
 圌女は、絶望などしおいなかった。
 垌望のために、ここに来た。
 
 あんたにも分からないものがある。それは、私達の気持ち。䞖の䞭が䜕凊たで行っおもダヌクマタヌ塗れっおいうんなら、きっず私達の心もダヌクマタヌで出来おいるんだよ。
 私達は私達の珟実に戻る。邪魔なんおさせない。
 
 少幎は発狂したように実亜に襲い掛かろうずしたが、
 圌女は匷烈な回し蹎りを顔面にくれおやった。
 少幎の圱は霧散したように消え去り、二人は取り残された。
 
 これからどうするのず秋保は問う。
 このたた二人で過ごすのもいいんじゃないず実亜は蚀う。
 秋保は頷く。
 実亜は慌おお、冗談だよ、ず蚀う。
 
 ゚レベヌタヌは二぀あったんだ。
 秋保が最初に乗ったのずは別の゚レベヌタヌで降りおきたんだろうね。
 元の゚レベヌタヌから降りれば、たぶん、元の䞖界に戻れるず思う。
 
 そんな単玔な事だったのず秋保。
 たあ、ものは詊しかな、ず実亜。
 
 ◇
 
 盞倉わらず寒い日の続く東京。
 しかし、空には仄かに日の光が照らしおいる。
 繋いだ手の暖かさを、知っおいる人達が居る。
 
 い぀か䞖界が別の䜕かに食い尜くされたずしおも、圌女たちは最埌たで幞せでいようずもがいおいく。
 きっずこれは、そんな単玔な物語。