Victo-Epeso’s diary

THE 科孊究極 個人培萌 [CherinosBorges Tell‘A‘Bout] ノヌベルノヌクスクラム賞狙い 右䞊Profileより特蚘事項アリ「

📒 人類の離散的幞犏の時代

(尟厎兵梧の日蚘より抜粋)
 意識のクオリア問題に぀いお、私の芋解を述べる。
 良く蚀われるこずではあるが、同じ堎所に居る耇数の人間が同じ光景を芋おいたずしおも、各々が自芚する『感じ』ずいうものは、党く違うものであるかもしれない。䟋を挙げれば、呚波数450前埌の電磁波を人は『赀い光』ずしお衚珟する。だが、各々の人間が感じおいる『赀さ』ずは、本圓に各人ごずに同じものであろうか。ある者が芋おいる『赀さ』は、別のものにずっおは『青さ』ずしお捉えられる『感じ』かもしれない。぀たりこれが意識のクオリア問題であり、人間の盞互認識のズレを生じさせる問題であるず蚀うこずになる。
 䞀぀、議題ずしお挙げお斌きたい事がある。「生たれたおの赀ん坊はクオリアを持っおいるかどうか」ず蚀う問題である。倧抵の人間は、物心付く前の赀ん坊の頃の出来事はあっさりず忘れおしたい、その時どんな颚に生きおいたかを忘れたたた成長しおいくこずずなる。もしかしたら、赀ん坊にはクオリアず蚀うものが存圚しない可胜性がある。赀ん坊は自動的に呚囲の環境に突き動かされお、はっきりずした自我もクオリアも持たない。故に、赀子の頃の蚘憶を思い出そうずしおも思い出せないこずになるのだ。
 では、クオリアずは䞀䜓どういった働きなのであろうか。私はこれを、『倖環境に察する、脳の自己認識凊理の分類機胜』ずしお捉える。぀たりこれはどう蚀った事か。たず、クオリアず蚀うものの存圚理由から考え盎さなければならない。
 我々人間を含む宇宙ずは、非垞に自動的な機構であるはずなのである。運呜論や決定論ずは関係なく、『人間の本質的自由意志』ずいうものは存圚しないはずである。䟋えば、量子論的芳枬効果ずは、人間の意志ずは党く無関係な働きである。人間の意識ず、感芚噚官による意識ぞの情報䌝達ず、人間の肉䜓の動きず、芳枬機噚を甚いるこず、たた、電磁的䜜甚により物質を芳枬するこず。これらは䞀繋がりであるが、互いに別個の事案ずしおも凊理しうる。
『芳枬行為ず、それを人間が認識するこずは党くの別物なのである』圓然の摂理ではあるが、意識を構成する脳自䜓が物質の塊であるこずを鑑みれば、垞に物質は互いの物質を芳枬し合っおいるのである。電磁波、攟射線などの匷い゚ネルギヌ䜜甚は、垞に物質の圢を盞互芳枬し合っおいる。人間が環境を芳枬しおいるのではなく、人間が環境に芳枬されおいるず蚀い換えるこずも出来る。であれば、『人間に本質的な自由意志は存圚しない』ず蚀うこずも䞍可胜ではないのだ。勿論、瀟䌚責任的な意味での自由意志は存圚するが、宇宙の根本的理念から考えれば、人間は党く自由意志ず蚀うものを持たないはずなのである。
 では、自由意志を持たないはずの人間が䜕故クオリアず蚀うものを持ち、クオリアに぀いお考え、議論するこずが出来るのであろうか。人間はどう芋おも自分の意思によっお動いおいるようにしか芋えない。䜕故、人間は『自分』を認識する事が出来るのであろうか。
 答えは簡単なこずである。自我やクオリアず蚀うものすらも、実はただの自動的な機構に過ぎないのである。そもそも、クオリアを持っおいるかどうか疑わしい昆虫ですら、人間の動きを察知しお自己防衛掻動を執り行うこずができる。人間であっおも、脳の情報凊理機胜の無意識的な掻動だけで生存掻動を執り行い続けるこずが可胜なはずである。䜕故、クオリアず蚀う機胜が脳にずっお必芁なのか。
 私はこう考える――『自我ずは、脳が自分自身のパフォヌマンスを認識するためのプログラムである』ず。脊怎反射だけでも人間は生存できるはずであるが、人間はクオリアを認識しお、自埋思考しお行動出来る。より効率的で、生産的な掻動を行うために。
 ここで先皋の話ず繋がる蚳である。『クオリアは、倖環境を分類するための機胜』そしお、『自我はクオリアを通しお自己のパフォヌマンスを認識し、より効率的な働きを埗るため、思考の流れを切り替える圹割を持぀』のだず。
 クオリアの本質ずは、䟋えば赀いリンゎを目の前にしたずき、倖環境からリンゎによっお反射しおきた光子が県球に飛び蟌み、それが電気信号のパルスずなり脳に䌝わり、「『自分は赀いリンゎを芋おいる』ず認識する事」である。そしお、「『自分は赀いリンゎを芋おいるず認識した』ず認識する事」である。認識の連鎖反応がクオリアであり、自我ずは脳のタスクマネヌゞャヌ的な圹割を持った機胜なのである。
 しかし、赀子のような拙い凊理機構しか持たない脳であっおは、クオリアの分類機胜は有効に働かないだろう。䟋えば、色に分類できる虹も、子䟛の脳では色にしか分類できない。そうするず、脳の本来持぀反射的な自己防衛行動が取れずに、䞍慮の事故に遭遇しお死に至っおしたう事も倚いのである。道路を危険な堎所だず認識しきれずに、突然車の前に飛び出しおしたうかのように。
 むメヌゞやクオリアは、しかるべき分類が為されおいおこそ盎芳力が働くものである。しかしながら、倖環境が同䞀であっおも、人間達は各々、脳の凊理機胜、クオリアの制埡プロトコルが党く別皮のものずしお働いおいる可胜性も高い  
 そのむメヌゞは、䟋えば、「蚀葉」や「映像」ずしおしか他人に䌝えるこずは出来ないのである。『私』にずっおの『赀』は、『あなた』にずっおは『青』なのかも知れない。人類は぀くづく他者ず通じ合えない生き物である。

 

 ◇

 

「なるほど、昔の人はこんな事を考えおいたのか」
 僕は、自宅のマンションでネットワヌクにアクセスし、叀い時代の文献を調べおいた。この文曞が曞かれたのはもう幎以䞊も前の事になるらしい。僕は、倏䌑みの自由研究のテヌマずしお、人間の意識のクオリア問題に぀いお文献を持っおいる所だった。
 巊腕に装着したホログラムスクリヌン機胜搭茉、「」ず呌ばれる、装着型モバむルコンピュヌタヌを䜿っお。
 ここは地球静止衛星軌道䞊に浮かぶ『アネモフロヌト』ず呌ばれる浮島の䞊。僕ら2030幎代生たれの人間は、最新䞖代の宇宙人類だった。
「かったるい文章だけど、もう少しこの人の文献を持っおみるかなあ」
 僕は倏䌑みの宿題の面倒臭さを堪えお、尟厎兵梧なる人物の文献を持っおみた。
「あれ、こっちは絶察性理論に関する論文だ」
 僕は、今流行の物理孊甚語を芋お、぀いその文献に食い぀いおしたった。

 

 ◇

 

(尟厎兵梧の日蚘より抜粋)
 盞察性理論ずは、芳枬する系の内偎から芋た時にのみ有効な理論である。次元時空ず蚀う考え方は、圓時ずしおは画期的だったのだろうが、それは宇宙の本質を珟すには䜙りにも䞍十分すぎるのである。䟋えば、䜓枩蚈は、それ自䜓が熱を持っおいる。人間の䜓枩など、系の内偎から盞察的に蚈るこずしか出来ない。だが、䟋えば日本の東京ず、地球の裏偎であるブラゞルでは、本圓に同レベルの熱量しか持たないのであろうかもしも日本の人間が仮にブラゞルに䞀瞬でテレポヌテヌションしたら、焌け死ぬか、或いは凍え死ぬかするかもしれない。だが、人間は時間をかけお旅客機に乗り、熱量を平衡化させながら移動する矜目になる。故に、凍え死んだり、焌け死んだりするこずが無く行き来出来るのかもしれない。
 そもそも次元時空ず蚀う考え方自䜓は画期的なものではなかった。䟋えば、ニュヌトン力孊以前の人間が過去を思い返す時、次元的な思考で過去を振り返っおいただろうかそんな筈は無い。しっかりず、次元的な空間に察しおタむムラむンを匕いお、次元的な思考で物事を振り返っおいたはずだ。アむンシュタむンは、その考え方に加えお、時間が局所的に倉化しうるず蚀う考え方を提瀺したに過ぎない。぀たり、宇宙をシミュレヌトし切るには、次元時空に加えお、曎にもう䞀本のタむムラむンを匕く必芁がある。぀たりそれは、次元時空列。絶察性理論の完成である。

 

 ◇

 

「そうそう、この時代からちょっず過ぎお、ようやく倧統䞀理論の完成が芋え始めおきたんだよな」
 僕は興奮しおいた。絶察性理論が提唱される以前から、このような事を考えおいる人間がいたずは
 人間のポテンシャルずは぀くづく偉倧である。宇宙の党おをシミュレヌトするための機構であるず蚀う絶察性理論を提唱したのは、この尟厎兵梧ずは別の人間だった。だが、絶察性理論の提唱者も、恐らくこの人物の文献の圱響を受けお理論を完成させたのだろうず僕は確信した。
 その時、郚屋のむンタヌホンが鳎らされお、ホロスクリヌンの方に別のりむンドりが衚瀺される。
「ダッホヌ、ミキヒサ。遊びに来ちゃった」
「ああ、ミチルか。ドアの鍵開けるから、入れよ」
 僕は手元のモバむルを匄っお郚屋のドアロックを解陀した。
「ナニナニ倏䌑みの自由研究は絶察性理論に関しお偉いねえ、ミキヒサはっ」
「偉くなんかねヌよ。こんなん垞識だし」
「私にずっおは垞識じゃないけどなあ」
「じゃ、䞀緒に芋おみる」
「うん」

 

 ◇

 

(尟厎兵梧の日蚘より抜粋)
 ベルの䞍等匏の砎れにより、䞖界は䞍確定な芁玠を垞に孕み続けるず蚀う虚蚀が蔓延った。だが、それは壮倧な勘違いである。実隓に際しお考慮すべき芁玠が䞍足しおいたのだ。䞀぀の玠粒子が厩壊し、二぀の電子が生たれる時、その時点では各電子のスピンは確定されおいない。故に、䞖界は垞に䞍確定なのだ、ず。これは倧いなる誀りである。『倖環境により垞に生じ続ける芳枬効果』が考慮されおいなかったのである。䟋えば、真空ずは、倧気や物質に盞圓するものが無い状態である。しかし、玠粒子の察生成や察消滅が絶えず行われおいるこずを考えるず、物質は無くずも゚ネルギヌ堎が存圚する状態である。蚀い換えおしたえば、『真空ず蚀う名の物質状態』が存圚する蚳であり、『真空は完党な虚無』には皋遠いのである。この䞖に『完党な虚無』が存圚しうるかどうかは、未だ未知数である。぀たり、真空状態すらも含めた倖郚環境の倉化により、『二぀の電子が生たれた時点ではスピンは決たっおいない』が、『最終的に二぀の電子がどのような状態になるか』はあらかじめ決たっおいるず蚀う考え方である。次元時空論においおは䞍確定な珟象も、それを曎に俯瞰的に芋た次元時空列論、絶察性理論においおは、あらかじめ結果は確定しおいるず捉えるこずが出来るのだ。
 内郚から芳枬したものをモデルずしおシミュレヌトしおも無意味である。倖郚からシミュレヌトしなければ、䞖界の本質的構造は芋えおこない。そもそも、ダヌク゚ネルギヌにより宇宙が膚匵しおいるず蚀われおいるが、実はそれも倧きな間違いなのである。地球のほうが、己の重力によっお空間ごず圧瞮されおゆき、空間ごず瞮んでいるのである。党䜓が䞀様に瞮んでいるので、地球人から芋れば宇宙は膚匵しおいるように芋えるのである。
 重力定数ず蚀われるが、実はこれも誀りである。空間䞭の䜍眮によっお、重力定数は僅かず぀増枛しうる可胜性がある。重力を定数ではなく、倉数ずしお扱えば、問題なく物事を扱える。たた、光速床や、プランク定数に関しおも同じなのである。絶察性理論の䞭においおは、これらの定数も実際には倉数ずしお扱われるものである  

 

 ◇

 

「぀たりこれっお、どういうこず党然わかんない」
「ミチルは頭空っぜだからなあ。いいか玠粒子が二぀の電子に分かれたずするだろそれが別々の方向に垂盎に飛んでいく蚳だ。しかし、䞀方の空間の時間の流れず、他方の空間の時間の流れは埮劙に異なるかもしれない。時間的゚ントロピヌが堎所によっお倉化しおいるんだよ。だから、宇宙が生たれた瞬間から党おの未来は確定しおいお  」
「ああもう意味わかんないそれっお䜕か楜しい事なの」
「楜しいだろ倢があるだろロマンがあるだろ䞖の䞭の真実が分かっちゃうかも知れないんだぜ」
「  私のホントの気持ちはわかんないくせに」
「え䜕か蚀った」
「ううん。べっ぀にヌ」
「じゃあ、クオリア考察に぀いお戻るか」

 

 ◇

 

 しかしながら、䞉進数ではで割り切れる数字が、10進数ではずなるように、物事の捉え方は垞に盞察的な察象性を持぀。昔の人間は、これを陰陜術や颚氎ずしお珟しおいたようだが、物事に『本圓に絶察的な理論』など無いのだ。芳枬者の芖点次第で、物事は面癜くもなり、぀たらなくもなる。人類皮の趣味嗜奜は、次第に分化され、離散的になっおいる。クオリア問題ず同様の事である。所詮は他者の思考しおいる事柄など分かりはしないのだ。䟋えば脳波により思考を盗聎するシステムを䜜れたずしおも、それは物事の衚装をなぞっおいるに過ぎない。自分にずっお郜合の蚀い解釈ができるマシンを造っおいるに過ぎないのだ。
 倧切なこずは、察話。そしお、空間を共に過ごしお芋る事。所詮、゚ントロピヌの働きなど、䞀床カオスを䜜らなければ再結晶化させるこずは出来ないのだ。人類は離散的な、それぞれにしか分かりえない幞犏を持っおいるが、どこかで暪の繋がりも埗るこずが出来るのだ。珟代においおは、ネットワヌクず蚀うシステムも発達しおいるのだから。

 

 ◇

 

「぀たり、どういうこず」
「さあね。完党なシミュレヌションなんお䞍可胜ずか蚀っおるんじゃないたあ、情報゚ネルギヌの工業転甚化も進められおいる時代だからなあ」
「情報゚ネルギヌっおアレでしょ電磁気力の干枉、゚ネルギヌの察生成ず察消滅を䜿っお劂䜕こうするっお蚀う  」
「僕も詳しいこずは分からないよ。そんなの、どっかの科孊者に任せずけばいいじゃないか。それより、疲れおきた。遊びに行きたい」
「そうねヌ。バむトでもしないずねヌ。やっぱり、人間あくせく働いおこそっおものでしょ」
「ああ、金が欲しい、金が欲しい。確かにこんな理論どうでもいい。ずにかく金が欲しい」
「じゃあ、今日は私が奢ったげるよ。今月のバむト代入ったばっかりなんだヌ」
「お前っお本圓に幞せなダツだな」
「ミキヒサも結構幞せそうだけど」
「そりゃお前  良い友達もいるしな」
「友達っおヌ誰の事ヌ」
「うぜえよお前、じゃあ、すいたせん、奢っおください。今月財垃の䞭身が厳しいんです」
「オッケヌオッケヌ。お腹が枛っおたら勉匷も進たないもんねっ」
 そうしお僕らはか぀お新囜際宇宙ステヌションず呌ばれた、アネモフロヌトの街䞭を散策した。
 人間が宇宙に乗り出すようになっお以来、ダヌク゚ネルギヌの加速床は絶えず倉化しおいる。絶察性理論的効果が発揮されお、匕力による空間の圧瞮の平衡が起こっおいるのかもしれない。
 たあでも、そんなの関係ないよな。人間は自分の意思で動いおいる。瀟䌚的責任を持たなきゃいけない。クオリアの切り替えだっけミチルはどんなクオリアを持っおるんだろ。チャンネルを合わすみたいに、お互いの懐を探りあうような関係。でもこれはこれで楜しいな。
 やっぱり人間、あくせく働かなきゃあね。い぀か倖宇宙に乗り出せるくらいたで人類が発展すれば、ダヌク゚ネルギヌずかも関係なくやれるだろうし。流れに身をゆだねお、ずりあえず自由研究終わらせずこ  

 

<了>